第101話 アウレリアの陽は消えない
荒廃した王都。
崩れた瓦礫。
燻り続ける煙。
その中で。
赤子を抱いた男が、
静かに立ち尽くしていた。
レグルスは、
その姿を見つめている。
動けない。
声も出ない。
ただ。
燃え尽きたアウレリアを、
見つめ続けていた。
やがて。
その光景が、
ゆっくりと暗闇へ沈んでいく。
何も見えない。
静かな闇。
その中で。
どこからか声が聞こえた。
「レグルス!」
遠い声。
「レグルス!!」
次の瞬間。
レグルスは、
はっと目を開く。
目の前にあったのは。
王家の墓の壁。
そこへ刻まれた文字。
『ソティス・アウレリア』
その名が、
静かに刻まれていた。
身体が揺れる。
誰かが、
必死に肩を掴んでいる。
レグルスは、
ゆっくりとそちらを向いた。
そこには。
リオラがいた。
不安そうな顔。
レグルスの身体を、
何度も揺さぶっている。
「よかったー……」
力が抜けたような声。
「心配したわよ」
リオラは、すぐに魔光石へ視線を向けた。
「魔光石も……」
レグルスも、 そちらを見る。
祭壇の上。
巨大な魔光石が、先ほどまでより強く輝いていた。
脈打つような光。
淡い輝きが、空間全体へ広がっている。
ミヅキは、既に魔光石の側へ近づいていた。
その光を見上げる。
「魔光石が……」
静かな声。
「レグルスさんの魔力と、共鳴しています」
わずかな沈黙。
「今なら――」
「魔力を刻めるはず……」
レグルスとリオラも、祭壇へ近づく。
ミヅキが、レグルスを見る。
「魔光石に、魔力を……」
レグルスは頷いた。
ゆっくりと、魔光石へ手を伸ばす。
そして。
その表面へ触れた。
魔力を流し込む。
次の瞬間。
魔光石の光が、一気に強まった。
眩い輝き。
空間が震える。
天井の裂け目から差し込んでいた、
細い太陽の光。
それが。
逆流するように、
魔光石へ吸い込まれていく。
淡い光が揺れる。
そして。
魔光石が、
さらに強く輝いた。
眩い光。
地下空間を満たしていく。
さらに。
魔光石から放たれた光が。
天井の裂け目へ向かって、
一気に駆け上がった。
まるで。
差し込んでいた太陽の光を、
押し返すかのように。
光が地下を貫く。
空気が震えた。
静かな振動。
魔力が広がっていく。
地下神殿全体へ。
そして。
王国全体へ、
レグルスの魔力が満ちていくようだった。
その時。
レグルスの目が、
祭壇へ向けられる。
巨大な魔光石。
その土台となる祭壇。
そこへ。
文字が刻まれていた。
風化しかけた古代文字。
だが。
今のレグルスには、
不思議とはっきり読めた。
『太陽の輝きは、
必ず闇を晴らす』
わずかな沈黙。
さらにその下。
『アウレリアの陽は消えない』
静かな光が、
祭壇を照らしていた。




