第29話 王国を出て、北へ
部屋。
レグルスは、一人で立っている。
扉が叩かれる。
メルクが入る。
すぐには、言葉が出ない。
「……決まりました」
一拍。
「あなたの追放が」
レグルスは、動かない。
「そうか」
それだけ。
間は、ない。
メルクは、息を整える。
「王国の外まで、お送りいたします」
レグルスは、頷く。
廊下。
二人は、歩く。
足音だけが、続く。
言葉は、ない。
城の外。
空気が、変わる。
石畳。
開けた道。
そのまま、門へ向かう。
背後から、足音。
速い。
「ちょっと待ってよー!」
二人の足が、止まる。
リオラが、追いつく。
背には、大きなリュック。
少しだけ、息が上がっている。
「置いていかないでよ」
メルクが、振り返る。
「アウローラ様」
一拍。
「本当に、王国を出られるのですか」
「皇位継承権は剥奪されましたが、城に残ることはできます」
リオラは、息を整える。
すぐに、顔を上げる。
「剥奪された段階で、私に居場所はないのよ」
迷いは、ない。
「ちょうどよかったわ」
「城の外の方が、私には合ってるから」
メルクは、何も言わない。
レグルスは、足を止めない。
「……北だ」
メルクは、頷く。
そのまま、方向を変える。
北の門へ。
「北って、たしか遺跡があったよね」
「そこに向かうの?」
「……ああ」
リオラは、少しだけ笑う。
「ふーん……」
一拍。
「まあ、いいか」
北の門。
その手前。
ミヅキが、立っている。
「やはり、北へ……」
「魔力が、流れていきました」
一拍。
「北の遺構」
「……そこに、何かがあるはずです」
「ただ――」
視線が、わずかに落ちる。
「それだけではない気もします」
「……調べておきます」
レグルスは、頷く。
ミヅキは、リオラを見る。
「……申し訳ありません」
「いいのよ」
「大したことじゃないし」
「私は追放されたわけじゃないから」
「また、会いにくるよ」
ミヅキは、何も言わない。
ただ、見ている。
レグルスは、視線だけで応じる。
北の門。
メルクが、足を止める。
剣を取り出し、差し出す。
「お預かりしておりました」
レグルスは、受け取る。
重さが、戻る。
メルクは、リオラへ向き直る。
深く頭を下げる。
「……これからも、お慕いしております」
リオラは、少しだけ笑う。
「ありがと」
門の外へ、光が続いている。
レグルスが、歩き出す。
リオラが、その後ろにつく。
門を越える。
振り返らない。
背後で、門が閉じる。
重い音が、響いた。
第一章「千年の果てに」までお読みいただき、ありがとうございます。
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