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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第41話 神なき祈り

 森の街道跡を、進む。


 バイソンの背。


 木々が、密になる。

 枝が、頭上を覆う。


 光は、もうない。


 夜。



 リオラが、前を見ながら言う。


「……さすがに、暗いわね」


 懐に手を入れる。


 取り出す。


 淡い光。


 魔光石。


 周囲が、ぼんやりと照らされる。


「これで、少しはマシね」


 一拍。


「この辺り……もう近い気がするわ」



 レグルスは、前を見る。


 ――感じない。


 ここまで来ても。


 エクリシウスの、魔力。


 ……ない。


 月の王国には、いないか。



 バイソンが、歩みを緩める。


 前方。


 木々が、途切れる。


 暗がりの向こうに、


 石が、見える。


 崩れた壁。


 門の残骸。



 リオラが、顔を上げる。


「……あ」


 少し、笑う。


「着いた、着いた」


 指を、前へ。


「ここが、北の門の跡ね」


 周囲を、見回す。


「今日は、ここで休みましょうか」


 バイソンが、ゆっくりと止まる。




 火が、起こされる。


 枝が、はぜる。


 揺れる光が、


 石の影を、浮かび上がらせる。


 リオラが、バイソンの首に腕を回す。


「今日はありがとね、バイソン」


 撫でる。


 笑う。


 バイソンは、鼻を鳴らす。


 ゆっくりと、地面を踏む。


 火が、揺れる。


 その光が、毛並みをなぞる。


 リオラが、軽く背を叩く。


「いい子ね」


 バイソンは、わずかに首を傾ける。


 夜が、落ちていく。





 エクリシア王国。


 礼拝の日。


 月の王家と、聖職者たちが集う。


 新たな大神官となってからは、


 初めての、儀。



 廊下を、歩く。


 足音は、静か。


 外階段を上り、


 そのまま中へ。


 広い空間を抜け、


 さらに奥の階段へ。


 上る。


 視界が、開ける。


 ――英雄たちの間。



 石の床。


 並ぶ者たち。


 その奥。


 祭壇。


 その上に、


 大神官。


 ミヅキは、列へと入る。


 視線が、触れる。


 ……大神官。


 まっすぐに、


 こちらを見ている。


 逸らさない。


 その目。


 測っている。


 値踏みするように。


 ……処すべきかを。


 ミヅキは、何も言わない。


 ただ、前を見る。


 祈りの時。


 頭を垂れる。



 ――流れている。


 また。


 魔力。


 静かに。


 集めている。


 ずっと、おかしかった。


 だが――


 何も、言わなかった。


 言えなかった。



 祈りが、終わる。


 顔を上げる。


 誰も、何も言わない。


 ただ、静かに、


 解かれていく。


 ミヅキは、歩き出す。


 英雄たちの間を、出る。



 そのまま。


 図書館へ。


 奥へと進む。


 足は、迷わない。


 そこに、ある。


 大賢者の杖。


 古びた、木。


 削れた痕。


 長い時間が、


 そこに、残っている。


 ミヅキは、見つめる。


 動かない。



 ――繰り返す。


 歴史は。


 あの時と、同じように。


 ……私も。


 大賢者のように。


 この国を、追われるのか。


 ……罰、か。


 わかっていた。


 ずっと。


 この国の、歪み。


 目を逸らしてきた。


 ……取り返しが、つかない。


 息を、吐く。


 静かに。


 目を、閉じる。


 ――神はいない。


 もう。


 私には。


 祈る相手が。


 いない。


 唇が、わずかに動く。


 ……ごめんなさい。


 今更。



 それでも。


 目を開ける。


 杖を見る。


 ――大賢者。


 どうか。


 この国を。


 人々を。


 お守りください。


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