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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第46話 暗闇を進む

 扉が、開く。


 大神官が入る。


 続いて、数人の聖職者。


 足音が、床に落ちる。


 部屋の空気が、変わる。


 ミヅキの部屋。


 だが――

 もう、誰のものでもない。


 大神官は、迷いなく机へ向かう。


 引き出しに、手をかける。


 開ける。

 ――あった。


 書物。


 古びた装丁。


 大神官が、それを掴む。


「……やはり」


 振り返る。


「やはり書物を盗んでいました」


 一拍。


「ミヅキ皇女を、ここへ」


 淡々と。


 聖職者たちが、頭を下げる。


 数人が、部屋を出ていく。


 残った者が、扉の前に立つ。


 静けさが、落ちる。




 しばらくして。


 再び、扉が開く。


 ミヅキが、連れてこられる。



 大神官が、静かに言う。


「……この部屋から出さないように」




 ――ミヅキの自室。


 だが。


 さきほどとは、違う。



 立っているだけで、息が浅い。


 力が、入らない。


 部屋の奥。


 大神官が、待っている。


 聖職者たちが、ミヅキを中へと入れる。


 大神官が、静かに言う。


「今日から、この部屋から出ないように」


 一拍。


「安心してください。食事は用意します」


 視線を向ける。


「下がりなさい」


 聖職者たちが、出ていく。


 扉が、閉まる。


 静けさ。


 ミヅキは、動かない。


 ……動けない。


 大神官が、近づく。


 手を伸ばす。


 手首を、掴む。


 軽く。


 逃がさないように。


 そのまま。


 魔力が、引き抜かれる。


 ミヅキの身体が、揺れる。


 膝が、崩れる。


 視界が、滲む。


 声は、出ない。


 ただ。


 奪われていく。


 静かに。


 繰り返すように。





 南の遺構。


 バイソンの背。


 リオラとレグルスは、揺られながら進む。


 ぬかるんだ地面。


 沈む足場。


 ところどころに、固い土が残る。


 水が、広がっている。


 浅い場所と、深い場所が入り混じる。


 かつての街道は、かろうじて形を保っている。


 レグルスは、前を見る。


 気配を、辿る。


 ――残している。


 わずかに、途切れずに。


 ここまで、はっきりと。


 ……やはり、罠か。


 視界が、開けていく。


 崩れた建物の跡。


 沈んだ石壁。


 柱の残骸。


 水の中に、街の名残が沈んでいる。


 空気が、わずかに変わる。


 かつての中心だった場所。


 リオラが、周囲を見回す。


「このあたりが、一番栄えてたところかしら……」


 一拍。


「エクリシウスはいないみたいね……」


 レグルスは、視線を外さない。


「……まだ先だ」


 一拍。


「気配が、奥へ続いている」


 バイソンが、水を踏む。


 音が、響く。


 さらに、進む。


 やがて。


 前方に、影。


 地面が、落ちている。


 岩肌。


 口を開けたような、暗がり。


 ――洞窟。


 周囲の地形が、えぐれている。


 水が、そこへ流れ込んでいる。


 リオラが、息を呑む。


「えっ……」


「もしかして……」


 レグルスは、短く答える。


「この先から感じる」


 リオラが、小さく頷く。


「やっぱり……」


 一拍。


「行くしかないわね」


 バイソンの首を軽く叩く。


「ごめんね」


 バイソンは、ためらわず進む。


 水が、深くなる。


 脚が、沈む。


 やがて。


 リオラとレグルスの足が、水に浸かる。


 冷たい。


 バイソンの背だけが、水面の上にある。


 洞窟の中へ。


 光が、消えていく。


 音が、変わる。


 滴る水。


 反響する足音。


 暗闇が、濃くなる。


 二人は、そのまま進む。


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