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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第二章 追放と魔力の行方

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第35話 もう一つの遺跡、そして

 草原。


 レグルスとリオラは、すでに歩いている。


 東の空が、わずかに明るい。

 夜は、まだ残っている。


 言葉は少なく、足音だけが続く。



 やがて、陽が顔を出す。

 光が広がり、影が短くなる。



 歩く。

 足を止めない。




 魔獣が出る。


 低い唸りとともに、草が揺れる。


 群れ。



 レグルスは足を止めない。


 剣を抜き、魔力を流す。


 一閃。


 それで終わる。



 血は少ない。


 魔力で焼き切れている。



 さらに進む。


 魔獣が、また現れる。


 今度は、二体。


 距離が、近い。


 レグルスは間合いを詰める。


 振る。


 それで、終わる。


 だが――


 次も、来る。



 リオラが視線を巡らせる。


「……魔獣が増えてきたわね」


 レグルスは、周囲を見たまま。


「ああ」



 足は止めない。



 草原の色が、少しずつ薄くなる。


 土が見え始める。



 陽は、頭上を越えている。


 影が、わずかに伸び始める。



 やがて、石が現れる。


 直線に並び、区切られている。


 崩れているが、形は残っている。



 壁はない。


 柱もない。



 それでも――


 区画だけが残っている。



 かつて、ここに何かがあったとわかる。



 リオラが足を止める。


「……ここね」


 北の遺構だ。



 その先に、山が見える。


 なだらかな斜面が、奥へと続いている。


 遺構は、その麓に広がっている。



 レグルスは、遺構を見渡す。


 石の区画。


 崩れた跡。


 形だけが、残っている。



 ――前に来たのは、千年前。


 さすがに、風化しているか。



 目を細める。


 空気を、探る。



 魔力が、混ざっている。


 残滓。


 薄く、広い。


 だが――

 エクリシウスのものが、掴めない。



 視線を、巡らせる。



 エクリシウスは、魔力を欲しているはずだ。


 しかし、この土地に残るのは、ごく僅か。



 ――もう、奪われている。

 千年以上前に。



 なら、どこだ。


 視線が、止まる。


 ――ここには、ない。


 微かに、流れている。


 魔力。


 上へ。


 レグルスは、山を見上げる。


「おそらく、山の上だ」


 レグルスは、短く言う。


「急ぐぞ」


 リオラが、顔を上げる。


「ちょっと待って、今からじゃ山の途中で暗くなっちゃうわよ」


 次の瞬間。


 レグルスは、リオラを肩に担いだ。


「えっ、ちょっと――」


 言葉は、最後まで続かない。


 地面が、遠ざかる。


 視界が、揺れる。


 レグルスは、そのまま山道へ踏み込む。


 足に、魔力を込める。


 一歩。


 踏み出すたびに、地面が沈む。


 跳ねる。


 駆ける。


 斜面を、切り裂くように。


 木々の間を、一直線に抜ける。


 枝が、弾ける。


 石が、砕ける。


 止まらない。


 速度は、落ちない。



 やがて。


 視界が、開ける。



 中腹。


 ひらけた場所。



 石の柱。


 崩れた壁。


 形を失いかけた建造物。



 遺跡だ。



 レグルスは、足を止める。


 リオラを、下ろす。



「……こんなところにも、遺跡が」


 リオラは息を整えながら、周囲を見渡す。


「……すごい力ね」


「……あっという間だったわ」



 レグルスは、答えない。



 ――魔力が、濃い。


 視線が、奥へ向く。



 遺跡の中。


 何かが、ある。


 強まっている。



 足を、進める。


 それは、見える。



 影。


 黒の塊。


 ――エクリシウス。



 低く、声が落ちる。


「……もう来たのか、レグルス」


 一拍。


「まだ……」


 わずかに、揺れる。


「魔力が、足りない」


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