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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第三章 太陽と月、そして影

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第53話 手紙より、今は

 エクリシア王国。


 城門を抜ける。


 外気。


 空気が、わずかに違う。


 メルクリウスは、歩く。


 向かう先。


 南門。


 ……動けないのか。


 歯を、噛み締める。


 ……あの二人が戻るまで。


 何も、できない。


 情けない。


 それでも。


 思考は、止まらない。


 ……このままでは。


 アウローラ様も。


 ミヅキ様も。


 不在のまま。


 王国は……。



 南門。


 見慣れた景色。


 だが。


 どこか、違う。


 持ち場へ。


 歩を進める。


 剣の柄に、手を添える。


 門番としての任に就く。


 時間が、過ぎる。


 風が、抜ける。


 門は、静かだ。


 ……異変は、ない。


 静かすぎる。


 だが。


 胸の奥のざわつきは、消えない。


 その時。


 遠く。


 土煙。


 メルクリウスの視線が、細まる。


 ……なんだ。


 動き。


 速い。


 一直線に、こちらへ。


 剣の柄に、手がかかる。


 半歩、前へ。


 門の前に、立つ。


 ……通さない。


 影が、近づく。


 地を蹴る音。


 重い。


 魔獣か。


 ――来る。


 その時。


 わずかに、違和感。


 影の上。


 揺れる、何か。


 人影。


 目を、凝らす。


 ……あれは。


 息が、止まる。


 アウローラ様。


 そして……レグルス殿。


 構えが、ほどける。


 リオラが、手を振る。


 バイソンが、門前で止まる。


「アウローラ様……ご無事で」


「メルクがいてくれて助かったわ」


 一息。


「ミヅキは?」


「今、どうしてるの?」


「レグルスが、何かあったって」


 メルクリウスは、周囲を一瞥する。


「ここでは……」


 声を落とす。


「場所を変えましょう」


「訓練場へ」



 レグルスへ、視線を向ける。


「そのままでは、まずいです」


 外套を差し出す。


「これをお使いください」


 顔を隠すように、促す。


 視線が、バイソンへ。


「……その魔獣は」



「待っててもらえる?」


 リオラが、先に言う。


「中には入れられないものね」


 首元を軽く叩く。


「ごめんね、ここで待ってて」


 バイソンが、静かに頭を下げる。


 メルクリウスは、振り返る。


 門番へ、短く合図。


 持ち場を、引き継がせる。


「行きましょう」


 三人は、門を離れる。


 剣士団の訓練場へ。




 訓練場。


 奥の個室。


 扉が、閉まる。



 簡素な部屋。


 机と、椅子。



 三人は、座る。



 メルクリウスが、懐から取り出す。


 一通の手紙。


「……ミヅキ様からです」



 リオラが、奪うように受け取る。



 紙を、開く。



 視線が、走る。



 ――国外追放。


 ――あるいは、処刑。



 わずかに、息が詰まる。



 さらに、読む。



 ――エクリシウスは北へ。


 ――セレナリス。


 ――そして、アウレリア。



 レグルスの目が、細まる。



 リオラの指が、紙を握る。



 ――最後は、ここへ戻る。


 ――エクリシア王国へ。



 静寂。



 リオラが、顔を上げる。



「……ミヅキは!?」



 声が、強くなる。


「今、どうなってるの!?」



 メルクリウスが、答える。


「……軟禁されています」


 一拍。


「自室に」


「大神官によって」



 椅子が、鳴る。



 リオラが、立ち上がる。



「なら……」



 足が、動く。



「助けるしかないでしょ!」



 扉へ向かう。



 その瞬間。



「待ってください」



 メルクリウスの声。



 動きが、止まる。



「今、城へ戻れば……」


「確実に、怪しまれます」



 リオラが、振り返る。



 苛立ち。



「じゃあどうするの!」



 メルクリウスの視線が、まっすぐに向く。


「夜まで待ちましょう」


「私に、考えがあります」


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