第56話 偽りの王と影の剣士
南門を、抜ける。
東へ続く街道。
太陽の王国へ。
月明かりの下。
バイソンの背に、二人。
「……夜だけど」
リオラが、前を見たまま。
「急がないと」
レグルスの手が触れる。
魔力が、流れる。
いつもより、強く。
バイソンの速度が上がる。
風を切り、景色が流れる。
――アウレリア。
どれほどの魔力が、眠っているのか……
やがて。
岩場。
抉れた大地。
――神の爪痕。
リオラが、目を細める。
「あの魔獣……眠ってるのね」
「夜なら、問題なかったのかも……」
通り過ぎる。
神の爪痕は、背後に流れる。
その時。
レグルスの視線が、止まる。
……なんだ。
気配が、多い。
密度が、おかしい。
――数が。
多すぎる。
夜が、流れる。
風。
同じ道が、続く。
やがて。
地形が、変わる。
乾いた空気。
崩れた石。
――太陽の王国。
その気配。
レグルスが、低く。
「リオラ」
「……気をつけろ」
「……おかしい」
リオラが、頷く。
「……わかったわ」
バイソンが、足を止める。
二人は、降りる。
前へ。
遺跡。
足を、踏み入れる。
夜が、ほどける。
光が、差し込む。
遺跡。
崩れた柱と、割れた石。
その奥へ。
中心部。
視線の先。
黒い塊が、揺れている。
輪郭が、定まらない。
やがて。
人の形を、取る。
――エクリシウス。
「……アウレリアの魔力」
「千年前は、届かなかった」
わずかに、歪む。
「これで――揃う」
影の中心。
光。
リオラの目が、見開く。
「……それ」
「私のペンダント……」
一歩、出る。
「あの時……」
影が、揺れる。
「これのおかげだ」
低く。
「礼を言う」
「アウレリアの剣士たちよ」
揺らぎが、広がる。
「……起きろ」
「今は――私が、アウレリアの王だ」
地面が、揺れる。
影が、浮かび上がる。
ひとつ。
ふたつ。
増えていく。
やがて。
無数。
それぞれが、剣を持つ。
レグルスの視線が、細まる。
……これか。
気配の正体。
「死者の……魔力まで」
リオラと、バイソンへ。
手で、制す。
「下がっていろ」
影が、動く。
レグルスへと迫る。
距離が、一気に詰まる。
レグルスは剣に魔力を込める。
一閃。
衝撃が、広がる。
前列が、消し飛ぶ。
だが――
後ろから次が迫る。
まだ、来る。
止まらない。
レグルスは、止めない。
連撃。
衝撃波が、重なる。
影が、崩れていく。
エクリシウスの揺らぎが、わずかに乱れる。
……なんなんだ、この魔力は。
……まだ、届かないのか。
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