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21.依頼受注

 翌朝、ユタカ達はホテルで優雅な朝食を取ったあと、マクトルに到着した際に門番の兵士に渡した賊の代金の回収のために、改造済みの馬車に乗って兵士の詰め所に向かった。


「この馬車の中身がだいぶ変わったね。少し中の容量が減った感じがあるな」


「矢などの飛来物に対応するために荷台を強度の高い木材を用いて覆っております。それだけでは内部が暗くなりますので、内側からカギの掛かるようにした窓も設置させていただきました。それと、用途が荷運びではないので、ユタカ様が野営時にも快適に過ごしていただけるように、簡易的な物ですがベットを設置しております」


 フェルトは昨日、バルリング商会で改造した内容をユタカに説明を行い、そのついでとばかりにゼクティア達に各種防衛用のギミックの使い方の指導を行っていた。


「なんだかフェルトが色々俺の安全のために付けてくれたみたいだね、ありがとう。そもそも、みんなが警戒してくれたおかげで今までの旅では馬車に接近されて何かされた記憶がないけど」


「これらの機能は使用する状況にならないことに越したことはありませんが、憲兵の職能を付与され要人の警護を行う私としては、備えを怠ることはできませんでした」


 あ、そういえば憲兵の仕事の中に要人の警護とかって説明されてたの忘れてた。憲兵って軍隊の警察の役割を担うだけの兵科じゃないだったな。そういう意味でもフェルトにここまでの道中の護衛の指揮をするように言ったのは意外と正解だったんだ。


「ユタカ、もしかして忘れていたのですか。てっきり知っているからこそ、フェルトに護衛の指揮を執るよう指示をしたのかと思っていましたが」


「憲兵イコール軍隊の中の警察、って思い込んじゃって。前の世界でネットサーフィンをしてたけど、あんまり軍隊系の知識は見てなかったから、ちょっと後悔してる。でも、ロイトナンに護衛の指揮を任せるよりはうまくいくってことか。」


「なんだよユタカ、俺は複数の部下を指揮して戦闘を行うほうに機能が与えられてるんだからしょうがないだろ」


 ユタカはそれぞれの個性を確認しつつ、治安の良い街中ともあって比較的のんびりとした雰囲気で移動を行い、最初にマクトルに入った城門のそばの兵士の詰め所に到着した。詰め所の入り口の横にはマクトルに入る際にユタカ一行の検査を行った門番が立っていた。


「あ、あなたは。ゲルトさんたちと一緒にいた子供じゃないですか。賊の売却代金は用意できていますよ。今、隊長の所に案内します」


「あなたはあの時の門番ですね。そろそろ日にちも経ちましたし、売却が出来てるかと思って伺ったのですが、無駄足にならなくてよかったです」


「代金については額が額なので、隊長から直接受け取ってもらうようになっています。隊長、例の賊を持ち込んだ方々を連れてまいりました」


 詰め所内で見た中では一番装飾が凝った扉を門番はノックをしながら、ユタカ達が来たことを告げると、短く「入れ」と反応が部屋から聞こえた。


「こんにちは、私はユタカと申します。早速ですが、先日我々が持ち込みました賊の売却代金を受け取りに伺いました」


 隊長は部屋に入ってきたのが妙な黒服の男女三人と子供を見て、笑みを浮かべ、率いているのが子供だと分かるとさらに笑みを深めた。


「あー、あの賊の代金だな。大した額にはならなかった、まあ、それでもこの額はガキには十分すぎるだろう」


 そう言いながら、隊長は硬貨の入った麻袋をユタカに投げてきた。すかさず、フェルトがユタカの前に出て麻袋を片手でキャッチすると張り付いた笑みを隊長に向けつつ中身を確認した。そして、ユタカに耳打ちを行った。


「おかしいですね、たかが金貨3枚をわざわざ隊長が自ら渡すのは。それに、ここまで案内をした門番の話ではそれなりの額になるようなことを言ってました」


「ふん、それはそいつの勘違いだろ。金貨を3枚もやったんだからさっさと帰れ、ガキ」


 はー、だめだなこいつ。前にゲルトさんが忠告したことを活かせないとは。欲の皮が突っ張りすぎだ。このあとに予定があるのに、余計な時間を取らせるな。


「時間がないので冗談に付き合っている暇はありません。こう見えても、傭兵ギルドや有力なギルドの登録者から相場を聞き取っています。繰り返します、先日我々が持ち込んだ賊の売却代金を受け取りに伺いました」


