第124話 反転の鼓動
地下の部屋。
その中央には。
一つの巨大な魔光石が鎮座していた。
静かな輝き。
部屋全体を淡く照らしている。
ミヅキは、
静かに目を細めた。
――やはり……。
その視線は、
巨大な魔光石へ向けられる。
――月の王国の魔光石は、
ここへ持ち出されていた。
そして。
ゆっくりと周囲を見渡す。
静かな空間。
部屋の奥には。
二つの石の寝台だけが残されていた。
墓標はない。
名前もない。
ただ。
静かに置かれているだけだった。
ミヅキは小さく息を吐く。
――墓ですらない……。
胸が締めつけられる。
――我々王家の者は……。
わずかな沈黙。
――このエクリシア王国では。
――魔光石の原料でしか、
なかったわけか……。
その時だった。
「ミヅキ!」
リオラの声が響く。
「早く魔力を!」
ミヅキは我に返る。
そして。
静かに頷いた。
「そうですね」
二人は巨大な魔光石へ歩み寄る。
ゆっくりと手をかざす。
そして。
魔力を流し込んだ。
淡い光。
巨大な魔光石が、
静かに輝き始める。
ミヅキは、
その光を見つめた。
――これで……。
静かな確信。
――反転の円環が完成する。
静寂。
その次の瞬間だった。
低い振動が響く。
大地が脈打つ。
魔力が蠢く。
巨大な魔光石から放たれた光が、
部屋全体へ広がっていく。
ミヅキの目が見開かれた。
――始まった……。
部屋全体が激しく震え始める。
天井から砂が落ちる。
石壁が軋む。
リオラが声を上げた。
「ミヅキ!」
「ここも危ないわ!」
「早く外へ!」
ミヅキは小さく頷く。
「はい!」
二人は踵を返す。
部屋を飛び出し。
地下へ続く階段を駆け上がっていった。
レグルスの胸を。
黒い影が貫いていた。
エクリシウスは、
静かに見下ろす。
「これで……」
冷たい声。
「終わりだ」
そう言うと。
黒い槍を引き抜く。
鮮血が舞う。
レグルスの身体は力を失い。
ゆっくりと膝をついた。
そして。
そのまま地へ倒れ込む。
静寂。
その瞬間だった。
低い振動が響く。
ドクン――。
まるで。
世界そのものが脈打ったかのような鼓動。
大地が揺れる。
空気が震える。
吹き荒れていた黒い魔力が、
一斉に蠢き始めた。
エクリシウスの身体が大きく揺らぐ。
黒い影が制御を失う。
「どうした……」
わずかな沈黙。
「これは……」
次の瞬間。
「ぐっ……!」
エクリシウスが苦悶の声を漏らした。
全身を覆う影が激しく波打つ。
「やめろ……!」
叫ぶ。
だが。
影は止まらない。
膨れ上がる。
軋む。
そして。
弾けた。
轟音。
黒い魔力が空へ噴き上がる。
天を覆っていた闇が裂ける。
大地を巡っていた膨大な魔力が。
一気に解き放たれていく。
世界中へ。
まるで。
世界から奪い集められた魔力が。
一斉に解き放たれるかのように。




