第66話 生き残った者たち
上空。
エクリシウスの魔力が、膨れ上がっていく。
空気が、重い。
歪む。
レグルスが、見上げる。
「……このまま、王国ごと飲み込むつもりだ」
リオラが、息を呑む。
「早く逃げないと――」
ミヅキの視線が、揺れる。
「民にも……伝えないと」
「剣士団にも……」
レグルスが、遮る。
「だが、もう時間がない」
ミヅキの視線が、杖へ落ちる。
――大賢者の力。
――魔力を、弾く。
――さっきも、エクリシウスの力を退けた。
――ずっと、この王国を守ってきた力。
視線が、三人へ。
「……魔力を、集めます」
杖を、構える。
「皆さんの魔力を、ここへ」
「先程の光の影響で、リオラさんとメルクさんの魔力も高まっています」
レグルスが、頷く。
手を、かざす。
杖へ。
リオラとメルクリウス。
戸惑い。
だが。
同じように、手を向ける。
ミヅキが、杖を握り込む。
力を、込める。
目が、開く。
次の瞬間。
閃光。
杖から、放たれる。
その時。
城のあった場所。
闇が、広がり始める。
地を這うように。
王国全土へ。
閃光に、包まれる。
わずかな時間。
――静かだ。
風。
穏やか。
小鳥のさえずり。
少しずつ。
レグルスが、目を開ける。
視界に、リオラ。
ミヅキ。
メルクリウス。
そして。
あの竜。
周囲を、見渡す。
剣士団。
民。
多くの人々。
さらに、その先。
崩れた石造りの建物。
壁だったもの。
柱だったもの。
木々が、生い茂っている。
レグルスの目が、細まる。
――ここは。
リオラが、声を上げる。
「えっ!?」
「ここって、月の王国の遺跡?」
「どうやって来たの!?」
混乱。
その中で。
ミヅキが、杖を見る。
――これが、大賢者の力。
「おそらく……」
「守る力が、転移という形で働いたのでしょう」
リオラの顔が、強張る。
「エクリシア王国は……?」
「どうなっちゃったの……」
ミヅキが、視線を落とす。
「エクリシウスに……」
「呑み込まれていると、思います……」
リオラの声が、震える。
「……そんな」
沈黙。
風だけが、流れる。
しばらくして。
リオラが、口を開く。
「……まあ、でも」
「生き残った人たちで」
「どうにかするしかないわね」
剣士団を中心に、人々の確認が始まる。
誰が、生き残ったのか。
誰が、ここへ来られたのか。
混乱の中。
名前が、呼ばれていく。
メルクリウスが、状況を整理していく。
「西門へ避難していた民は、無事です」
「東門に残っていた剣士団も、多くが転移できています」
表情が、沈む。
「……ですが」
「城に残っていた王族や聖職者たちは……」
言葉が、止まる。
リオラとミヅキの顔が、強張る。
沈黙。
だが。
長くは、止まらない。
リオラが、顔を上げる。
「……バイソンは?」
「見てないよね!?」
メルクリウスが、わずかに戸惑う。
「あの魔獣ですか?」
「確認できた魔獣は、あの竜だけです」
リオラが、視線を落とす。
「……そっか」
ミヅキが、口を開く。
「この土地は、魔力によって守られています」
「エクリシウスも、近づきにくいはずです」
杖を、握る。
「今は……」
「ここで、生活を立て直しましょう」
レグルスが、歩く。
遺跡の境界へ。
崩れた石柱。
木々。
その先。
エクリシア王国の方角を、見つめる。
――エクリシウス。
ここにも、来ていた。
だが。
長くは、留まらなかったはずだ。
この土地を、避けるように。
レグルスの目が、細まる。
――今でも、残っている。
先生の魔力。
この遺跡に。
他の場所よりは、安全か……。
だが。
エクリシウスの魔力。
強い。
あれは、もう――
倒せないかもしれない……。
「第三章 太陽と月、そして影」までお読みいただき、ありがとうございます。
ここで第三章終わりです。
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