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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第45話 奪われていく

 エクリシア王国。


 城の廊下。



 ミヅキは、大神官の後を歩く。


 奥へ。

 さらに、奥へ。


 人の気配が、薄れていく。


 足音だけが、残る。


 ――この先。

 大神官の一族が管理する、書斎。


 普段は、立ち入らない場所。


 人も、来ない。


 ミヅキは、前を見たまま思う。


 ……なぜ、今。



 大神官が、口を開く。


「我々の一族は、千年にわたり魔力を集めてきました」


 一拍。


「もともと魔力は弱い一族ですが」


「集めることに関しては、特化していた」



 ミヅキは、何も言わない。

 ただ、歩き続ける。


 ――どうして、それを私に。

 ……目的は。



 大神官は、歩みを止めない。


「先代の大神官は、その千年分の魔力を吸収した」


「一族の悲願でした」


 わずかに、声が落ちる。


「ですが――」


「エクリシウスに、呑まれた」


 廊下の奥。

 扉が、現れる。


 重い、木の扉。


 装飾は、少ない。


 大神官が、手をかける。


 開く。


 書斎。


 静まり返っている。


 ミヅキが、足を踏み入れる。


 続いて、大神官。


 ――閉まる。


 扉が、ゆっくりと。


 音が、残る。



 大神官は、書斎の奥へ向かって歩く。


 ミヅキは、その背を見ながら思う。


 ――やはり、あの場所に。


 大神官が、静かに言う。


「この書斎は、一族が代々管理してきた場所です」


「ここには、一族にしか伝えられていない記録がある」


 歩みは、止まらない。


「千年前――」


「エクリシウスは、倒された」


「銀髪の男、レグルス」


「勇者と呼ばれていた存在」


 一拍。


「だが、エクリシウスは神ではない」


「当時は、魔王と呼ばれていた」


 ミヅキは、黙って聞いている。


「我々は、レグルスを恐れた」


「対抗できる力は、どこにもなかった」


「だから――」


「千年の懲役を課した」



 大神官の足が、止まる。


 突き当たり。


 本棚。


 背表紙のない書物が、並んでいる。


 ――一部、欠けている。


 ミヅキの視線が、そこに向く。


 大神官が、わずかに肩をすくめる。


「まあ……その程度の話は、ご存じでしょうが」


 次の瞬間。


 距離が、消える。


 右手が、ミヅキの口元を掴む。


 頬を押さえ込むように。


 声を、封じる。


 同時に。


 左手が、手首を掴む。


 引き寄せる。


 背中が、本棚に叩きつけられる。


 息が、詰まる。


 押さえつけられる。


 逃げ場は、ない。


「――ミヅキ」


 低い声。


「先代の書物を、どこへやった」


 声にならない音が、漏れる。


 そのまま。


 大神官の手が、ミヅキに触れたまま――


 吸い上げる。


 魔力が、流れる。


 ミヅキの身体が、わずかに震える。


 大神官の表情が、変わる。


「……これは」


 息が、混じる。


「素晴らしい魔力だ」


 目が、細まる。


 満たされていく。


「……満ちる」


 その時。


 わずかに、視線が揺れる。



 ――掴む。


 何かが、引っかかる。


 内側から、浮かび上がる。


「……なるほど」


 大神官の口元が、歪む。


「やはり、お前か」



 ミヅキの目が、わずかに見開かれる。


 ――違う。


 推測ではない。


 確信。


 ……読まれている。



「力が、発現したようだ」


「……その通りだ」


「お前の考えが、見える」


 一歩、踏み込む。


「場所は……自室」


「引き出しの中か」


 ミヅキの意識が、揺れる。


 視界が、滲む。


 魔力が、抜けていく。


 力が、入らない。


 大神官が、手を離す。


 ミヅキの身体が、崩れる。


 本棚を背に、座り込む。


 呼吸が、浅い。


 大神官が、見下ろす。


「これは……」


「皇女といえど、重罪ですよ」


 一拍。


「処罰の対象になりますこと、ご理解いただけますか」


 静かに、続ける。


「とりあえず」


「あなたの自室を、調べましょうか」



 ミヅキの意識が、遠のく。


 その中で。


 ひとつだけ、浮かぶ。


 ――レグルス。


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