第84話 覚悟の夜、旅立ちの朝へ
夜。
火は、
静かに小さくなっていた。
揺れる炎。
遺跡は、
静まり返っている。
その前に。
レグルスが、
いつものように腰を下ろしていた。
その時。
別々の方向から、
二つの足音が近づいてくる。
リオラとミヅキだった。
一瞬。
二人は、
互いの姿を見る。
だが。
何も言わず、
そのまま火の前へ腰を下ろした。
揺れる火。
夜風。
少しの沈黙。
やがて。
リオラが、
小さく口を開く。
「昨日……」
「二人の話を、
盗み聞きしちゃってさ」
「ごめんなさい」
ミヅキが、
静かに首を振る。
「そんなに、
気になさることではありません」
「リオラさんも……」
「知っておかなければならない、
話ですから」
火が、
小さく揺れる。
ミヅキが、
静かに続ける。
「それぞれの場所で、
魔力を刻む……」
「この遺跡には、
大きな魔光石がありました」
「そこへ、
私の魔力が刻まれた」
「それができたのは、
きっと――」
ミヅキの瞳が、
静かに揺れる。
「私が、
月の王家の者だから」
静かな空気。
ミヅキが、
ゆっくりとリオラへ視線を向ける。
「ここから先は――」
「リオラさんの力も、
必ず必要になります」
向けられた視線へ。
リオラが、
静かに頷いた。
レグルスが、
静かに口を開く。
「これから先……」
「エクリシウスは、
それぞれの場所に――」
「何かを、
仕掛けているはずだ……」
揺れる火。
「それでも――」
レグルスの視線が、
リオラとミヅキへ向く。
「行く覚悟はあるか」
静かな空気。
リオラとミヅキが、
レグルスを見つめ返す。
そして。
二人は、
静かに頷いた。
レグルスも、
小さく頷く。
「明日の朝――」
「出発しよう」
火が、
静かに揺れる。
夜は、
少しずつ更けていった。
火は、
小さく――
それでも。
強く揺れていた。
朝。
まだ、
空は薄暗かった。
遺跡の中心部へ。
レグルスとミヅキが、
静かに歩いてくる。
レグルスは、
剣を。
ミヅキは、
杖を。
それだけを持っていた。
冷たい朝の空気。
その時。
メルクリウスが、
こちらへ歩いてくる。
「お二人とも――」
「どうか、
ご無事で」
静かな声。
そして。
メルクリウスが、
周囲を見渡す。
「アウローラ様は……」
「まだ、
ですか……?」
レグルスとミヅキも、
静かに辺りを見る。
その時。
「ごめーん!」
「遅くなったわ!」
声が響く。
リオラだった。
ボロ布を、
風呂敷代わりにして。
少し膨らんだ荷物を、
背負っている。
二人の視線が、
自然とその荷物へ向いた。
リオラが、
少し笑う。
「まあ――」
「使わないにしても、
持って行った方が安心でしょ?」
三人の間に、
わずかな苦笑いが浮かぶ。
メルクリウスが、
静かにリオラを見る。
「アウローラ様も――」
「どうか、
ご無事で」
「必ず、
生きて帰ってきてください」
リオラが、
力強く頷く。
「ええ――」
「必ず」
そして。
リオラが、
再び口を開く。
「バイソンは、
こっちに残った方がいいから――」
「ドラゴンに乗って、
行きましょうか」
三人が、
ドラゴンの待つ遺跡の外れへ向かおうとする。
その時。
遺跡の人々が、
次々と見送りへ出てきていた。
静かな声。
揺れる灯り。
リオラが、
大きく手を振る。
「行ってくるねー!」
「メルクも、
ここまでで良いわ」
「あとは、
頼んだわね」
メルクリウスが、
静かに頷く。
「はい――」
「戻ってこられた時には、
もう少し生活を再建しておきます」
その言葉を聞き。
三人は、
静かに歩き出す。
遺跡の中心部を、
後にして――。
「第四章 残された光」までお読みいただき、ありがとうございます。
ここで第四章終わりです。
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