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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第一章 千年の果てに

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第26話 祈りの先へ

 祈りは、続いている。


 リオラが軽く振り向く。


「今日、当番なの」


 一拍。


「これから王都の人たちが来るから」


「案内、しないといけなくてさ」


 肩をすくめる。


「だから、先に帰ってて」


「……ああ」


 レグルスは頷く。


 ミヅキとともに場を離れる。


 英雄たちの間を出ると、足音が石に響く。


 しばらく、無言のまま歩く。


 やがて、

 レグルスが口を開く。


「……お前も、感じているだろ」


 一拍。


「妙な、魔力の流れを」


 ミヅキは、前を向いたまま。


「……どういう意味ですか」


 一拍。


 レグルスはミヅキを見て、視線を落とす。


「……そうか」


「お前も、違和感はあると」


 足が止まる。


「何を言っているのですか」


 語気が強くなる。


 一拍。


「……それ以上は、詮索しないでください」


 再び歩き出す。


 言葉はない。


 中央塔を出る。


 外の空気。


 そこで足を止め、二人は別れる。


 背を向け、

 それぞれ歩き出す。




 レグルスの足が、わずかに止まる。


 振り返る。


 ミヅキの背を、

 一瞬だけ見ている。


 ――何も言わない。


 前を向き、そのまま歩き出す。



 そのあとで、

 ミヅキが足を止める。


 振り返る。


 遠ざかるレグルスの背を、一瞬だけ見ている。


 何も言わない。


 再び、前を向く。





 ミヅキは書斎に戻る。


 本を開き、視線を落とす。


 だが、文字は流れていくだけで、頭に残らない。


 胸の奥に、引っかかりがある。


 違和感。


 ずっとあった。


 魔力の流れ。


 上へと向かう、見えない流れ。


 自分の魔力も、わずかに引かれている感覚。


 気のせいではない。


 だが、それを言葉にできなかった。


 それを、あの男は、あっさりと口にした。


 思考がまとまらない。


 指先が止まる。


 ミヅキは、静かに本を閉じた。


 



 レグルスは自室に戻る。


 椅子に腰を下ろしたまま、しばらく動かない。


 意識は、流れの先を追う。


 魔力。


 流れている。


 違和感は、消えない。


 時間が過ぎる。


 朝の祈りが終わり、一般の参拝が始まる。


 人が増え、祈りの気配が重なっていく。


 そして――昼を過ぎた頃。


 レグルスの意識が、はっきりと上を捉える。


 違う。


 さっきまでとは、明らかに違う。


 魔力が、集まりすぎている。


 異常だ。


 レグルスは立ち上がる。


 迷いはない。


「……神の間」


 そのまま部屋を出る。


 


 外階段の手前。


 ミヅキの背があった。


 足を止める。


 一瞬、見ている。


「……やはり気づいたか」


 距離を詰める。


「お前がいれば、神の間へは入れるか」


 ミヅキが振り向き、

 言葉を返そうとする――その前に。


 身体が浮く。


 レグルスの腕が、そのまま担ぎ上げる。


 止まらない。


 そのまま、

 階段へ向かって走り出す。


「ちょっと――」


 揺れる視界の中で、声だけが後ろに流れる。


「私の権限でも、神の間には入れません」


 一拍。


 だが――


 目だけが、


 上を見る。


「ちょっと、聞いてください」


 レグルスは答えない。


 外階段を駆け上がる。


 そのまま中央塔へと入っていく。



 人の間を縫うように進み、英雄たちの間へ入る。



 視線は、まっすぐ中央へ。


 祭壇。


 ――いない。


 大神官の姿がない。



「ちょっと、なに?」


 リオラの声。



 レグルスは、間を置かずに言う。


「大神官はどこだ」



「上……神の間だけど」



 ――やはり。



 レグルスはミヅキを担いだまま、方向を変える。


 そのまま、走る。



 進行方向にいたメルクへ。


「メルク、剣を」



「え――」



 反応より先に、


 差し出された剣を掴み取る。



 止まらない。



 神の間へ続く階段へ入る。


 周囲がざわつく。


 視線が集まる。



 構わない。


 そのまま駆け上がる。




 神の間。


 空間が開ける。



 中央。


 一人。


 大神官。



 その胸に――


 黒いもの。



 凝縮された魔力。


 押し込まれている。



 空間が、


 歪む。



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