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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第40話 預けた手紙

 草原を、進む。


 あの魔獣の背。


 揺れは大きいが、一定だ。



 風が抜ける。

 草が、波のように揺れる。


 遠くまで、視界が開けている。



 リオラは、前に身を乗り出す。


 手で、毛並みを撫でる。


「そういえば、名前がいるわよね」


 一拍。


「……バイソンでいいか」



 少し、首を傾ける。


「どう? バイソン」



 バイソンは、鼻を鳴らす。


 わずかに、歩調が弾む。



 リオラが、笑う。


「ほら、ちょっと喜んでる」




 そのまま、進む。



 草原が、変わる。

 丈が、低くなる。

 土が、見え始める。



 やがて、

 木が、増える。



 点在していたものが、

 連なり始める。



 影が、落ちる。


 森に、入る。


 光が、弱くなる。

 空の色が、沈んでいく。




 リオラが、周囲を見回す。


「だんだん、月の王国に近づいてるわね」


 視線を、奥へ向ける。


「少し暗くなってきてるけど……」


 一拍。


「行けるところまで、進みましょうか」



 レグルスは、答えない。


 ただ、前を見る。



 ――遠くに、気配。


 魔獣。


 だが――


 近づいてこない。



 敵意も、ない。



 視線が、わずかにリオラへ向く。


 ……やはり。


 あの魔力か。





 エクリシア王国。


 ミヅキの書斎。



 紙の上を、筆が滑る。


 迷いはない。


 文字が、連なっていく。



 ――大神官は、私を怪しんでいる。



 筆は、止まらない。


 それは、確実だ。



 ――いつ、どうなるか。


 わからない。



 筆先が、わずかに沈む。


 墨が、滲む。



 筆を、置く。



 紙の上に残る、墨。


 乾ききらない。



 ――この国に、


 信頼できる者は、もう多くない。


 視線が、わずかに落ちる。


 ……メルク。


 息を、ひとつ。


 時間を、確かめる。



 ――この時間なら、


 西の門にいるはずだ。



 立ち上がる。



 外套を手に取る。


 フード付きの上着。



 羽織る。



 書斎を、出る。



 廊下。


 足音は、一定。



 視線だけが、周囲をなぞる。


 人影。


 気配。


 ――見られていないか。



 歩く。

 止まらない。



 城門を、抜ける。


 外へ。



 そこで、


 フードを、深く被る。



 顔が、影に沈む。


 西門へと、向かう。




 西の空が、沈みかける。



 王都の通りは、人影がまばらになっている。



 ミヅキは、歩く。



 視線が、揺れる。


 ――自分のことではない。


 この街にいる人々。


 ……もし、エクリシウスが。



 そこまで考えて、止める。



 息を、整える。



 ……レグルスが。



 情けないが、


 今は、それしかない。



 西門が、見える。



 その近くに、


 ひとり、立っている。



 ミヅキは、足を向ける。



「メルクさん」



 メルクリウスが、振り返る。


「誰だ……」



 ミヅキは、フードをわずかに持ち上げる。


 顔が、見える。



「……ミヅキ様」


 すぐに、姿勢を正す。


「失礼いたしました」


「このような場所まで……」


「どうなさったのですか」



 ミヅキは、懐から封を取り出す。


「これを」


 差し出す。


「もしもの時は、」


 一拍。


「リオラさんと、レグルスさんに」


「渡してください」



 メルクの目が、わずかに動く。



 ミヅキは、続ける。


「……二人は、戻ってきますので」


 沈黙。



 メルクリウスは、一度、ミヅキを見る。


 その目で、測る。


 そして。


「……承知しました」


 封を受け取る。


「必ず、お渡しいたします」



 ミヅキは、小さく頷く。


「ありがとう」


「頼みます」



 踵を返す。



 そのまま、歩く。



 西門を、離れる。




 ――もし。


 何かあれば。


 あの男は、気づくはずだ。


 魔力の、変化に。


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