異世界で諦めかけていた念願の風呂だよ!今回は特別に肌色多めでお送りします!
あの大宴会から数日が経ち、
ゴリサンとボブはそれぞれが共生することになる集落へと向かっていった。
一応同行はしたけど、集落の人々は暖かく迎え入れてくれたので出番は殆どなかった。
ゴリサンもボブも優しくて誠実だから、きっと良い関係を築いていくと思う。
少し賑やかだった生活が一段落して、私たちは日常生活に戻る。
気ままな冒険者にしては、私達の生活はそこそこ規則正しい。
「朝ごはんできたよー!」
私が鍋をおたまでガンガン叩くと、各々の部屋から寝ぼけ顔の3人が顔を出す。
「うぇーい……おはよー」
「おねーさま……いいにおいするぅ」
「うむ、今日も良い天気じゃのう皆の衆」
ゴザちゃんは寝癖でボサボサでパジャマのまま。
植井君は体操服を寝巻き代わりにしているみたい。
アネモネちゃんはしっかり着替えて服装も髪型もバッチリだ。
実は毎朝のこの時間がちょっと好きだったりする。
三者三様の朝の顔を見ると、なんだか寮母さんにでもなった気分になるんだよね。
ちゃんと約束したわけではないけど、何か用事がない限りは朝夕の食事は皆で食べている。
ちなみに、食事を作るのは基本的に私の役割だ。
最初は交代制だったんだけど……ゴザちゃんは朝起きれないし、植井君は味付けが濃い。
でもそれはマシな方で、決め手となったのはアネモネちゃんの独特な味付けだった。
見た目が美味しそうにできている分、味の酷さが一層辛く感じるのだ。
炊事や掃除、洗濯、買い出しに水汲みや薪割りなど……
家事は皆で分担して行っており、毎日料理をしている分、私の担当分は少ない。
男子に肌着を触られたくないので、植井君は洗濯に関しては免除。
その分、他の家事を担当してもらっている。
このパーティは年頃の女の子が多いからね……。
失礼かもしれないけど、正直に言って皆の生活能力には期待していなかった。
ゴザちゃんは子供っぽいし、植井君はなんだかすごく頼りない。
アネモネちゃんは高貴な身の上だし「なぜワシはそのような些事を」とか言いそう。
でも、実際に蓋を開けてみれば皆の生活能力は驚くほど高かった。
ゴザちゃんは実家を出てしばらく一人暮らしをしていたらしく、一通りの事は普通にできる。
植井君は意外にも綺麗好きだし思った以上に器用で、苦手な家事への挑戦にも意欲的だ。
そして何より意外だったのが、アネモネちゃんだ。
味付けはともかく、皮むきや食材の下処理といった調理作業は私よりも手際が良い。
洗濯や掃除、裁縫などなど……とにかくあらゆる面でパーフェクトなのだ。
「カカカ、人間ごときができてワシにできぬ道理はないのう」
改めて弟子入りしようかなって思ったよ。
そういえば以前、酔っ払ってる時に花嫁修業がどうとか言っていた気がする。
そういうのはメイドさんとかに任せるものだと思ってたけど、案外尽くしたいタイプなのかもしれないね。
機嫌の良さそうな時に恋バナとかしてみたいな。
午前中に一通りの家事を済ませたら、だいたい昼前には町に出る。
ギルドで依頼をチェックして情報交換をしたり、ダリアさんとランチをしたり。
アネモネちゃんも昼頃にはだいたいギルドの酒場でダラダラしている。
実年齢が何歳かはしらないけど、あの見た目でお酒を飲んでるのは良くない気がするよね。
植井君とゴザちゃんはガンテツさんの所で新武器の試射と調整をするのも日課だ。
色々と課題があるって言ってたけど、それもかなり完成に近づいているらしい。
あとは、ネコの商会での打ち合わせも定期的に行っている。
ゴザちゃんも誘ってるんだけど、いつも逃げられるんだよね。
もしかして、ネコが苦手なのかな?
