第31話:入国って難しい。
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side:ルウ・ブラン
さーて、俺は今ついにあの星ゴーフレット王国にいる。
ゲーム内では信心深い大国だと表記があったその国の外観はまさに圧巻!
存在感がエグい石造りの巨大な城壁、その分厚い城壁にぽっかりと開いたこれまた立派な石造の門!
その先に広がる白を基調とした、繁栄と豊かさと信仰の純白を感じさせる街並み!
いやっほーい!いつの時代も新天地はテンションが上がるねい!
こんなに楽しい気持ち初めて!だからさ、クソ門番、さっさと俺たちを通せよおおおおお!!
ーー俺たち一行が牛車を引いて門を通過しようとした時。
「ーー止まれ!」
そんな甲高い声と共に、鉄鎧に身を包んだ門番たちが俺たちの前に立ち塞がったのだった。
そして俺たちは今、門の中に備え付けられた小部屋で検問を受けさせられていた。もちろん壁の小窓から覗く綺麗な街並みはお預けである。
俺含むソテー村の面々15名と、それに対応する3名のゴーフレットの兵士。
鉄兜を外し、中年の少し肉付きの良いまるで旬の時期のナスのような顔立ちをあらわにした兵士が口を開く。
「…もう一度聞く。お前たちは“ソテー”という村の者たちで、ペイザンヌ皇国からの攻撃を受けてゴーフレットに逃げてきた。このことに間違いはないんだな?」
皆より一歩前に出たホークが姿勢を正し、落ち着いた口調で答える。その様はまさに村長に値すると言っても過言ではない。
「はい。私たちの村はペイザンヌ皇国の襲撃を受け、村を捨てる判断をしました。そこで、攻撃を受けた国の敵対国……つまりここ、聖ゴーフレット王国であれば私たちを受け入れてくれると考え、こちらに足を運んだ…先ほどから言っているように、この言葉に嘘偽りはありません」
ホークのまっすぐな態度に、兵士はバツが悪そうに眉間を掻く。
「…そうは言ってもねぇ。ソテー村、そんな村がブラゼ川の上流にあるなんて記録が見つからないからな…」
俺たちは立ち往生していた。
理由としては、ソテー村なる村の記録がこの国には残されておらず、そもそもそんなところから牛車二台で来られるはずがないだろうとのこと。
ホークの必死の説明も虚しく、兵士との問答に終わりの兆しが見えることはない。
そんな状況に見かねた1人の兵士が上のものに掛け合うと出ていったが、そちらも結構な時間が経過した現在、戻ってくる様子はなかった。
ところで俺はそんなホークと兵士のやりとりを横目に、深く被ったフードの中でニンマリといやらしい笑みを浮かべていた。
「ルウさん、私たち国に入れてもらえないのかしらね…」
そう言って背後から俺を抱きしめるアリ。
もちろん俺の首後ろあたりには柔らかな双峰が押し付けられていた。
むふふふふ、アリさん、やっぱり良いモノをお持ちで…。
この旅の途中、アリやラアレを筆頭とした女性群にこうして抱きつかれることがしばしばあった。別に歳を食った女性が趣味ではないが、40歳は超えているであろうウミドさんなんかは、独特の柔らかさで抱かれ心地が良い。
ガハハ、多分ソテー村の女性の肉質を一番知ってるのは俺なんだろうな。
「…役得役得」
「ルウさん、何か言った?」
おう、声に出てた。
危ない危ない。
「…い、いえ。ただちょっと長いなぁと…思っただけです」
抱かれる気分は決して悪いものではない。もうちょっとくらいなら長引いてくれても、良いんだからね!
