第79話 遺跡の朝
朝の遺跡。
人々が、
静かに集まり始めていた。
中心部。
まだ小さく残る火。
その周囲へ、
人々が腰を下ろしていく。
「おはよう」
「昨日は寒かったな……」
小さな声。
朝の空気。
やがて。
リオラが、
人々を見渡しながら口を開く。
「もう少し、
寝床をどうにかしたいわね」
「森の木は、
使えそうだから――」
「切って、
集めましょ」
リオラが、
周囲を見渡す。
「レグルスとメルクが、
得意そうだから任せたわ」
メルクリウスが、
静かに頷く。
「レグルス殿と――」
「あと何人か、
こっちへ来てくれ」
数人の男たちが、
立ち上がる。
レグルスも、
静かに腰を上げる。
メルクリウスたちと共に、
森の方へ歩いていく。
リオラは、
さらに周囲を見渡す。
「火は、
大丈夫そうね」
「水路も機能してるから、
水も問題なさそう……」
一拍。
「あとは、
食料の確保ね……」
リオラが、
剣士団へ視線を向ける。
「食べられそうな動物がいないか、
周辺を見てきて」
「くれぐれも、
遺跡から離れすぎないように」
剣士たちが、
静かに頷く。
その後。
リオラが、
ミヅキたちへ視線を向ける。
「私たちは、
野草なんかを見ていきましょうか」
ミヅキが、
小さく頷く。
人々が、
それぞれの持ち場へ動き始める。
遺跡の朝が、
静かに動き出していた。
リオラとミヅキは、
数人を連れながら歩いていく。
森との境界。
木々のざわめき。
冷たい風。
リオラが、
周囲を見渡す。
「これ以上、
外へ行くのは危険ね」
「この辺りで、
探しましょうか」
人々が、
静かに散らばっていく。
その時。
ミヅキの視線が、
ふと止まる。
森との境界。
崩れた建物の脇。
そこに。
石の車輪のようなものが、
半ば埋もれながら残されていた。
ミヅキが、
静かに指を差す。
「リオラさん――」
「あれ、
使えませんか?」
リオラが、
視線を向ける。
「そうね……」
一歩近づき、
石車輪を見つめる。
「職人さんを、
呼んでくるわ」
「何かに使えるかもしれない」
メルクリウスを先頭に。
レグルスと、
数人の男たちが森へ向かっていく。
木々のざわめき。
湿った土の匂い。
メルクリウスが、
周囲を見渡す。
「あまり離れすぎても、
運搬が大変だ」
「この辺りで、
切っていこうか」
人々が、
静かに頷く。
メルクリウスが、
剣を抜く。
静かな呼吸。
魔力が、
刃へ集まっていく。
一閃。
大木が、
大きな音を立てながら倒れる。
周囲の葉が、
揺れた。
メルクリウスが、
自らの手を見る。
わずかな沈黙。
レグルスが、
その様子へ視線を向ける。
「まだ、
不思議か?」
「その力が……」
メルクリウスが、
静かに答える。
「ええ……」
「まだ、
自分ではないような感覚です」
「あの光を受ける前は――」
「こんな大木を、
剣で切ることはできませんでした」
「正直、
驚いています」
レグルスが、
小さく笑う。
「それも――」
「元々、
お前の力がなければ」
「発揮されないものだ」
「自信を持て」
メルクリウスが、
わずかに視線を落とす。
表情には、
まだ迷いが残っている。
「そう……ですか……」
レグルスが、
静かに頷く。
「まあ――」
「まずは仕事だ」
「木を切っていくぞ」
メルクリウスが、
小さく笑う。
「そうですね」
レグルスも、
剣を抜く。
魔力が、
静かに刃へ集まっていく。
次の瞬間。
木々が、
大きく揺れた。
二人が、
周囲の木を切り倒していく。
森に、
乾いた音が響いていた。




