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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第42話 見覚えと違和感

 朝。


 陽が、差し始める。


 石の影が、ゆっくりと動く。


 月の王国の遺跡。


 崩れた壁。

 割れた柱。

 苔に覆われた、石の道。


 静かだ。

 音が、ない。


 レグルスとリオラは、

 バイソンとともに、遺跡の中を進む。



 足元。


 砕けた石。


 かすかに残る、道の跡。



 リオラが、周囲を見回す。


「エクリシウス……ここに来てるのかしらね……」


「どうなんだろ」



 レグルスは、足を止めない。


 ――感じない。


 魔力。


 ここには、ない。


 だが――


 わずかに魔力の痕が残っている。


 通った。


 それだけが、残る。



 レグルスが、口を開く。


「……ここを通ったようだ」


「ただ、もうここにはいない」



 リオラが、わずかに眉を寄せる。


「えっ、そうなの」


「……向かってる先は、合っているということよね」



 レグルスは、周囲を見る。


 ――この土地。

 ……魔力は、はっきりしない。


 かつては、

 ここに集まっていたはずだが。


 ……今は。



 それでも。


 エクリシウスは、ここを通っている。


 ……なぜだ。


 別の目的か。




 さらに、進む。


 視界が、開ける。


 大きな、神殿の跡。


 崩れた柱。

 割れた床。


 中央には、

 かつて祭壇だったものの残骸。


 空気が、重い。


 リオラが、足を止める。


「……前に来た時は、なんとも思わなかったけど」


 一拍。


「なんだか、嫌な気配がするわ」



 レグルスは、周囲を見る。


 ――残っている。


 わずかに。


 魔力の痕。


 ……ここか。


 大神官の一族。


 この場所で、

 魔力を集めていた。



 足を踏み入れた瞬間、


 空気が変わる。


 境を、越えたような感覚。


 その瞬間。


 魔力が、膨らむ。


 レグルスの目が、細まる。


「リオラ。バイソンと下がっていろ」



 前方。


 歪む。


 空間が、揺れる。


 形が、生まれる。


 魔獣。


 狼の姿。


 低く、唸る。


 ……フェンリル。



 レグルスの視線が、止まる。


 ――あの時の。


 だが。


 ……違う。


 あの時ほどではない。


 剣を、抜く。


 同時に。


 フェンリルが、地を蹴る。


 一瞬で、距離を詰める。


 ――速い。


 ……違う。


 その軌道。

 わずかに、逸れる。


 レグルスの横をかすめるように。


 狙いは――

 後ろ。


 リオラ。


 レグルスの目が、わずかに見開く。


 踏み込む。


 割り込むように、剣を振る。


 刃が、牙を受ける。


 鈍い衝撃。


 フェンリルが、弾かれる。


 レグルスも、体勢を立て直す。


 間合い。


 詰める。


 一気に。


 斬る。


 刃が、走る。


 フェンリルの身体が、歪む。


 崩れかける。


 だが――


 耐える。


 再び、飛びかかる。


 牙が、迫る。


 レグルスは、身をずらす。


 踏み込み。


 斬る。


 今度は、深い。


 フェンリルが、裂ける。


 形を、保てない。


 崩れる。


 霧のように、散る。


 消える。



 静寂。



 レグルスは、剣を下ろす。


 周囲を、見る。


 ――やはり。


 あの時とは、違う。


 不完全。


 ……試しているのか。



 遠くから、声。


「大丈夫ー?」


 リオラが、近づいてくる。



 レグルスは、剣を収める。


 息を、ひとつ。


 周囲は、静かだ。

 何も、ない。


 ただ、

 戦いの余韻だけが、残る。


 ――なぜだ。


 わずかに、眉が動く。


 あの軌道。


 ……俺ではない。


 視線が、後ろへ向く。


 リオラ。


 すぐに、逸らす。




 黒が、揺れる。


 フェンリルの魔力が、途切れる。


 ――消えた。


 静かに、受け取る。


 その感触。


 ……やはり。


 まだ、相手にならない。


 だが。


 近づいている。


 あの魔力に。


 ……もう少しだ。



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