第30話 北への道
草原。
王国を、背にする。
風が、抜ける。
二人は、歩く。
「しかし……」
リオラが、足を止める。
「北の遺構まで、馬じゃないと結構かかるわね」
一拍。
「悪いけど……」
背のリュックを外す。
差し出す。
レグルスは、何も言わず受け取る。
背負う。
「ごめんね」
「助かるわ」
レグルスは、振り返る。
遠く。
王国が、小さく見える。
王国の中は――
言葉が、途切れる。
わずかに、目を細める。
「……魔力が、混ざりすぎていた」
「今は、澄んでいる」
間。
「……覆っていたのは」
「先生の、魔力か」
前を行くリオラが、振り返る。
「どうしたの?」
「……いや」
レグルスは、視線を戻す。
そのまま、歩き出す。
書斎。
古文書が、広がっている。
ミヅキは、頁をめくる。
北。
遺構と呼ばれている場所。
正式な名は、残っていない。
かつて、王国があったとされる。
だが――滅びている。
記録は、断片的だ。
年代も、曖昧。
だが、
ひとつだけ、重なる。
神が、この世界に現れたとされる時期。
指が、止まる。
「……同じ」
一拍。
視線が、文字をなぞる。
太陽の王国。
滅亡。
アンタレス。
神話では、そう記されている。
一拍。
だが――
ミヅキは、目を閉じる。
神の間。
あの黒。
「……違う」
一拍。
「……太陽の王国を滅ぼしたのは」
わずかに、息を吸う。
「エクリシウス……か」
言葉が、落ちる。
静かに、息を吐く。
推測が、過ぎる。
だが――
栄えた場所。
人が、集まる場所。
王国。
そこに、何かがあるのか。
頁が、揺れる。
思考が、巡る。
黒が、揺らぐ。
――足りない。
魔力が。
まだ、足りない。
満ちない。
届かない。
やつを、超えるには。
黒が、歪む。
探る。
残滓を。
――ない。
ここには、残っていない。
一拍。
だが――
引かれる。
細い。
だが、途切れていない。
向こう。
魔力が、ある。
風が、抜ける。
草原。
二人は、歩いている。
王国は、遠い。
すでに、輪郭も薄い。
北の遺構は、まだ遠い。




