第83話 明日へ向けて
遺跡の朝。
また、
陽が昇る。
時は、
止まることなく流れていく。
中心部へ、
人々が静かに集まっていた。
火は、
まだ小さく残っている。
朝の空気。
人々は、
一度そこへ集まると――
やがて、
それぞれの持ち場へ散っていく。
木材を運ぶ者。
水を汲む者。
周辺の見回りへ向かう者。
少しずつ。
遺跡の暮らしが、
形になり始めていた。
その中で。
リオラが、
腕を組んで立っている。
眉間には、
わずかに皺が寄っていた。
人々の様子を、
見ているような。
何かを、
考え込んでいるような。
その姿を見たメルクリウスが、
小さく声を落とす。
「アウローラ様の様子が、
少しおかしい気がするのですが……」
「何か、
あったのでしょうか」
レグルスも、
静かにリオラを見る。
だが。
メルクリウスの問いには、
答えなかった。
――昨日の話を、
気にしているのか……?
少し離れた場所。
ミヅキも、
静かにリオラを見ていた。
――いつもの調子では、
ないか……。
リオラの様子を、
気にしながらも――。
人々は、
それぞれの作業へ戻っていく。
メルクリウスが、
周囲へ指示を飛ばしていた。
「その木は、
こっちへ運んでくれ」
「倒れないよう、
しっかり支えるんだ」
力仕事は、
メルクリウスを中心に進んでいく。
レグルスも、
中心部へ運び込まれた大木を持ち上げる。
重い木材が、
静かに動いていく。
木々の匂い。
乾いた音。
職人たちは、
避難の際に持ち出した僅かな道具を使いながら――
木材を、
少しずつ加工していた。
削る音が、
静かに響いていた。
その少し離れた場所。
ミヅキは、
リオラの様子を気にしながら立っていた。
その時。
服の裾が、
小さく引かれる。
ミヅキが、
静かに視線を落とす。
幼い子供が、
こちらを見上げていた。
ミヅキは、
小さく表情を和らげる。
「あっちで、
遊ぼうか」
子供たちが、
静かに集まってくる。
ミヅキは、
その子たちを連れながら歩き出した。
陽が、
少し高くなる頃。
遺跡の中に、
立ち上る煙の数が増えていた。
火の匂い。
煮炊きの音。
人々へ、
わずかな昼食が配られていく。
リオラも、
静かに食事を取っていた。
だが。
その眉間には、
まだ皺が寄っている。
メルクリウスが、
その様子を見つめながら小声で呟く。
「いよいよ、
これは……」
「重症では……」
「アウローラ様が、
このような……」
レグルスとミヅキは、
何も言わない。
ただ。
静かにリオラを見ていた。
昼食が終わる。
再び、
人々が持ち場へ散っていく。
リオラは、
また腕を組んでいた。
眉間には、
わずかな皺。
時間だけが、
静かに流れていく。
やがて。
日が、
少しずつ傾き始める。
人々が、
再び中心部へ集まり始めていた。
その時。
「よしっ!」
大きな声が、
響く。
リオラだった。
「私がいなくても、
全然大丈夫だわ」
レグルスとミヅキへ、
視線を向ける。
「レグルス!
ミヅキ!」
「明日、
出発する準備をしましょ」
「準備ができたら――」
「まずは、
北の遺構を目指すわ」
さらに。
リオラの視線が、
メルクリウスへ向く。
「メルクには、
ここのことを任せるわ」
「魔獣が、
襲ってくるかもしれないし」
メルクリウスが、
静かに頷く。
「はい――」
「お任せください」
その表情には、
安堵が浮かんでいた。
いつものリオラへ、
戻ったことへの安堵――。
だが――。
三人の表情から、
緊張は消えていなかった。
その先にいる、
エクリシウスへ向けて――。