「……入れるのかな。私たち」
背後から鳴るアリの声のトーンが、少し低くなる。
そうだよな。
決死の覚悟で村を飛び出して、もはやここ以外に行く宛なんてないのに、ここ、聖ゴーフレット王国から門前払い寸前。
不安になるのも仕方がないってもんよ。
「…大丈夫ですよ、アリさん。こういうイベントは大抵通れます。…でないと物語が進行しませんしね」
俺の口から出たこの言葉だが、もちろん全く根拠のない軽率な言葉だ。しかし俺の勘がそう告げている。
経験上、こういう状態になったら良い方向に転ぶことを祈って待つほかに方法はない。
物語の主人公だったら、このあたりで気の利いた鶴の一声で場面を好転させるんだろう。まあ、俺には無理な話だが。
「ルウさんがそういうなら…」
ほらほら、そろそろ部屋の出入り口にでも注目しておけ。足早に兵士がやってきて「確認が取れました!大変失礼しました!」的なこと言って通してくれるさ。
俺がそんなことを考えていると、慌ただしい足音とともに出入り口から入ってきていた陽光が遮られる。
「ーー失礼する」
足早に部屋に入ってきたのは、先ほど確認のために出ていった兵士だ。
ほれみろ、俺の勘が当たった。
これでやっと門を抜けられーー。
「…呼び出しだ。村の代表と兵士2名の計3名でこちらに来いと…門衛隊長が」
入ってきた兵士に、鉄兜を外した兵士が答える。
「…了解した。それではソテー村とやらの村長、名前を伺っても?」
「…私はホーク。ソテー村の村長ホークです」
「承知した。ではホーク殿、私と彼に同行して、門衛隊長の元へと向かってもらおう。他の村人たちはおとなしくここで待っていろ!」
兜をとったナス顔の兵士は俺たちの方を見ながら強い口調でそう言い放ち「では、見張は任せた」と残った2名の兵士に告げ、呼びにきた兵士とホークと共に小部屋の外へと消えていった。
…あれ、これ悪い方に転びそうな予感?
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ホークと2名の兵士が出ていった検問室は、計14名の村人を威圧するように残りの2名の兵士が見張っていた。
足元の小さな砂つぶを踏み潰し、擦れる音すらも響き渡るような沈黙の中、俺はアリの腕に抱かれたまま1人でゴソゴソと指先を動かす。
さて、兵士という身分だけあるんだからこいつらはさぞ素晴らしいパラメータをお持ちなんだろうな。
どれどれ、このルウ・ブラン様がお前たちのパラメータを見てやろう。
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・名前:ジョブ:Lv/【ドーファン:ゴーフレット兵士:9】
〈種族〉
・人間
〈能力値〉
・[HP:67/67]
・[MP:11/11]
・[筋力 :10]
・[器用さ:3]
・[耐久度:8]
・[素早さ:11]
・[賢さ :9]
・[魅力 :2]
〈カスタムスキルツリー〉+1
◆【剣術】
[かまえ][振り下ろし]
〈付与効果〉
・ー
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…ふむふむ、まあ、あの『俺たち精鋭です』みたいな雰囲気をだったペイザンヌ皇国の騎士達が貧弱だったから大した期待はしていなかったけど……流石に弱すぎじゃねえの?
これだと、うちのアリの方がよっぽど強い気がするが…。
もう1人も似たようなパラメータだし、こんなので国を守る役目が務まるものなのかね。
もしこの国に、エクソはあり得ないにしろデーモンレベルのモンスターが襲撃しにきたら一夜にして滅ぶレベルで弱いぞ。
そんなことを考えていると、背後からアリが小さな声で俺に耳打ちしてきた。
「……ルウさん、目立っちゃうから兵士さんを睨みつけるのはやめて」
ん?おう、すまん。いろいろ考えてて知らぬ間に兵士に視線やってたっぽいわ。
「…すいませんね」
「…フードで隠れてるから大丈夫だと思うけど。…そういえばルウさん、フード暑くない? 大丈夫?」
「…フードは暑くないですけども…」
アリの抱擁が暑苦しいぜ! なんて言葉、この俺が言えるはずもなく沈黙する。
そういえば、俺がなぜ顔を隠しているかというと、理由は簡単。お顔が綺麗で目立ってしまうからである。
「…ルウさん、門の前でホークに口酸っぱく言われていたもんね。『余計な目を引かないためにも、ブランさんは常に顔を隠しておくべきだ』って」
「…まあ、確かにルウさんがちょっと浮いて見えちゃうのは事実ですからね」
と、俺はフードの下で苦笑いしつつアリに言葉を返した。
さて、そんなホークは大丈夫だろうか。
あいつは冷静で口もうまいが、まだ15歳の少年だ。村長としての経験も浅ければ、こんな急事態に巻き込まれる想定なんて毛ほどもしていなかったはず。
愛するアリちゃんが待ってるんだから、早く戻ってきてくれよなぁ。
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・アイテム/【ネバル藻】
〈説明〉
水辺に群生する、粘り気が非常に強い藻。
踏むと滑り、転倒は免れない。
すりつぶすことで粘度が増し、糊の代用品となる。
とある地域では本に使う糊として、ネバル藻が使われていた。
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ルウ「…これ、本や封筒、低レベルの防具を作るのに使う素材で、たまに夢渡りの方がネバル藻を求めて情報を嗅ぎ回っている様子を目にしましたね」




