第107話 侵食する声
レグルスと影の戦いは、
続いていた。
激しい衝突音。
広場へ、
魔力が吹き荒れる。
レグルスは、
一度大きく後方へ跳んだ。
距離を取る。
だが。
着地と同時に、
再び地面を蹴った。
一気に間合いを詰める。
その瞬間。
影もまた、
全く同じ動きで踏み込んだ。
黒い剣。
レグルスの剣。
二つが激しくぶつかる。
鍔迫り合い。
レグルスは、
目の前の影を見据える。
揺らぐ輪郭。
黒い瞳。
そして。
脳裏へ、
ミヅキの言葉が浮かぶ。
――あなたと、
エクリシウスは……
剣が軋む。
――似ている……。
魔力がぶつかり合う。
――対照的で――
影の輪郭が揺らぐ。
――それでいて、
相似的……。
レグルスは、
再び大きく後方へ跳んだ。
距離を取る。
そのまま。
剣を振るう。
放たれた斬撃が、
一直線に影へ走った。
だが。
影は、
横へ跳んでそれを躱す。
黒い残像。
そして。
着地と同時に、
今度は影が剣を振るった。
漆黒の斬撃。
レグルスへ向かって放たれる。
レグルスも、
横へ跳んでそれを回避した。
次の瞬間。
その勢いのまま、
一気に踏み込む。
再び間合いを詰めた。
鋭い斬撃。
影へ斬りかかる。
だが。
影は、
それを正面から受け止めた。
激しい衝突音。
再び鍔迫り合いになる。
魔力がぶつかり合う。
空気が震えた。
レグルスの思考が巡る。
――アウレリアと、
セレナリス……。
剣が軋む。
――太陽の王家と、
月の王家……。
影を見る。
――二つの大きな魔力。
そして。
――様々な魔力が混ざり合って、
生まれたのが……。
レグルスの目が細まる。
――俺と、
エクリシウス……。
影の瞳が揺らぐ。
――俺の中にも、
エクリシウスの魔力がある。
剣を押し込む。
――エクリシウスにも……。
静かな確信。
――俺の魔力が……。
『千年もの間――』
レグルスの目が、
わずかに見開かれる。
『封印された』
声は聞こえない。
だが。
確かに誰かが、
語りかけてくるようだった。
レグルスは、
影と剣を交えながら目を細める。
――影か……。
黒い輪郭。
揺らぐ姿。
だが。
レグルスは、
再びそこへ自分自身を重ねていた。
――俺自身なのか……。
剣を振るう。
激しい衝突音。
だが。
影は消えない。
『どうして戦うのか』
影が揺らぐ。
『もういいだろう』
レグルスの瞳が揺れる。
『悪魔と……』
黒い魔力。
『そう呼んでいた者たちのために、
戦うのは』
レグルスは、
さらに剣を振るった。
激しい斬撃。
だが。
影は崩れない。
『もう――』
静かな声。
『かつての仲間もいない』
剣がぶつかる。
『どうして戦うんだ』