一通りやるべきことを済ませたら、市場で日用品や食料を買って帰る。
アネモネちゃんは夕方になると胃袋を空っぽにして帰ってくるので体が心配になるよ。
あの子、吐いてない日ってあるのかな……?
この世界には電灯がないので、基本的には日が沈むとやることはほとんどない。
ランプはあるけど、油は節約したいから寝るのが一番だよね。
だから早めに夕食をとって各々就寝というのがいつものパターンなんだけど……
実は、私達にとって非常に嬉しい日課がここに加わることになった。
それは、一日の疲れを癒やすのに重要なとても重要なものだ。
割った竹を樋にして水を引き、大きな木桶に水を溜めていく。
桶に据え付けられた金属筒に火を入れると、徐々に水が温かくなっていく。
お湯が湧いたら上下の温度差を無くすためにしっかりとかき混ぜる。
ここまで言えば何なのかは想像できるよね?
「ゴザちゃん、準備できたよー♪」
「お姉さま、私はいいよ~……」
もちろんそんな事は許さない。
ゴザちゃんは可愛いんだからしっかり綺麗にしないとね。
借家のオーナーに許可を取り、裏庭に作った小屋にあるのはお風呂だ。
植井君の発案・設計で製作はガンテツさんとその仲間たち。
聞く話によると、新武器開発の際の試作品や廃材を利用して作ったらしい。
植井君はドヤ顔で五右衛門風呂とか長州風呂とか説明してたけど、よくわからなかった。
今回のは江戸時代に主流だった鉄砲風呂っていうのをベースにしているらしい。
そういうのって歴史の授業で習うっけ……?
いったいどこで覚えたんだろ。
もう一つ驚いたのが、石鹸の存在だ。
マジハ集落ではムクロジという黒い木の実を石鹸代わりにしており、
町に出てきてからもしばらくはそれを使っていた。
簡単に手に入るし悪くはないんだけど、洗浄力はそんなに高くない。
「動物の脂肪分と木灰で石鹸ができるんだぜ!」
とか植井君はドヤ顔していたけど、その石鹸は普通に市場で売っていた。
でも、それがくっさいのなんのって……
動物や魚の脂肪を材料にしてるなら、そりゃ臭いよね。
手を洗うならまだしも、これを顔や体に使うのはちょっと……
これなら木の実の方がだいぶマシだ。
諦めかけたその時、私に新情報を与えてくれたのがダリアさんだ。
以前行った女性用下着専門店の片隅に、香りの良い石鹸があるとの事だ。
さすがは王都に本店を持つ最先端のお店だ。
そこで出会った石鹸は、私が知るものにかなり近いように見えた。
なんでも、海藻の灰?と植物油が原料なんだってさ。
そんなこんなで、異世界で諦めかけていたお風呂と石鹸の両方が目の前に揃っているわけだ。
水浴びは頻繁にしていたけど、やっぱりお湯じゃないとね!
しかも、全身が浸るほどのたっぷりのお湯なんてこの世界に来て初めてだ。
そして夢にまで見た石鹸!
