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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第44話 不穏の兆し

 月の王国の遺跡が、遠ざかっていく。


 バイソンの背。


 リオラとレグルスは、揺られながら進む。


 やがて、森が薄れていく。

 木々が、まばらになる。


 街道は、まだ残っている。


 だが、周囲は湿地へと変わっていく。


 水を含んだ地面。


 足元が、沈む。


 リオラが、周囲を見回す。


「景色も、変わってきたわね」


「それにしても、バイソンは元気ねー」


「魔獣だから、疲れないのかしら」


 バイソンは、変わらず進む。


 街道も、崩れ始めている。


 踏み固められていた道も、ところどころ途切れている。


 リオラが、軽く身を揺らす。


「いやー、バイソンがいてくれてよかったわ」


「普通に歩いてたら、辿りつけないわね」


 少し、振り返る。


「あなたは、南の遺構へは行ったことある?」


 レグルスは、短く答える。


「いや、ない」


 リオラが、前を向く。


「そうよね。私も、存在を聞いたことがあるだけだから」


「どんなところなのかしら」




 固い地面を選びながら、進む。


 水を含まない、わずかな足場。


 そこで、足を止める。


 火を起こす。


 バイソンは、その場に伏せる。


 夜。


 虫の音。


 水の気配。


 言葉は、少ない。


 やがて。


 朝。


 薄く、霧が流れる。


 再び、進む。



 湿地が、さらに深くなる。


 水が、足元を覆う。



 バイソンの歩みも、わずかに鈍る。


 リオラが、足元を見ながら言う。


「足場、悪くなってきたわね……」


「それにしても――」


 視線を上げる。


「だんだん遺跡の中に入ってきたみたいね」


 旧街道の上から、周囲を見渡す。


 水は、さらに深い。


 その奥。


 沈んだ石や、崩れた柱。

 水に浸かった遺構の一部が、見える。


 リオラが、思い出したように口を開く。


「そういえば、南の遺構って」


「小さな集まりが点在してたらしいわ」


「中心になる場所も、あったみたいだけど」


 バイソンは、進み続ける。


 レグルスの視線が、わずかに動く。


 ――かすかに感じる。


 エクリシウスの、魔力。


 だが――


 消してはいない。


 ……わざとか。


 罠。


 視線を、前へ戻す。


 進むしかない。





 ミヅキの書斎。


 静かだ。


 ミヅキは、目を閉じる。


 ――変わった。


 千年の魔力が、失われてから。


 感覚が、研ぎ澄まされていく。



 魔力の、動き。


 遠く。


 ……リオラと、レグルス。


 向かっている。


 南の遺構へ。


 そして。


 もう一つ。


 歪んだ、流れ。


 ――エクリシウス。


 すでに。


 南に、いる。


 順に、進んでいる。


 ……やはり。


 次は。



 その時。


 扉が、叩かれる。


 ミヅキは、目を開ける。


「……はい」


 扉が、開く。


 入ってきたのは、大神官。


 ミヅキは、立ち上がる。


「どうされました?」


 大神官は、穏やかな声で言う。


「ミヅキ様に、ご案内したいところがございます」


「お時間、よろしいでしょうか」


 ミヅキは、わずかに頷く。


「ええ」


 大神官が、扉の方へ身を向ける。


「では、こちらへ」


 ミヅキは、その後に続く。


 書斎を、出る。


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