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23.主計官

「水無殿、『自動人形召喚・指示』の段階が進行したことをご報告申し上げます。現在行使可能な力は、完全体4体の召喚、不完全体8体の召喚となります」


 段階の進みが早いな。森にいたときより早く進んでいる気がする。前にゼクティアが言っていた”情報体”ってやつが人間の方が多いということを意味するんだろうか。


「報告ありがとう、ゼクティア。じゃあ、早速召喚をしてみようか」


 すると、警備のため窓際に配置されていた一体のマネキンがユタカの前に移動し、完全体になるために受肉を始めた。そして、現れたのはゼクティア達と同じ特徴を持っているが、高校に上がるか上がらないかといったぐらいの純白のポニーテール姿の少女だった。


「水無殿!ただいま受肉が完了しました。『自動人形』主計官職能付与型、1体の完全召喚を報告します」


「こんばんは、改めてこれからよろしく。主計官ということは会計係の人みたいな仕事が出来るってことかな。なら名前はシャッツにしようか」


「こんばんは、ユタカさん。これからシャッツって名乗ります。ユタカさんの言う通り、私は主に資産管理の能力が与えられてます。お金だけでなく、その他物資とかも管理できますよ。だからフェルト先輩が持ってるお財布は私が預かりますね」


 シャッツはフェルトの持っていた資金の入っていた袋を受け取るとすぐに中身の勘定を始め、部屋に備え付けらた紙になにやら書き込み始めた。


「なんだか勢いがある子だね、他のみんなも召喚しよう」


 ユタカが全員を召喚すると部屋の中には合計12体の自動人形が現れた。

 その光景を見て、ユタカは感慨深げに見渡していると、シャッツに何かを聞かれていたロイトナンが不満げにやってきた。


「ったく、あのガキ。細かいことをぐちぐち聞いてきやがって、剣とか槍の本数なんて細かく覚えてないぜ。予備は十分にあるからそれでいいじゃねえかよ。なあ、ユタカ」


「今まではそれでもよかったのかもしれないけど、人数が増えてきて細かく管理する必要があるから今回はシャッツが召喚できたのかもしれないよ。俺自身も結構、金の管理が面倒になって来てたからシャッツの存在はすごく助かるよ」


「ロイトナン先輩、そんなところで立ってないで、私と一緒に馬車のところに行って在庫の確認をしますよ。フェルト先輩もです、武器とか縄の数を正確に把握してないなんてとんでもないです」


 シャッツはロイトナンを引っ張り、勢いよく部屋を出るとフェルトと共に、ホテルの馬車を駐車してある場所へ走って行った。


「なんだか、元気な子が来てくれたね。ゼクティア、シャッツ達が戻ってきたらホテルの人に宿泊者が一人増えたと伝えておいてくれる」


「了解しました、それと報告が遅れてすみませんでした。段階が進んだのは今朝の賊の襲撃を処理したときでしたが、周りに部外者が多くいたことから、この場での報告となりました」


「この場で報告したのは良い判断だけど、最近殺した数のわりに段階が進むのが早いよね。前に教えてくれた”情報体”ってやつの質に関係してくるの」


「はい、そもそも情報体とはこの世界に与える影響度のようなものと考えていただければと思います。あの森の変異体のように強い個体は周りの生物を多く殺傷することができ、強い影響を与えられるということになります。そして、人間は単純な戦闘力は低いですが森を切り開いたり、川の流れを変えたりと世界に対する影響の強さは大きくなっています」


 ユタカがゼクティアから情報体についての話を聞いていると、ワイワイと騒ぎながらシャッツ達が戻ってきた。


「ユタカさん、今後の資産状況に関してお話があります。少しいいですか?」


「勿論。でも、今後のことにも関係すると思うからゼクティアが戻ってきたら、みんなと一緒に打ち合わせをしよう」


 その後、ホテル側に人数の増加を伝えて来たゼクティアが戻ってくると、まずシャッツが話し始めた。


「皆さん、さっきフェルト先輩たちと物資の数量や現金の確認、ここ最近の収入について教えてもらったところ収支のバランスは問題ない状況でした。ただ、以前ユタカさんが言っていた自前の拠点を設けるという話を考えると、もう少し工夫が必要な状態です。そもそも、ユタカさん、拠点に関してどれほどの出費が必要か想定は出来ていますか」


「いや、実はまだ調べてないんだよ。まずは、収入を得ることが重要だと思ってもう少し後にしようかと思ってた」


「確かに収入を確保することはとても重要ですが、目標の設定も重要だと思うんです。それによって、効率的に仕事を行っていくことが出来ると考えます。なので、明日は拠点を賃貸あるいは購入かにはこだわらず、条件の合う物件を確認して目標とする額を決定しましょう」


「シャッツは元気でいいね、今までにない子で俺も元気になるよ。分かった、明日については少し考えがある。こうして人数が増えたから2班に分けて行動しようかと思う。第一班として、俺、ゼクティア、シャッツとマネキン1人、第二班として、ロイトナン、フェルト、マネキン7人で編制する。第一班はマクトル内で拠点探しや情報収集を行い、第二班は引き続き賊退治で収入を確保してもらう」


