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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第六章 光射す世界へ

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第122話 届かぬ約束

 瓦礫の山へ叩きつけられたレグルスは。


 ゆっくりと立ち上がった。


 全身が軋む。


 折れた剣。


 傷だらけの身体。


 それでも。


 その瞳だけは死んでいない。


 だが。


 次の瞬間だった。


 轟音。


 土煙が吹き飛ぶ。


 エクリシウスが動いた。


 一瞬で間合いを詰める。


 黒い拳が振るわれた。


 レグルスは反応する。


 だが。


 間に合わない。


 一撃。


 鈍い衝撃。


 身体が揺れる。


 二撃。


 三撃。


 容赦なく叩き込まれる。


 レグルスは吹き飛ばされる。


 地面を転がる。


 瓦礫が砕ける。


 だが。


 エクリシウスは止まらない。


「これで――」


 黒い魔力が膨れ上がる。


「もう終わりだ!」


 その腕へ。


 膨大な魔力が集まっていく。


 そして。


 振り抜かれた。


 轟音。


 強烈な一撃がレグルスを襲う。


 防御する暇もない。


 直撃。


 レグルスの身体は宙へ舞った。


 瓦礫を砕く。


 崩れた城壁を破壊する。


 そして。


 再び瓦礫の山へ叩きつけられた。


 土煙が舞い上がる。


 視界を覆うほどの砂塵。


 だが。


 その中に。


 人影があった。


 ゆっくりと。


 立ち上がろうとしている。


 エクリシウスの瞳が細まる。


「しつこい……」


 苛立った声。


「もうどうやっても」


 黒い魔力が揺らぐ。


「私には勝てないぞ」


 わずかな沈黙。


「なぜ……」


 睨みつける。


「立ち上がる」


 土煙の中から。


 レグルスが姿を現した。


 一歩。


 また一歩。


 足取りは重い。


 今にも倒れそうだった。


 それでも。


 前へ進む。


 ――なぜ……?


 脳裏を過ぎる言葉。


 かつて聞いた言葉。


 ――アウレリアの陽は消えない。


 ――セレナリスの輝きを未来へ。


 そして。


 共に戦った仲間たち。


 皇子。


 団長。


 先生。


 リオラ。


 ミヅキ。


 その顔が浮かぶ。


 最後に。


 母の姿が浮かんだ。


 レグルスは顔を上げる。


 真っ直ぐに。


 エクリシウスを見据えた。


「これは……」


 掠れた声。


「約束なんだ」


 一歩。


 前へ出る。


「ここで終わるわけにはいかない」


 そして。


「何度でも立ち上がる」


 折れた剣を握る。


「お前を倒すまで……」


 静寂。


 エクリシウスはレグルスを睨みつけた。


「思い上がるなよ……」


 低い声。


「お前はここで死ぬんだよ!」


 次の瞬間。


 その腕が変形する。


 黒い魔力が収束する。


 鋭い刃。


 いや。


 巨大な槍だった。


 轟音。


 エクリシウスが地を砕く。


 一瞬で間合いを詰めた。


 レグルスの瞳が見開かれる。


 だが。


 避けられない。


 黒い槍が突き出される。


 そして。


 レグルスの胸を貫いた。




 



 リオラとミヅキは、

 城跡の内部へ足を踏み入れていた。


 崩れた天井。


 ひび割れた壁。


 瓦礫が散乱する通路。


 かつての面影はほとんど残っていない。


 リオラは周囲を見渡した。


「行ける方へ行くしかないわね」


 そう言うと。


 迷うことなく駆け出す。


 ミヅキも後を追った。


 二人の足音が響く。


 崩れた城内。


 辛うじて残った通路を進む。


 ミヅキは周囲を見渡していた。


 崩壊し過ぎていて、

 最初は気づかなかった。


 だが。


 見覚えのある壁。


 柱の配置。


 失われた記憶が繋がっていく。


 ――ここは……。


 静かな確信。


 ――セレナリス側の城……。


 そして。


 ミヅキの脳裏に、

 一つの場所が浮かぶ。


 ――もし何かあるとすれば……。


 思い出す。


 ただ一度だけ足を踏み入れた場所。


 大神官を選出する場所。


 ――神議の間……。


 そこしかない。


 ミヅキの瞳が細まる。


「リオラさん」


 走りながら声を上げる。


「向かう場所が分かりました」


 リオラが振り返る。


「本当?」


 ミヅキは頷いた。


「おそらくですが……」


 静かな声。


「神議の間です」


 二人は速度を落とさない。


 崩れかけた城内を。


 ただ真っ直ぐに駆けていった。


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