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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第六章 光射す世界へ

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第114話 地下へ向かう前に

 神殿の跡。


 ミヅキは、

 静かに周囲を見渡していた。


 祭壇。


 崩れた柱。


 割れた床。


 その下から感じる魔力。


 静かな確信。


 ――やはり……。


 祭壇へ近づく。


 そして。


 そっと手を置いた。


 月の魔力を流し込む。


 その瞬間だった。


 祭壇へ埋め込まれた小さな魔光石が、

 わずかに光を放つ。


 淡い輝き。


 流し込んだ魔力へ応えるように。


 祭壇の奥から、

 かすかな振動が伝わってきた。


 ミヅキの目が細まる。


 ――反応した……。


 だが。


 それ以上は動かない。


 祭壇を見る。


 静かな沈黙。


 ――やはり……。


 ――壊れているか……。


 わずかに考える。


 そして。


 小さく息を吐いた。


 ――一度戻って、

 レグルスさんに来てもらいましょう。


 ミヅキは、

 もう一度神殿の跡を見渡す。


 祭壇。


 床。


 地下へ続くはずの場所。


 その全てを目に焼き付けるように。


 そして。


 静かにその場を後にした。


 ミヅキが中心部へ戻ると。


 そこには、

 多くの人々が集まっていた。


 作業を終えた者たち。


 談笑する者たち。


 少しずつ、

 夕暮れの空気が広がり始めている。


 その時だった。


 リオラが、

 ミヅキの姿に気づく。


「また……」


 呆れたように肩を落とした。


「一人でどこに行ってたのよ」


 ミヅキは、

 少しだけ視線を逸らす。


「神殿の跡を見てきていたんです」


 そのまま。


 レグルスの方へ歩み寄る。


「レグルスさん」


 レグルスが振り向く。


 ミヅキは静かに続けた。


「神殿の跡ですが……」


 わずかな間。


「何かありそうです」


 レグルスの目が細まる。


「見つけたのか」


「地下に続く場所があるかもしれません」


 ミヅキがそう答えた時だった。


「ちょっと!」


 リオラが割って入る。


 二人はそちらを見る。


 リオラは腕を組みながら。


 少し強い口調で言った。


「今日はもう休憩!」


 ミヅキが目を瞬かせる。


「ですが……」


「駄目!」


 即答だった。


「帰ってきたばかりなんだから」


 そして。


 少しだけ笑う。


「調べるのは、

 明日の朝にしなさい」


 ミヅキは、

 しばらくリオラを見つめていた。


 やがて。


 小さく頷く。


「そうですね……」


 わずかに息を吐く。


「では――」


 静かな声。


「明日の朝に」


 リオラは満足そうに頷いた。


 レグルスもまた。


 静かに二人のやり取りを見ていた。




 夜。


 遺跡には、

 静かな時間が流れていた。


 焚き火の炎が揺れる。


 レグルス。


 リオラ。


 ミヅキ。


 三人は火を囲むように座っていた。


 しばらくの沈黙。


 やがて。


 ミヅキが静かに口を開く。


「エクリシウスへの……」


 揺れる炎を見つめる。


「魔力の流れは止まりました……」


 わずかな間。


「ただ……」


 その瞳が細まる。


「まだ、

 何かあるはずです……」


 リオラは、

 その言葉を聞きながら頷く。


「その何かが……」


 焚き火を見る。


「神殿のところへ行けば、

 わかるかもしれないってことね」


 ミヅキは静かに頷いた。


「はい」


 そして。


 遠くに見える遺跡へ視線を向ける。


「この月の王国の……」


 静かな声。


「セレナリス王家が残したものが、

 あるはずです」


 炎が揺れる。


 三人は、

 しばらく無言のまま火を見つめていた。


 やがて。


 リオラが勢いよく立ち上がる。


「よし!」


 両手を腰に当てる。


「明日に備えて、

 休みましょうか!」


 明るい声。


 レグルスとミヅキは、

 静かに頷いた。


 焚き火の炎が揺れる。


 夜風が吹く。


 静かな夜は、

 ゆっくりと更けていくのだった。


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