第111話 王家の魔力
満月が。
静かな湖へ映り込んでいた。
揺れる月光。
焚き火の炎が、
岸辺を淡く照らしている。
三人は、
火を囲むように座っていた。
しばらくの沈黙。
やがて。
リオラが、
静かに口を開く。
「あの少年は……」
焚き火を見つめる。
「どうなったの……?」
炎が揺れる。
ミヅキは、
その火を見つめたまま答えた。
「おそらく……」
静かな声。
「すでに亡くなっていたのでしょう」
リオラの目が伏せられる。
ミヅキは続けた。
「ですが、
魔力が肉体を守っていた」
湖へ視線を向ける。
「そして、
湖の魔力と共鳴し……」
わずかな沈黙。
「光となった」
静かな夜風が吹く。
「おそらく、
あの少年も……」
ミヅキの瞳が揺れる。
「この地の王家に近い存在だったのではないでしょうか……」
リオラは、
静かに焚き火を見つめた。
「そっか……」
小さな声。
再び沈黙が訪れる。
やがて。
ミヅキが口を開いた。
「これは、
あくまで仮説ですが……」
その視線が、
焚き火の向こうへ向けられる。
「おそらくエクリシウスは、
すべての魔力を取り込めるわけではない……」
レグルスが、
静かに顔を上げる。
「少年からも、
わずかにエクリシウスの魔力を感じました」
ミヅキは、
あの少年を思い出す。
「一度は呑み込まれている……」
そして。
「ですが、
完全には取り込まれていなかった」
静かな確信。
「王家のような強い魔力は、
呑み込みきれないのかもしれません」
その視線が、
レグルスへ向く。
「レグルスさんと同じように」
レグルスは、
静かにその言葉を聞いていた。
そして。
ミヅキの視線は、
今度はリオラへ向けられる。
「以前から、
不思議に思っていました」
静かな声。
「なぜ、
私やリオラさんは……」
わずかな間。
「エクリシウスに呑まれなかったのか」
焚き火の炎が揺れる。
「それは――」
ミヅキの瞳が細まる。
「直接、
呑むことができないから……」
リオラは、
静かにミヅキの話を聞いていた。
そして。
小さく息を吐く。
「それが……」
揺れる炎を見つめる。
「エクリシウスを倒す、
手掛かりになればいいんだけど……」
ミヅキは、
静かに頷いた。
「ええ」
湖へ視線を向ける。
「あの少年の魔力も……」
わずかな沈黙。
「私たちに流れてきました」
静かな声。
「彼の思いも」
そして。
「この地に残された思いも」
焚き火の炎が揺れる。
「無駄にはしない……」
リオラは、
その言葉に頷いた。
レグルスもまた。
静かに頷く。
誰も、
それ以上は語らなかった。
ただ。
炎だけが揺れている。
夜風が吹く。
満月が湖を照らす。
静かな夜は。
少しずつ、
深まっていった。




