第54話 繋がる魔力
夜。
城の裏。
影の中。
二つの気配が、滑り込む。
リオラと、レグルス。
扉は、わずかに開いている。
軋み。
押す。
内へ。
……この時間なら、巡回は薄くなります。
……裏口を、開けておきます。
メルクリウスの声が、よぎる。
扉が、静かに閉まる。
城内。
廊下。
壁際を、進む。
足音を、殺す。
ミヅキの自室へ。
角。
曲がる。
人影。
止まる。
給仕。
一瞬。
目が、合う。
空気が、張る。
給仕の視線が、逸れる。
そのまま。
通り過ぎる。
足音だけが、遠ざかる。
リオラが、息を吐く。
かすかに。
「……今の」
「気づいてたわね」
「助かったわ……メルクに感謝ね」
レグルスは、答えない。
再び、動く。
廊下。
階段。
上へ。
礼拝。
詠唱。
低く、重なる声。
聖職者。
王族。
頭を垂れる。
その中で。
大神官の指が、わずかに止まる。
――混じっている。
目が、細まる。
……ねずみか。
口元が、わずかに歪む。
「……今夜は、このあたりで」
ざわめき。
祈りが、途切れる。
人が、動き出す。
入口。
メルクリウスは、立つ。
視線は、動かさない。
……気づいたか。
……早く。
廊下の角。
リオラが、身を寄せる。
視線だけを、出す。
扉の前。
台。
食事。
人影は、ない。
……台の下を。
メルクリウスの声が、よぎる。
リオラが、頷く。
「……あれね」
合図。
二人は、走る。
リオラが、しゃがみ込む。
手を、差し入れる。
探る。
指先に、触れる。
硬い感触。
――鍵。
掴む。
立ち上がる。
差し込む。
回す。
……回らない。
もう一度。
力を、込める。
――回る。
扉が、わずかに開く。
暗い。
リオラが、目を凝らす。
部屋の奥。
椅子。
ミヅキが、座っている。
力なく。
リオラが、駆け寄る。
「ミヅキ、大丈夫なの!?」
まぶたが、わずかに動く。
声は、かすれる。
「……手紙は」
「このままだと……」
「わかってる」
食い気味に。
「でも、先に……」
背後。
「やはり、貴様らか」
振り向く。
大神官。
入口に、立つ。
目が、わずかに揺れる。
だが、笑みを作る。
リオラが、睨む。
「あなたが……ミヅキを?」
「お前には関係のないことだ」
「それに――」
「追放された身を、連れ込むとは」
「処分は、軽く済まんぞ」
リオラが、返す。
「どうだっていい!」
空気が、張る。
レグルスの気配が、変わる。
圧。
大神官の喉が、わずかに鳴る。
足は、動かない。
口元だけが、歪む。
「……恐ろしいな」
「だが」
「私を、殺せん」
レグルスが、低く。
「……繋がっている」
「こいつと、ミヅキが」
視線は、外さない。
「今、斬れば――ミヅキが死ぬ」
リオラの息が、詰まる。
「そんな……」
「すまない」
短く。
次の瞬間。
レグルスの視線が、鋭くなる。
「だが」
大神官へ。
「お前も、わかっているはずだ」
静かな圧。
「ミヅキに、何かあれば――」
言い切らない。
それで、足りる。
大神官の目が、見開く。
「……なんだ、その魔力は」
後ずさる。
「混ざっている……」
「エクリシウスの……」
息が、乱れる。
「貴様は……誰だ……」




