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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第五章 再生の灯火

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第103話 託された思い

 遺跡の入口が見えてくる。


 その先。


 大きな影があった。


 ドラゴン。


 静かにその場へ伏せていた巨大な竜が。


 三人の姿へ気づく。


 リオラが、

 ぱっと表情を明るくした。


「おーい!」


 大きく手を振る。


 ドラゴンは、

 その声へ反応した。


 ゆっくりと頭を持ち上げる。


 そして。


 何度か上下へ動かした。


 まるで、

 返事をしているようだった。


 リオラは、

 そのまま駆け寄っていく。


「お待たせ!」


 ドラゴンの側まで辿り着く。


 そして。


 振り返った。


 レグルスとミヅキを見る。


「ここで、

 休んでいきましょうか」


 空を見上げる。


 まだ明るい。


 だが。


 日は少しずつ傾き始めていた。


 レグルスとミヅキは、

 静かに頷く。


 少しの休息。


 三人は、

 遺跡の入口付近で時間を過ごしていた。


 風が吹く。


 静かな遺跡。


 ドラゴンも、

 その場で静かに伏せている。


 日は、

 少しずつ傾いていた。


 やがて。


 ミヅキが、

 静かに立ち上がる。


「少し――」


 遺跡の方を見る。


「遺跡を見て回ろうかと思います」


 その言葉に。


 リオラも立ち上がった。


「じゃあ、私も――」


 だが。


 ミヅキが、

 小さく首を振る。


「一人で大丈夫です」


 静かな声だった。


 リオラは、

 少し困ったような顔をする。


「大丈夫?」


 ミヅキは頷いた。


「ええ」


 そして。


 空を見る。


「暗くなる前には、

 戻ってきます」


 そう言うと。


 ミヅキは、

 そのまま遺跡へ向かって歩き出した。


 静かな足音。


 その背中を見送りながら。


 リオラが、

 小さく息を吐く。


「いつも、

 一人で行っちゃうのよね……」




 ミヅキは、

 一人で遺跡の中を歩いていた。


 静かな空間。


 崩れた石壁。


 倒れた柱。


 風だけが、

 遺跡の奥を通り抜けていく。


 ミヅキは、

 静かに周囲を見渡した。


 ――太陽の王国……。


 思考が沈む。


 ――アウレリアに残る歴史は。


 崩れた壁へ視線を向ける。


 ――戦いの歴史……。


 さらに歩く。


 砕けた柱。


 深く刻まれた傷跡。


 崩壊した建物。


 ――エクリシウスによって、

 滅ぼされた王国……。


 ミヅキは、

 ゆっくりと目を細めた。


 ――損傷が、

 月の王国の遺跡よりも激しい……。


 静かな沈黙。


 そして。


 胸の奥へ沈む感情。


 ――私たちの。


 ――王家の罪……。


 やがて。


 ミヅキの足が止まる。


 壁画だった。


 二つ並んだ巨大な壁画。


 片方には。


 剣士たちが、

 エクリシウスへ挑む姿。


 そしてもう片方には。


 レグルスたち勇者一行が、

 エクリシウスへ挑む姿が描かれていた。


 ミヅキは、

 二つの壁画を見上げる。


 静かな瞳。


 ――この壁画……。


 ゆっくりと、

 壁画へ近づいた。


 ――私たちが、

 “神への巡礼”を描いたものとして、

 記録していたもの……。


 壁画へ手を伸ばす。


 触れる寸前で止まった。


 ――魔力を感じる……。


 壁画から、微かな。

 

 暖かな魔力。


 ――人々の思いが。


 ――願いが。


 ――この壁画を守っている……。


 ミヅキは、

 静かに目を伏せる。


 ――それを。


 ――私たちは、

 踏み躙ってしまった……。


 その視線が。


 壁画へ描かれた、

 一人の人物へ向けられる。


 大賢者。


 そして。


 その隣に描かれた、

 レグルスへ。


 ミヅキの指先が。


 壁画へ触れる。


 その瞬間だった。


 わずかに。


 暖かな魔力が流れ込んでくる。


 ミヅキの目が、

 静かに見開かれた。


 ――これは……。


 太陽の魔力。


 微かだった。


 だが。


 確かに流れ込んでくる。


 ミヅキの脳裏に。


 祭壇へ刻まれていた言葉が浮かぶ。


『アウレリアの陽は消えない』


 静かな沈黙。


 ミヅキは、

 壁画を見つめる。


 描かれた剣士たち。


 大賢者。


 そして。


 レグルス。


 ――この思いを……。


 わずかに目を伏せる。


 ――無駄にはしない。


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