「まず初めに言っておきたいのですが、今のユタカの外見はシャッツと同じか少し幼いぐらいの見た目です。外ではシャッツに接する際は妹か、小さな子供と接するような態度は控えたほうが良いかと思います。事情を知らない人からすれば奇妙に見えます。それと二班体制は可能かもしれませんが、シャッツの戦闘能力が低いので第一班はマネキンは2人にしてもらえればと思います」


「え、シャッツはゼクティア達と同じぐらいは戦えるのかと思ってた」


「ユタカさん、私はゼクティア先輩と違って、ここで仕事をするタイプなんですよ」


 シャッツはそう言いながら、自分の頭を指さし、ゼクティアに煽るよな目を向けていた。

 それを見たゼクティアは鋭い目でシャッツを見ながらユタカの護衛がいかに重要かを滔々と語り始めた。


「おーコワい。ユタカ、女同士の喧嘩はこえーなー」


 それを見ていたロイトナンはからかうようにニヤニヤとしてユタカに話しかけてきたが、ユタカは無視しながら手を叩き今後の話の続き始めた。


「喧嘩するほど仲が良い、と言うから2人が同じ班にしたのは正解だったね。ゼクティアの助言に従って第一班にはマネキンを2人にしよう、第二班に関してはお荷物の俺が帯同しなくなることで人員を制限なく動かすことが出来ると思う。第二班の班長はロイトナンに任せる、フェルトは情報収取、賊の捕縛等で支援してくれ」


「分かったぜ、よろしくなフェルト」


「ああ。ユタカ殿の護衛を考えないとなるとより効率的に賊の捕縛ができるな。索敵時と捕縛時は指揮を・・・」


早速、ロイトナン達が第二班の運用について詰め始めたところで、ユタカ達も明日の予定の確認を行った。


「やはりあの2人は相性がいいな。じゃあ、俺たちも明日の予定について確認を行おう。さっきシャッツが指摘してくれた通り、拠点に関しての情報を集めて我々全体の目標を設定しよう。その後は時間があればこの世界の情報を集めていこう」


「「了解」」


 その後、ゼクティアとシャッツのどちらがユタカの部屋の警護を行うかでしばらく揉めていたが、フェルトの提案により二人ともユタカの部屋で過ごすことで解決した。


「おはよう、みんな。今日は朝食を食べたら初めての別行動だ。気を抜かずに行こう」


 ユタカがロイトナン達の部屋に入ってくると、その後ろから俯いた姿のゼクティアとシャッツが続いて出てきた。


「おい、ユタカ。何かあったのか?あの二人あからさまにテンションが下がってるぞ。」


「ああ、あの2人はあの後しばらく言い合っててさ。さすがに寝れないから”夜は静かにするもんだぞ”って少し怒ったんだよ。ま、2人ともまだ若いからね、夜中でも騒ぎたい気持ちは分かるけどその辺は周囲の状況を考えるってことを知って欲しかったんだよ」


「いやいやいや、なにガキの姿で爺みたいなこと言ってんだよ。あの2人より子供に見えるユタカが説教って画に違和感しかないぞ」


 ユタカはロイトナンのツッコミを適当にあしらいつつ、ホテルの食堂へと向かった。


「相変わらず朝食も素晴らしいね、シャッツとっては初めての食事でしょ。どうだった、おいしいでしょ」


 ユタカは満足そうに食後のオレンジジュースを飲んでいるシャッツを見てた。


「はい、ユタカさん。食事とはすばらしいものです。今後も色々なものを食べて、自分でも再現してみたいです」


「うわー、あざといなシャッツ。自分は料理できます、します宣言とはな。こりゃー負けてられないな、ゼグぅう~!」


「?」


 ロイトナンが話し始めるとシャッツが大きな机の下に素早く潜り、何かを殴打するような音とそれとは異なる打撃音が聞こえてきた後にシャッツが自分の席に戻ってきた。当のロイトナンは机に突っ伏し動けずにいた。


 そんな姿を冷たい目で睨むゼクティアやいつもの張り付けたようなものではない自然な笑みを浮かべているフェルトを見たユタカは、いい意味でふざけて気を抜けることが出来ていると思い、シャッツの存在に感謝していた。

  

「さあ、みんな。軽く今日の予定を確認しよう。第一班は主に拠点に関する情報収集、第二班は昨日と同じ場所で賊退治でよかったよね」


「おう、フェルトが集めた情報を基に積極的に行動して、アジトの急襲が出来れば金品の回収も行う予定だ」


「仕事量と距離を考えると日帰りは難しい。ゼクティア達はユタカ殿の護衛をしっかりと務めてください」


「勿論です。ユタカの警護は我々が全力で行います。フェルト達もユタカの目標を達成するためにも資金調達を頑張ってください」


「じゃあ、油断と怪我は禁物、連絡はこまめに。出発しよう」

次回は1月6日午前0時の投稿となります。


本年最後の投稿となります。本年から投稿を開始しましたが皆様のおかげで順調に執筆を行うことが出来ました。来年もよろしくお願いします。

それでは、皆様にとりまして新年がよい年となることを祈念して失礼いたします。


誤字・脱字、語句の選びの間違いなど指摘いただければと思います。

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