第123話 最後の魔光石
リオラとミヅキは、
崩れかけた城内を駆けていた。
崩れ落ちた壁。
瓦礫で塞がれた通路。
真っ直ぐには進めない。
何度も迂回しながら。
奥へ奥へと進んでいく。
「リオラさん」
ミヅキが前方を指差す。
「こっちです」
リオラは頷く。
二人は速度を落とさない。
やがて。
重厚な石造りの扉が姿を現した。
半ば崩れながらも。
そこだけは辛うじて原形を留めている。
ミヅキの目が細まる。
――神議の間……。
「ここです」
二人は顔を見合わせる。
そして。
重い扉へ手をかけた。
軋む音。
長い年月閉ざされていた扉が、
ゆっくりと開いていく。
中へ足を踏み入れる。
広い空間だった。
中央には円卓。
その奥には。
石造りの祭壇が静かに佇んでいた。
ミヅキは周囲を見渡す。
「とにかく、
地下への入口を探しましょう」
リオラは小さく頷く。
「分かったわ」
二人は手分けして部屋を調べ始めた。
ミヅキは祭壇へ歩み寄る。
そっと手を置く。
そして。
静かに魔力を流し込んだ。
淡い光。
だが。
それだけだった。
何も起こらない。
振動も。
魔光石の反応もない。
ミヅキは小さく息を吐く。
――ここではないか……。
その時だった。
「ミヅキ!」
リオラの声が響く。
「こっちに来て!」
ミヅキは振り返る。
リオラは、
円卓の下を覗き込んでいた。
急いで駆け寄る。
二人で身を屈める。
円卓の下。
床の中央には。
一つの魔光石が埋め込まれていた。
ミヅキの目が細まる。
――そこだったか……。
二人は円卓の下へ潜り込む。
狭い空間を進み。
床へ埋め込まれた魔光石の前で足を止めた。
ミヅキは、
そっと手を伸ばす。
指先が魔光石へ触れる。
静かな祈り。
――お願い……。
魔力を流し込む。
その瞬間だった。
低い振動が響く。
床全体が揺れ始める。
石が擦れる音。
円卓の下の床が、
ゆっくりと開いていく。
そして。
その先に。
暗い空間が姿を現す。
地下へと続く階段だった。
二人は地下へ続く階段へ足を踏み入れた。
石造りの階段。
壁へ埋め込まれた魔光石が、
淡い光で行く先を照らしている。
静かな地下空間。
二人の足音だけが響く。
ミヅキは前を見据えたまま口を開く。
「おそらく……」
静かな声。
「この階段は、
聖地の真下へ続いています」
リオラは黙って耳を傾ける。
ミヅキは続けた。
「そこに……」
わずかな沈黙。
「月の王国の魔光石があるはずです」
リオラは小さく頷いた。
二人は歩みを止めない。
一段。
また一段。
長い階段は、
どこまでも続いているようだった。
やがて。
階段の終わりが見える。
その先には。
巨大な石の扉。
二人は顔を見合わせた。
そして。
同時に力を込める。
重い音が響く。
ゆっくりと扉が開いていく。
その瞬間。
ミヅキの目が見開かれた。
――やはり……。
部屋の中央。
そこには。
一つの巨大な魔光石が鎮座していた。
その大きさは。
かつてアウレリア王墓で見た魔光石を、
遥かに上回っていた。




