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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第47話 人の消えた場所

 洞窟の中。


 水の中を、進む。


 バイソンの背。


 リオラとレグルスは、揺られている。


 足は、水に浸かっている。


 冷たさが、じわりと残る。


 音が、響く。


 水を踏む音。


 滴る音。


 光は、ない。


 リオラが、懐に手を入れる。


 取り出す。


 魔光石。


 淡い光が、広がる。


 岩肌が、浮かび上がる。


 濡れた壁。


 天井から垂れる水。


 奥は、見えない。


 リオラが、前を見たまま言う。


「本当にこっちなの?」


 一拍。


「なんか……ちょっとやばくない?」


 レグルスは、視線を動かさない。


「エクリシウスの気配は、まだ先へ続いている」


 リオラが、わずかに肩をすくめる。


「このまま進んで、大丈夫かしら……」


 視線が、揺れる。


「いったい、先はどうなってるのよ」


 返事は、ない。


 ただ。

 進む。


 水位が、わずかに上がる。


 バイソンの脚が、深く沈む。


 壁が、近づく。

 通路が、狭くなる。


 息苦しさが、増していく。


 それでも。

 進む。



 前方。


 わずかに、光。


 暗闇の奥に、にじむように浮かぶ。


 リオラが、目を細める。


「出口かしら」


「魔力は……」


 視線を向ける。


「あっちから感じる?」


 レグルスが、短く応じる。


「ああ……」


 そのまま、前を見る。


 ――誘っている。


 まるで。

 こちらへ来いと。


 光が、わずかに広がる。


 水面に、揺れる。


 反射が、目に入る。


 進むたびに。


 輪郭が、はっきりしていく。


 暗闇が、薄れていく。


 出口は、近い。


 引かれるように、進む。




「やっと出口ね」


 次の瞬間。


 足元が、消える。


 水の深さが、変わる。


 バイソンの身体が、沈む。


「――っ」


 言葉が、出ない。


 支えが、消える。


 二人の身体が、浮く。


 ――投げ出される。


 水中。


 冷たさが、全身を包む。


 体勢を整える。


 腕を動かす。


 水面へ。


 ――浮かび上がる。


 光。


 視界が、開ける。


 空が、広い。



 湖。


 静かに、広がっている。


 岸。


 遠くない。


 水面の向こう。


 緩やかな地形。


 草が、揺れる。


 点々と、木々。


 風が、抜ける。


 鳥の声。



 洞窟とは、違う空気。


 静かすぎる。


 リオラが、息を吐く。


「……なに、ここ」



 リオラが、岸を指す。


「とりあえず、あそこまで行きましょ」


 二人は、水を掻く。


 バイソンも、その後ろを泳ぐ。


 やがて。


 足が、地面に触れる。


 浅瀬。


 水を抜ける。


 岸へ。


 濡れた衣が、重い。


 リオラが、髪をかき上げる。


「あー……びちょびちょね」


 顔を上げる。


 言葉が、止まる。


 視線の先。


 草地。


 その中に。


 木の家が、点々と並んでいる。


 リオラの表情が、わずかに固まる。


「……え?」


 小さく、漏れる。


「ここ……」


 視線が、揺れる。


「王国以外に、人がいるはず……ないのに」



 レグルスは、答えない。


 ただ、見ている。



 家は、崩れていない。


 形を、保っている。


 ――人の手が、入っている。


 リオラが、ゆっくりと歩き出す。


 草を踏む音。


 近づく。


 戸が、開いている。


 中は、荒れていない。


 そのままの形。


 さらに。


 地面。


 黒く、焦げた跡。


 焚き火の痕。


 灰が、残っている。


 ――いた。


 確かに。


 ここに。


 だが。


 誰も、いない。


 風だけが、抜ける。


 リオラが、声を落とす。


「……どういうこと?」


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