第57話 迫り来る王国の危機
レグルスは、影の剣士を薙ぎ倒していく。
列をなしていた影が、次々と崩れる。
前へ。
エクリシウスを、捉える。
間合いを詰める。
振り下ろす。
エクリシウスが、受け止める。
だが――耐えきれない。
流し、後ろへ退く。
レグルスは、止まらない。
さらに、踏み込む。
剣が、重なる。
――おかしい。
あの時の魔力は、もっとあった……。
レグルスの目が、わずかに見開かれる。
……まさか。
エクリシウスが、歪む。
「気づいたようだな……」
受け流しながら、笑う。
「エクリシア王国に」
「剣士たちを向かわせている」
「……今からでは」
「もう、間に合わない」
笑みが、深くなる。
レグルスの思考が、走る。
――もう、繰り返さない。
視線が、後ろへ。
「リオラ!」
声が、響く。
「エクリシア王国へ戻る!」
「お前の相手は――私だ!」
エクリシウスが、踏み込む。
影が、伸びる。
突き刺す。
だが。
届かない。
レグルスは、かわす。
剣に、魔力が満ちる。
さらに、強く。
振る。
斬撃。
影が、削れる。
歪む。
声にならない、軋み。
――何だ、この力は。
エクリシウスの揺らぎが、乱れる。
後退。
形が、崩れる。
「……エクリシア王国は」
「私の手に、落ちるぞ」
そのまま。
霧のように、消える。
レグルスは、リオラとバイソンのもとへ戻る。
「急ぐぞ」
リオラが、頷く。
「わかったわ」
二人は、背に乗る。
「頼むわね」
バイソンが、走り出す。
レグルスの手が、触れる。
魔力が、流れる。
さらに速く、風が、強まる。
――エクリシア王国。
間に合え。
ミヅキの自室。
椅子にもたれたまま、ミヅキは動かない。
その奥で、魔力を感じる。
近い。
多い。
息が詰まる。
……なんなの、これ。
王国へと迫っている。
とてつもない数。
――エクリシウス。
ミヅキは、指先に力を込める。
身体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。
足元が揺れる。
それでも、倒れない。
扉へ向かう。
手をかける。
開く。
廊下に出る。
呼吸が浅い。
このままでは――。
エクリシア王国、東門。
朝。
太陽が昇り、光が差し込み始める。
門の前。
数人の剣士が、持ち場に立っている。
一人が、あくびをする。
「最近は、魔獣も落ち着いてきたな……」
隣の剣士が、肩をすくめる。
「ああ、このまま続けばいいが……」
その時。
別の剣士が、目を細める。
「……おい」
指を差す。
「なんだよ……あれ」
視線が、揃う。
東。
光の中で、影が揺れている。
ひとつではない。
増えていく。
無数。
こちらへ。
――来る。




