第65話 王国の滅亡
城が、崩れていく。
足場が、割れる。
レグルスの体が、動かない。
――このままでは……。
ミヅキの体も、強張る。
それでも。
杖を、握る。
強く。
――どうか。
――みんなを、守って。
杖から、光が溢れ出す。
レグルスの体が、軽くなる。
――動ける。
視線を、走らせる。
リオラ。
ミヅキ。
崩壊の中。
距離が、離れていく。
さらに。
二つの光。
――弱い。
形が、崩れる。
小さな球へ。
――間に合わない。
リオラが、叫ぶ。
「ミヅキ!」
地面が、崩れる。
体が、落ちる。
距離が、さらに開く。
――誰か……。
その時。
影。
視界を、覆う。
瓦礫を、弾き飛ばす。
突き抜けるように、迫る。
リオラとミヅキの体が、掬い上げられる。
背に、しがみつく。
風が、吹き抜ける。
赤い鱗が光る。
翼が広がり、角を持つ巨体。
――竜。
リオラの目が、見開かれる。
「これは……」
「神の爪痕にいた……」
「あの竜!?」
レグルスの視線が、竜へ向く。
――二人は無事か。
レグルスが、跳ぶ。
崩れ落ちる建物を踏み移る。
足場が、次々に崩れる。
それでも、前へ。
城の一帯から、離脱する。
二つの光が、寄ってくる。
集まるように。
竜が、降り立つ。
風。
砂が、舞う。
その背から。
リオラが、顔を出す。
「危ないところだったわね」
「よかったわ、無事で」
声。
背後から。
「アウローラ様ー!」
振り向く。
メルクリウスが、駆けてくる。
息を切らしている。
「よくぞご無事で」
リオラが、応じる。
「死ぬかと思ったわよ」
レグルスの視線が、上へ。
崩れた城の上空。
ミヅキも、見上げる。
「まだ、なにも終わっていません」
杖を、握る。
メルクリウスも、視線を上げる。
上空。
エクリシウスを見て、声が漏れる。
「あれが……」
「すべての元凶……」
ふと、弱まっていた二つの光が、揺れる。
かすれる。
次の瞬間。
一つが、リオラへ。
もう一つが、メルクリウスへ。
重なる。
溶けるように。
吸い込まれる。
リオラとメルクリウスの体が、わずかに揺れる。
戸惑い。
視線を交わす。
ミヅキが、口を開く。
「不安定だった魔力が……」
「留まれる場所に、移ったようです」
「……太陽の皇子と、剣士が」
「それぞれの場所に」
レグルスが、三人を見る。
そして。
視線を、上空のエクリシウスへ。
「……だが」
「この状況は、まずい」
上空。
エクリシウスが、見下ろす。
レグルス。
視線が、移る。
リオラ。
ミヅキ。
メルクリウス。
視線が、流れる。
影が、歪む。
「これ以上……」
「千年前を、思い起こさせるな」
魔力が、膨れ上がる。
圧が、増す。
瓦礫が、沈む。
崩れた城。
その残骸が。
闇へ。
引き込まれる。
飲み込まれる。
形を、失う。
「これで……」
「この王国も」
「終わりだ!!」
闇が、広がる。
這うように。
地を覆う。
王国全土へ。




