第32話:受け入れてもらう為に。
雪も降ってかなり寒い日が続いていますね( *¯ ꒳¯*)
――ホークが部屋の外に連れて行かれてから数刻経った頃だった。
コツコツという、硬質なものが地面を叩く音と共に1人の兵士――先ほどホークを連れていったナス顔の兵士が戻ってきた。
それに続くようにホークと、もう1人の人物が部屋に入ってくる。
高身長でがっちりとした体格を隠すように、鋼の装甲で身を包んだ男。
背中には長剣を携え、太く長い右腕には一冊の帳簿のようなものが抱えられていた。
男はその体に見合った硬い表情をルウたちにむけ、口を開いた。
「失礼する。私はガルデン・クラウス。この聖ゴーフレット正門の門衛隊長だ」
おお、なんかいかにも兵士の偉い人みたいな風貌だな。
「まず初めに、部下が失礼を働いたようだ。謝罪させてほしい」
そういって頭を下げる門衛隊長ガルデン・クラウス。その横ではホークがワタワタとしている。
「ソテー村についてはこちらで確認が取れた。…あらかたの概要は理解しているが、大変だったのだな」
その言葉にソテー村一行の顔に安堵の表情が浮かぶ。しかし、その次に発せられた言葉に再び安堵は打ち払われる。
「…しかし、難民を、大人数を一度に受け入れられる場所は…この国には少ない。先ほどホーク殿にも説明はしたのだが……」
門衛隊長が苦い顔をして語る。
どうやらこの国は現在、ペイザンヌ皇国との長期にわたる戦争によって資源が枯渇し、それでも貴族がわずかな資源を独占しているせいで貧富の差が拡大しているらしい。
戦争による財政難と社会的な貧困格差に加えて、それを見て何も思わない富裕層などの無関心が住民の反発を生み、国内の一部では暴力などが蔓延り安全性に懸念があるとのことだ。
うむ、リスクしかなくて草生える。
それだけ国内が荒れているなら、難民の支援なんて十分にできるはずもないね。俺が受け入れる側の立場ならケツ蹴り上げて追い出してるわ。
んー、ここはおとなしく別の国まで移動するか?
入国はできそうだし、食料品だけ調達して早々に発つのも悪くないと思う。旅のノウハウはあるし、体力的にも問題ないだろうからーー。
そんなことを考えていると、俺の頭の上後ろから声が響いた。
「…えっと、私よくわからないですけど……私たち、難民として受け入れてもらいたいわけじゃないんです」
アリのその言葉に、周囲がざわめく。
しかしそのざわめきは「余計なことを言うな」というような敵意あるざわめきではなく、ソテー村の面々からは「確かにその通りだ」と言うものが。門衛たちからは想定外といった雰囲気が感じられる。
「その…あの…」
しかしアリは自分が作った空気が思いの外、責任が重たいものであると気がつき、つい吃ってしまう。
それを補うように、1人の青年が矢継ぎ早に言葉を繋げた。
「――そう、僕たちは難民として、施しを受けるためにここにきたわけではありません。ただーー」
ホークは少し間を置いて、村人たちの方に歩み寄り、振り返って門衛たちを見据えた。
「――住み込みで働ける場所でも、簡単な仕事でも、何かできる機会が欲しいんです」
門衛たちは予想外の言葉に目を見張る。
それもそのはずで、昨今、魔物の被害によって住む場所をおわれ聖ゴーフレット王国に転がり込んでくる難民は少なくなかった。
そしてその難民のどれもが、施しを求めてやってくるものたちであり、門衛たちの中で『難民とは無償で衣食住の提供を求めてくるもの』と言う先入観が芽生えていたのだ。
だからこそ、その場にいた誰しもが『ただ助けられるだけ』の難民ではなく『自らの力で生きる意思がある』ソテー村の言葉に目を見開いたのだ。
ホークの後ろにいるソテー村の民から次々と声が上がった。
「あぁ。私は娘のためならどんなことだってやってみせる」
「あたしはね、こう見えて指先は器用なんだよ」
「わたし、おてつだいする!」
「迷惑な難民と見なさないでくだされ。畑仕事も、家畜の世話もできますぞ」
老若男女の必死な表情。
門衛たちは言葉を失う。
「…わかっていただけましたか? 僕たちは完全に手を差し伸べていただきたいとは思っていません。ただ、自分たちの生活を立て直すための足掛かりが欲しいだけなんです」
