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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第37話 変わるものと、変わらないもの

 黒が、崩れる。

 形が、保てない。


 ――まずい。


 早く、魔力を……。


 揺れる。

 崩れかける。


 意識が、かろうじて繋がる。


 あの魔力……。


 わずかに、形が歪む。


 アウレリアの――末裔か。


 黒が、揺れる。


 笑う。


 かすかに。


 歪んだ、笑みが浮かぶ。




 遺跡。


 石の残骸の間を、風が抜ける。



 リオラが、視線を遠くに向ける。

 消えた先の、空へ。


「魔王と呼ばれてたものを、私たちは神様って呼んでるの?」


 小さく、息を吐く。


「……なにがなんだか」


 肩をすくめる。


「まあ、いいわ」


 視線を戻す。


「今日はここで野宿ね」



 火が、起こされる。


 枝が、はぜる。


 空の色が、落ちていく。



 焚き火を挟んで、二人は座る。



「しかし、こんなところにも遺跡があったのね」


 周囲を見渡す。


「今の王国に残っている書物には、記述がないと思うわ」


「聞いたこともないもの」



 レグルスは、火を見たまま。


「俺も聞いたことはない」


「エクリシウスも知らなかった」


 そのまま、続ける。


「やつが現れるより前に、滅んでいたんだろうな」



 火が、揺れる。



 ――まだ、残っている。


 この土地の魔力が、

 わずかに、流れている。


 リオラへ。



 ……やはり。


 アウレリアの血か。



 リオラは、気づかない。



 空を見上げる。


「それにしても、星が綺麗ね」


「標高が高いからかしら」


 少し、目を細める。


「星空って、昔も今も変わらないのね」


 静かに、息を吐く。


「……不思議」




 エクリシア王国。



 廊下を、歩く。


 新たに選ばれた、大神官。



 足は止まらない。


 だが、思考は揺れている。



 ――先代の大神官は、


 一族の悲願を、果たしたはずだった。



 だが――


 皇女の証言。

 あれが真実であれば。


 ……エクリシウスに、呑まれた。


 わずかに、息が乱れる。

 ――これから、どうする。



 歩みは、そのまま。


 奥へ。



 一族が代々管理してきた、書斎。



 扉を開ける。


 中へ入る。



 視線は、迷わない。


 突き当たりの、本棚。



 並び。


 違和感。


 わずかに、止まる。



 ……隙間。



 揃っているはずの場所に、


 抜けがある。



 手を伸ばす。


 本を、抜く。


 表紙を、確かめる。



 違う。


 また、違う。


 ――無い。



 指の動きが、速くなる。



 無い。


 ……無い。


 先代の、大神官のものが。



 手が、止まる。



 静かに、息を吸う。



 ――誰だ。



 思考が、浮かぶ。


 ひとりの名が、浮かぶ。


 ……ミヅキ。



 皇女。


 可能性は、高い。



 だが――

 確証が、ない。



 視線が、落ちる。



 ……王家の者だ。


 お飾りとはいえ、

 根拠もなく、追及はできない。


 わずかに、目を細める。



 ――どうする。


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