第51話 閉ざされた扉
ミヅキの自室。
扉は、閉ざされている。
光は、薄い。
静けさ。
その中で。
ミヅキは、座らされている。
力なく。
項垂れる。
呼吸は、浅い。
大神官の手が、伸びる。
触れる。
そのまま。
魔力が、引き抜かれる。
流れる。
吸い上げられる。
止まらない。
大神官が、目を細める。
「満ちていく……」
「まだまだ、吸えるな」
ミヅキの身体が、わずかに揺れる。
抵抗は、ない。
声も、出ない。
ただ。
奪われていく。
静かに。
削られていく。
その時。
大神官の視線が、わずかに動く。
空気を、探る。
「……誰か」
一拍。
「嗅ぎ回っているものがいるようだな」
わずかに、口元が歪む。
「まあいい」
「所詮、なにもできん」
手は、止まらない。
魔力は、流れ続ける。
満ちていく。
歪に膨らんでいく。
大神官が、低く呟く。
「エクリシウス……」
「やつさえ、いなければ」
わずかに、笑う。
「私が、神だ」
笑みが、広がる。
静かに。
城内。
石の床。
足音が、響く。
メルクリウスは、歩く。
――聖職者に聞いても、答えは返ってこない。
あの様子。
間違いなく。
何かを、隠している。
だが。
正面からでは、崩せない。
思考が、巡る。
――では。
別のところから。
ふと。
引っかかる。
――食事は……。
殺された。
追放された。
その様子は、ない。
ならば。
食事は、運ばれているはず。
メルクリウスは、顔を上げる。
進む先を、変える。
廊下を抜ける。
厨房の近く。
給仕たちの姿。
その中に。
顔見知りを、見つける。
足を、止める。
「ミヅキ様のことで、聞きたい」
給仕が、振り向く。
少し驚いたように、目を見開く。
「ここ数日は……」
「食卓の間には、お越しになっていません」
食卓の間。
王族の食事が用意される場所。
そこに、姿はない。
「お部屋へ、お持ちしています」
メルクリウスの目が、細くなる。
「様子は?」
短く。
給仕は、わずかに言葉を選ぶ。
「……直接は、見ていません」
「部屋の前に、置いていますので」
メルクリウスの声が、低くなる。
「それは、誰の指示だ」
給仕が、視線を落とす。
「……大神官様の」
その一言。
空気が、重く沈む。
――やはり。
繋がる。
聖職者たちの態度。
閉ざされた部屋。
そして。
今の言葉。
すべてが、一つに繋がる。
メルクリウスは、息を吐く。
「……すまなかった」
「変なことを聞いた」
それ以上は、聞かない。
聞いても、出てこない。
メルクリウスは、背を向ける。
廊下へ戻る。
歩きながら。
思考が、沈む。
――ミヅキ様の私室がある区画。
あの先には。
自分では、入れない。
立ち入りは、制限されている。
だが。
状況は、見えてきた。
理由は、わからない。
それでも。
――軟禁されている。
ほとんど確信に近い。
足が、止まる。
奥歯を、噛み締める。