木の実で我慢してたけど、しっかり汚れを落とすなら石鹸よね。
お風呂に入れない覚悟をしてたから、入れるとなると泣きそうなほど嬉しい。
「水浴びなら毎日してるから私は入らなくていいよーっ!」
「ダーメ、今日は隅までしっかり綺麗にするんだから!」
問答無用で衣服をはぎ取り、ゆっくりとかけ湯をする。
手拭いで石鹸をしっかりと泡立てて、あまり擦らないように丁寧に洗っていく。
「あははは、くすぐったいよーっ!もう無理ー!」
この感覚、昔飼っていた犬をお風呂に入れていた時を思い出すなぁ。
でも、ゴザちゃんって肌が本当になめらかでスベスベで……
あ、おっぱいが4つある。
いや、あんまり見るのはよくないから気付かないフリだ。
ケモミミと尻尾以外はほぼヒトと変わらないから失念していたけど、ゴザちゃんは獣人だもんね。
ぺたんこというかスレンダーというか、体型に出ないから全く意識してなかったよ。
「次は私がお姉さまを洗ってあげるーっ!」
そう言って振り返ったゴザちゃんから、あらためて私を見てひと言。
「でっっっっっか!!!!!!」
そういうことは大声で言わないでほしいな。
そんなこんなでじゃれ合いながら洗いっこをして体を流し、湯船でしっかりと体を温める。
湯船は二人で入るには少し狭いけど、なんだか私にはそれすら嬉しかった。
私は一人っ子なので、妹と身を寄せてお風呂に入るのに憧れていたからだ。
「おねーさま……なにこれきもちいいよ~」
「ね、お風呂っていいでしょ?」
体を洗う時は抵抗するのに、湯船に入るとまったりモード。
こんな所も昔飼っていた犬にそっくりだ。
「なんじゃキサマらまだ入っておったのか、ワシが入るから早う出い」
完成したばかりのお風呂に興味津々なのは、私だけじゃなかったみたい。
「一番風呂もらってごめんね、なんなら一緒に入る?」
「ぬかせ、キサマのデカ乳が邪魔でそんな隙間なぞ無いわ」
アネモネちゃんは巨乳に婚約者でも奪われたのかってくらい辛らつだよね。
大きいのも大変だし、私なりにコンプレックスもあるんだけどな……。
「じゃあさ、体を洗い終わるまでならここにいてもいい?」
「どうせダメと言っても退かんのじゃろ……」
アネモネちゃんは、外見年齢だけで言えば小学生低学年ってところかな。
すべすべのきめ細かい肌も、幼いこども特有のそれに見える。
あれ……おっぱいが、ある!!
サイズこそペタンコだけど、数はヒトと同じで2つだ。
ドラゴンも鳥と同じで卵で増えるから、おっぱいは無いんだと思ってた。
アネモネちゃんはドラゴンっぽい特徴が一つもないから見た目は完全にヒトよね……。
「なんじゃジロジロ見て……オタコはソッチのケがあるんかのう?」
「ソッチのケってなにー?」
ゴザちゃんはそういうの知らなくていいよ。
「いや、ドラゴンなのに見た目はヒトと全く変わらないなーって」
「たしかに、普通は人化してもどこかに元の特徴が残るよねっ!」
町を歩いていても、獣人には耳や尻尾などの特徴が必ず残っている。
魔法で姿を偽装することはできるらしいけど、そんな様子も見られない。
「それはそうじゃ、今のワシは肉体的にはヒトそのものじゃからの」
「ゴザちゃんみたいに人化しているのとは違うの?」
「この体はそんな半端な変態とは根本から異なるのう。
ワシの魂を原型に「ヒトならどんな姿か」を投影して再構築した……と言ってわかるか?」
うん、何もわからない。
でも要約すると、今は完全にヒトと同じ体で、簡単にはドラゴンに戻れないって事かな。
「でもさ、なんでそんな事したのかなーって
完全にヒトになるのは手間もかかるし弱くなっちゃうでしょーっ?」
「カカカ、それも愛ゆえにというやつかの!
ちょいと話し過ぎたのう……ほれ、さっさと湯船を譲らんか」
「やだ」
「やだよねーっ」
「また幼子のような駄々をこねよって……」
「「こうすれば一緒に入れるよ!」」
アネモネちゃんを湯船に引っ張り込んで、湯船の中でぎゅうぎゅう詰めになると、お湯がザバーッと大量に溢れていく。
「狭い……っ!さっさと出ていかんか!」
「アネモネちゃーん、そんな事言ってもいいのかなーっ?」
「私たちが出ていくと、お湯が足りなくて温まれないんじゃないかなー?」
狭い浴槽に3人が押し込まれている状態だから肩までお湯に浸かれているけど、私たちが出た後には果たしてどの程度のお湯が残っているかな。
「なんと卑劣な……いいじゃろう、今回はキサマらの策にハマってやる。
じゃが、その生意気な乳は許さぬ!もげろ……ッ!!」
「ギャー!」
「あっはははは!」
この後、三人そろって軽く湯あたりしたのは言うまでもない。
あと、完全に忘れてたけど植井君ゴメンね。
お風呂のお湯、ほとんど空っぽになっちゃった。




