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24.拠点候補

 朝食を終え、ホテルを出発したユタカ達はギルドの依頼を受けることと、とあることのためにギルドまでは一緒に馬車で移動することにした。


「へー、この馬車の床下にはこんなスペースがあるんだ。さすがフェルトだ、色々な状況を考えて設計してる」


 ユタカは第二班のマネキン6人を馬車に召喚しようとしていた。その際、町の出入りで人目に触れるのを避けるため、馬車のどこに隠れてもらうかについて確認すると、しっかりとフェルトが用意していることが分かった。


「ありがとうございます。ですが、床下には4人までしか入ることが出来ませんので残りの2体にはユタカ殿のベットの下に隠れてもらいます。そもそも、この馬車は密閉ができますので、暗がりのベットの下までは確認することはないと思います」


「分かった。みんな、ごめんね。狭いところに詰め込むような形になって、しばらく我慢してほしい」


 ユタカがマネキンを召喚し終える頃には傭兵ギルドに着くことが出来た。念のため、フェルトには馬車で留守番をしてもらい、残りの4人でギルドへ依頼を受注しに向かった。


 建物の扉をくぐるとすぐに居合わせた傭兵たちがざわめきだした。


「おい見ろ、あいつらが生首を大量に持っていた狂人集団だ」

「なんでも、ギルド登録初日に傭兵3人の首を切ろうとしたらしいぜ」

「おい、いつも気味悪い笑みを浮かべてる奴がいなぜ。代わりに見たことのないガキが増えた」

「あの子いいな」「お前ロリコンか?」「バカ!違う、将来性を見てるんだ。あれはゼクティアちゃんみたいないい女になるぜー」


 相変わらず騒がしい連中だな、生産性のない話をしてないで仕事でもしたらどうだ。


 ユタカが周りのざわめきに辟易してるとケヴィンが話しかけてきた。


「やあ、ユタカ君。それにみんなもすっかり有名になってるね。あの辺にいる等級の低い連中は別として、等級の高い者やギルドからは結構大きな期待を持たれてるみたいだよ。勿論、私もその一人だ。生首の件は驚いたけどね」


「おはようございます、ケヴィンさん。俺がというより、彼らがすごいのですが、まあ賊退治をする人が少ないようで、そんなものをわざわざ選んで依頼をこなそうとする我々を重宝したいのでしょう。正直、我々にとっては賊退治ほど効率的な依頼はない様に思えるのですが、ところで皆さんは普段どのような依頼を受けているのですか」


「そうだね、稼ぎの面で見れば護衛依頼が良いね。ただし、信頼や実力、傭兵団の団員数が求められるから、この町では君の知っているゲルトの所の大楯傭兵団と合わせて、10の傭兵団ぐらいしか安定して依頼を受けれてないね。俺みたいに傭兵団を組まず少数で依頼をこなす者は、町中の様々な依頼を受けたり、戦いに自信のある者は変異体の討伐とそこから採れる素材を売って生計を立てているよ」


 ユタカがケヴィンと話していると、初めて会った時もケヴィンの側にいた勝気な表情をした青年がやって来た。


「ケヴィンさんは昨日も六足犬を10頭以上も討伐してきたんだ。集団戦だったらゲルトさんに及ばないかもしれないけど、個人の力で2等級になってるすごい人なんだ。お前らみたいなギルドに登録したての初等級が話しかけられるのはとても光栄なことなんだぞ」


 俺が森で襲われてたあの犬は世間でも六足犬っていうのか。自分で言うのもなんだが、見たまんまの名前が付けられてるな。この青年は最初に会った時もいたけど元気だなー。


 ユタカがレオのことをそんな風に見ていると何を感知違いしたのか、ケヴィンが慌てて謝ってきた。


「すまない、ユタカ君。こいつは私の弟子のようなものでレオという。君が登録したばかりなのにギルドから注目されていることに嫉妬してたみたいだ」


「え?いや別に何も謝ってもらうようなことは何もされてないですよ。そういえば、登録の話で思い出しましたが、あの3人はどうなりましたか」


「ああ、あの後、私が彼らと話して町中のドブ浚いの依頼のみを一か月間、毎日受けることにさせてたよ。ドブ浚いは人気がないけど、依頼の数がすごく多いんだ。その報酬をキミに渡すことも考えたが、昨日の様子を見るとそんな少額の金銭を受け取ったところでどうしようもないだろうから、彼らの手元に残るようにした。ギルドの規則では特に等級の降格処分に当てはまる事案でもなかったからこれぐらいの沙汰としたよ。こんな感じで収めてくれるかな」


「分かりました。でも、今度敵対的な行動をとった場合は、警告なしに処置することを彼らに伝えておいてください。二度目はないということです」


「分かった。彼らも十分に後悔しているようだったから問題ないと思うが、伝えておくよ。それで、今日も賊の討伐の依頼を受けに来たのかい。もしよければ、私達二人も帯同させて貰えないかい。期待の新人の強さを見てみたくてね」


 昨日のことで目立ってしまったか。いや、そもそもこの制服みたいに全員が同じデザインで揃えてる軍隊みたいな集団がいれば、何者かと探りを入れたくなるのは当然か。ケヴィン達はおそらく純粋に町のことを考えて行動しているようだから、いずれ戦っている姿を見せても問題ないだろうが、今ではないな。


「すみません。今日から変則的なメンバーで依頼をこなそうと思っていて、ケヴィンさん達と一緒に動く余力がない状況です。それに、我々の戦い方は普通と異なるので、ご参考にならないかと思います」


「おい、ケヴィンさんや俺がお前たちの戦いに付いていけなって意味か?ケヴィンさんは2等級だし、俺にしたって6等級だが、ケヴィンさんに修行を見てもらっている身だ。同じ6等級の連中とは違う、簡単には後れを取らないぜ」