ホークはそういうと俺の方を見た……と思ったら、俺の後ろにいるアリに視線を送っていたらしい。
ホークはアリに「これで良かったんだよね?」といった視線を送ると、アリは小さく涙を浮かべて微笑みながらうなずいた。
「ふむ……」
そんな様子を見ながら門衛隊長ガルデン・クラウスはしばらく何かを考え込むと、深いため息をついた。
「…確かに、おまえ達のような者を腫物扱いしてこのまま追い返すのは、少し心苦しいな……しかし、この人数を受け入れられる場所がないと言うのも、事実」
村人たちの顔が再び曇る。
しかし、門衛隊長はさらに言葉を続けた。
「だが……そうだな。住宅街のはずれにある教会なら、なんとか受け入れてくれるやもしれんな」
「教会…ですか?」
ホークが疑問符を浮かべる。
「ああ。そこはかつて治癒院だった場所で、今は戦争孤児や貧困の悪化の果ての捨て子などが身を寄せる孤児院のような場所になっていてな。…かく言う私もそこの出身で、状況を説明すれば、受け入れてくれるかもしれぬ」
「…ぜひ、お願いしてもよろしいでしょうか」
「その前に、教会に紹介状を書くにあたって一つ私の悩み事を聞いてくれはしないか」
要求を叶えてやるから、こちらの要求も受け入れろと言う旨の言葉にホークは身構える。
しかし、緊張するホークをよそにどこか物悲しそうな表情でガルデン・クラウスは口にした。
「…祭司がおられる。高齢の。国が孤児を見て見ぬふりをする間、彼は資金がない中、自己犠牲の精神で子供達を養っておられる…。私の代よりもずっと前からそうだったらしいのだが、見ていられなくてな。……どうか、孤児院を助けてやってほしい。それが私からの要求だ」
ガルデン・クラウスはそういってホークに深々と頭を下げた。信じられないことであったが、ソテー村の面々であれば、その誠実さがあれば自分が投げ出してしまった孤児院を救える。そう思ってしまったのだ。
「僕たちの方こそーーよろしくお願いいたします」
ホークもガルデン・クラウスに頭を下げた。
それに続くようにソテー村の人々も『よろしくお願いします』といって頭を下げた。
俺も例に漏れずアリと共に頭を下げた。
その様子を見たガルデン・クラウスは微笑む。
そして、胸元の鎧の隙間から羽ペンを取り出しーー帳簿のようなものに挟まっていた一枚の羊皮紙に羽ペンを押し付ける。
「…これを持っていけ。祭司様にこれを渡せば話が通るはずだ」
ホークや村人達は互いに顔を見合わせると、ガルデン・クラウスの方に向き直った。
「ありがとうございます!」
ホークが言葉と共に深いお辞儀をすると、その後ろで村人達も次々に感謝の言葉を口にした。
「…礼には及ばん。ただし、どうか失望させないで欲しい。おまえ達がいった通り、自力で立ち直るつもりならそれ相応の覚悟を見せてもらうからな」
「はい。もちろんです」
ホークが力強くうなづく。
こうして祭司への紹介状を手にした俺たちはついに入国許可をもらうことができた。
――俺たちの前で門がゆっくりと開き、先程まで小さく見えていた聖ゴーフレット王国の街並みが出迎えてくれる。
門の向こうに降り注ぐ陽光を浴びんと、フードを深く被り込んだ少女は歩きだす。不思議な雰囲気を纏った少女はこんなことを考えるーー。
……ところで俺、今回ほとんど出番なくて草。
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・アイテム/【大きなうろこの化石】
〈説明〉
竜種の背中の鱗が長い歳月を経て化石となったもの。
竜ゆえの頑丈さは失われているものの、内包する魔力は衰えを知らない。
主に魔道具の素材として用いられる。
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ルウ「…ソーサラーのスキルツリーの解放に、竜種のアイテムをなんでもいいから25種類集めるみたいなのがあったんですけども、その時に比較的入手難易度の低いこのアイテムも条件に入っていたみたいで、拾った記憶がありますね」




