第62話 魔力の集束
外廊下。
城と中央塔、聖地を繋ぐ通路。
エクリシウスが、ミヅキを見据える。
「その魔力……」
「忌々しい」
影が、鋭く伸びる。
一直線に、ミヅキへ。
「消し去ってやる」
ミヅキが、杖を握る。
光。
弾く。
影が、霧散する。
エクリシウスの影が、わずかに歪む。
「やはり……」
「厄介だ」
ミヅキが、踏みとどまる。
「どうして……」
「千年前も、今も……」
「世界を滅ぼそうとするの……」
エクリシウスが、静かに。
「滅ぼす?」
「そんなつもりはない」
「ただ――」
「欲しいだけだ」
「魔力を」
空気が、重くなる。
「邪魔をするものを」
「消しているだけだ」
影が、再び伸びる。
今度は、速い。
ミヅキが、身構える。
――来る。
だが。
当たらない。
違和感。
目の前。
背が、立つ。
影を、正面から受け止めている。
――レグルス。
その肩に、リオラがいる。
レグルスが、リオラを降ろす。
リオラが、ミヅキに駆け寄る。
「ミヅキ、大丈夫!?」
ミヅキが、頷く。
リオラが、息をつく。
「……それにしても」
「死ぬかと思った」
「普通、外を登ってくる?」
視線が、杖へ。
「それ……大賢者の杖!?」
「持ってきちゃったの?」
空気が、変わる。
レグルスと、エクリシウス。
正面。
動かない。
睨み合う。
先に、エクリシウス。
「もう少しだ……」
「あと少しで」
「貴様に届く」
影が、わずかに揺れる。
「超える」
一拍。
「あの時……」
「私から奪った魔力も」
「返してもらうぞ」
――あの時。
影が、揺れる。
記憶が、浮かぶ。
――千年前。
レグルスの剣。
速い。
重い。
かわす。
弾く。
だが――削られる。
確実に。
「なんなんだ……こいつは」
「このままでは……」
距離を取る。
影を、放つ。
奔流。
押し潰す。
だが。
斬られる。
裂かれる。
消える。
レグルスが、踏み込む。
間合い。
消える。
一閃。
断たれる。
体が、裂ける。
影が、揺らぐ。
「こんな……ところで……」
死。
一瞬、よぎる。
振り払う。
「消えてたまるか!!」
その時。
違和感。
魔力が――
抜ける。
流れる。
削がれていく。
「なんだ……これは……」
止まらない。
レグルスへ。
吸い寄せられる。
「どうなっている……」
残った力を、絞る。
影を、放つ。
咆える。
だが。
届かない。
触れる前に、消える。
輪郭が、崩れる。
存在が、薄れる。
それでも。
「消えるものか……」
「こんなところで……」
――影が、揺れる。
エクリシウスが、レグルスを見る。
口を開く。
「千年前のようには、いかん」
「届かなかったが……」
「今は違う」
「全ての鍵は、揃った」
レグルスが、踏み込む。
間合い。
一気に詰まる。
斬る。
影が、受ける。
弾く。
レグルスは、止まらない。
連撃。
押す。
削る。
だが。
エクリシウスは、崩れない。
受ける。
流す。
弾く。
距離が、開く。
大きく、退く。
「もう、好きにはさせん」
次の瞬間。
影が、引き上がる。
そのまま、崩れかけた中央塔の頂へ。
「これで――終わりだ」
魔力が、膨れ上がる。
震動。
空気が、軋む。
影が、広がる。
遠方の魔力が、動く。
さらに遠く。
この地の外からも。
引き寄せられる。
流れ込む。
重なり。
膨れ上がる。
すべてが、エクリシウスへ。
レグルスの目が、細まる。
――何が、起きる。