「レオ君、個人の強さの問題ではなく戦闘のスタイルが違いすぎると思うんだ。多分みんなは夜間の戦闘を避けるだろうが、我々はあえて夜間を狙って賊を襲うつもりだ。それに我々は個々人が離れていても全体として一つの生物のように行動が出来るようになっている。そんな中に2人が入ってきたら、作戦がうまく進まなくなる可能性がある。一緒に来るのはまた今度にしてくれないかな」


 レオは自分の肩ぐらいにしか身長のない子供から、まるで年配の大人から諭されるように言われ、戸惑いのあまり頷いてしまった。


「そんなわけでケヴィンさん、また別の機会にでもご一緒できればと思います」


「あ、ああ。君たちの仕事の邪魔をするのは本意ではないからね。別の機会を待つとするよ。それじゃあ、頑張って」


 ケヴィンと別れたユタカ達はギルドの窓口で賊退治の依頼を受け、建物から出ていった。それをレオは首を傾げつつ見つめていた。


「ケヴィンさん、あのユタカって奴は何者なんでしょうかね。なんだか村の大人が俺を子供扱いしたときと同じような感じがしました」


「私があれぐらいの歳のころには、あんなに落ち着いた対応はできなかっただろうな。何か特別な教育を受けたのだろう、そうでなければ自分より年上の部下をまとめたり、俺たちと対等に話すことはできないだろうからな」


 ケヴィン達が外見と中身のギャップについて話している頃、ユタカはロイトナン達、第二班と別れ、エルヴィンの営むバルリング商会へ徒歩で移動していた。


「ユタカ、マネキン二人は私達から距離をおき、身を隠しながら周辺の警戒を行わせていています。もし何かあればすぐに駆けるけられるようにしていますが、基本的に私が対応します」


「分かった、俺とシャッツは大人しく守られよう。シャッツ、分かっていると思うけどこれから会うエルヴィンさんは俺たちに大きな恩を感じているようで、こちらに有利な取引をしようとするけど、ほどほどのバランスで取引することを心がけよう。一方的な関係はすぐに崩れてしまうからね」


「分かりました。長い時間を掛けてゆっくりと相手の力を得ようという考えですね」


「シャッツ、黒っ!そんなえげつないこと考えていないよ。エルヴィンさんは義理堅いから、ああいう人とは長く付き合いたいだけ。だから、必要以上の便宜をしてもらうのはできるだけ控えようという意味。けど、今の俺たちの資金ではおんぶにだっこになるとは思うけど、いずれはちゃんと返したいね」


 黒いシャッツの出現に驚きながらもユタカはバルリング商会に到着し、エルヴィンに拠点の話をすると不動産関連商品の責任者を紹介してくれた。


「会頭よりお話は伺っております。まずは諸条件をお教えいただければ、それに合致するような物件をいくつか提示させていただきます」


 ユタカ達は金額に関する条件は別として施設の大きさ、警備のしやすさ、風呂があることを条件にして候補を出してもらった。


「うーん、教えていただいた条件ではこれらの物件になります。ただ、どれも売買契約となってしまうのでどうしても初期費用がかなり掛かるかと思います。一番安いのですとこちらとなりますが、・・・」


 最安値物件はすべての条件に合致しており、敷地、建物面積も十二分なものであったが、立地に問題があるようだった。


「なんでも、このあたりの土地の安さに目を付けた商人が買い上げて、安い土地代で浮いた分の資金を使って豪華な建物を建築したまではよかったのですが、何分、スラム街の横ということもあって治安がとても悪く、何度も強盗に押し入られてとうとう手放したという経緯があります。会頭と懇意にしていただいているユタカ様にとてもお勧めできるよな物件ではないです」


 確かに立地には問題があるが、治安の悪さに対処するためか屋敷を囲む塀はかなりしっかりしている。それと、風呂もある。相場観がないから何とも言えないが値段もかなり低い様に思える。これはフェルトに現地を見てもらって、警備上問題があるのかを確認してもらっったうえで、大丈夫なようならここで良い様に感じるな。


「シャッツ、どう?この物件の値段なら今の収入の見込みからでも現実性はありそうかい」


「はい。ざっと他の物件の資料を見ましたが、治安面を無視すれば破格の物件であることは間違いありません。主計官としてはこのぐらいの値段であれば、資金調達の目途を立てやすいですね」


「金額がどうこうよりユタカの安全の方がはるかに重要です。ここは一度フェルトに現地を見てもらって判断させる必要があるかと」


「分かったよ。すみません、この物件で検討したいのですが実際に見に行けるのがどうしても夜間などの時間になってしまうので、この屋敷の鍵を一時的にお貸しいただくことは可能でしょうか」


 責任者はユタカがこの物件を検討することに難色を示したが、ユタカ達が傭兵ギルドに登録し、傭兵団を結成していることを伝えると、渋々ながら鍵を貸し出した。


 思いのほか早く拠点候補が決まり、中途半端に時間を持て余したユタカ達は町を散策していた。


「ゼクティア、シャッツ。あの2人には悪いけど、これからスイーツを食べに行かない」


「いいんですか、ユタカ」

「やったー、スイーツ食べたい」


 やっぱり自動人形と言えど、女子はスイーツが好きなんだ。よかった、少しは働きに報いることが出来るかな。


 ユタカはそんなことを考えながら近くにあった菓子店に入り、3人で異世界のスイーツを堪能した。

次回は1月13日午前0時の投稿となります。


新年明けましておめでとうございます。今年もこの作品が少しでも面白いものになるよう努力をいたします。今年もよろしくお願い申し上げます。


誤字・脱字、語句の選びの間違いなど指摘いただければと思います。

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