 隊長はユタカの冷めた目を向けながら、上から諭すようなものの言い方に激高し始めた。


「ガキが粋がるな。俺が金貨3枚もくれってやったんだ、さっさと失せろ。黒服もだ。ああそうだ、女はそこにいろ、俺を馬鹿にした詫びとして俺が楽しむからな。へへ」


「愚か者め、全員もう帰るぞ。お前のやりようは見た、告げ口をするようで好まないがこのことはエルヴィン・バルリングや大楯傭兵団のゲルトといった人物に伝えておく」


 エルヴィン・バルリングの名前が出たとたん隊長の顔色が悪くなり、急に下手に出て正しい額が入った袋をユタカの元まで持って来た。


「大金貨4枚と金貨4枚か。賞金首でもいたようだな。愚か者、お前は詫びとして俺の仲間を渡すように言ったな。なら、今回お前が行った愚行の詫びとして何をするんだ」


 隊長はユタカの冷え切った目が自分を映さなくなるまでさまざまな謝罪を提案し、結局大金貨5枚をユタカに渡すこととなってしまった。


「ああ、愚か者に一つ忠告を。今度我々に不利益を与えようとしたら警告なしにお前を・・・」


 そう言ってユタカがゼクティアに目配せをすると、ゼクティアの持つ剣が隊長の心臓の位置にスッと向けられた。


 はあ、なんだかこんなトラブルばかりだな。この世界のモラルはどうなってるんだか。門番をやる兵士は公務員だろ。職務規定とか倫理規定とか定まってないのか?


 ユタカは前の世界と比べて非常に高いトラブルの頻度に暗澹たる思いをしながらも服飾職人の店へ移動した。相変わらず客のいない店内だったが、昨日とは違い店主がカウンターの前でうろうろしていた。


「待ってたぞ、坊主。1着目はできた、早速、着てみてくれ。何か修正が必要ならすぐにでも行いたい」


 店主はその場でユタカの着ていた服を脱がし始め、奥から持ってきた服をてきぱきと着せ始めた。


「なんだか着せ替え人形の気分を味わった気がするよ。でも、素晴らしいな」


 店主がユタカに着せた服はゼクティア達の着ている服と何ら遜色のない出来で、昨日ゼクティアが注文していたデザインの襟章と肩章すでにつけられていた。


「どうだ、坊主。サイズも問題なさそうだな。飾緒ってやつに関しては別の職人が作ってるんだがもう少し時間が掛かりそうだ。」


「正直、ここまでの完成度を想像していませんでした。一日という短い期間でこれほどの素晴らしいものを作っていただけれるとは、ありがとうございます」


「おうよ、さすがの俺も不眠不休で作ってやっとだったぜ。問題もないようだし、残りの2着は納期まで間があるだろ。だから、今日はもう寝るぜ。ほらさっさと出た出た」


 昨日と同じようにユタカ達は店主に追い出されるように店の外に出されてしまった。


「相変わらずだね。どう?みんな。似合ってる?」


「はい、とてもお似合いです。これでユタカが我々の指揮官だと一目で分かってもらえると思います」


「ゼクティアが指示した肩章とかが上位の階級を表す、ってことがこの世界で普及してる知識なのか分からないけど、集団としての統一感は出たよね。じゃあ、諸々の準備もできたし、日々の糧を得るために仕事探しに行こう」


 そう言ってギルドに向かい依頼が掲示されている場所に到着すると、そこには以前ユタカ達に絡んできた三人組が掲示物を見ていた。その三人組は近づいてくるユタカ達の姿を見ると逃げるように去って行った。


「お、お前らは!ッチ、行くぞ。」


「はあ、なんだか俺が追い出したみたいじゃないか。まあ、あいつらに関しては自業自得だろう。さて、盗賊関連の依頼はどこかな」


 ユタカ達が盗賊関連の依頼を探していると横から話しかけてくる人物がいた。


「よう、ユタカ。ギルドに登録したらすぐに仕事をするかと思ったが、今日は全員で揃いの服に変わったな」


「こんにちは、ゲルトと大楯傭兵団の皆さん。仕事をする上で登録したときみたいに舐められないように衣服をゼクティア達と一緒のものにしたんですよ。俺だけ村人のような格好だと、いらないトラブルが寄って来るみたいで。それに、仕事に必要なものの準備をしてたら、初仕事が今日になってしまいました」


「そうか、確かに今の格好はなんというか傭兵というより軍隊に近くなった感じがするが、まあいいか。それで、ユタカは賊退治の依頼をする予定だったよな。その類の依頼は窓口に行って冊子で見る必要があるぜ」


「そうなんですか。道理でさっきから見つからないわけだ。本当に賊退治をする傭兵は少ないんですね」


「そうだな、金にならない上に危険ばかりだからな。ユタカ達の場合は違うだろうが。賊退治は依頼の多さのわりに処理する奴が少ないから、ギルドから歓迎されるはずだぜ。稼いだら奢ってくれよ!」


 ユタカはゲルトに「もちろん」と答えながら、ギルドの窓口に行って賊退治の依頼を見せてもらっていた。


「なんだか賊の情報がざっくりとした感じだな。居場所についても推定される範囲が広いし、数についても推定される最少と最大の幅が大きい」


 ユタカが依頼を見ながら愚痴っていると、ギルド職員から説明が始まった。


「これはユタカさん、賊退治をしていただけるのですか?あの登録時に見せた強さがあれば問題ないと思いますがお気を付けください。それで、ユタカさんのご懸念についてですが、これらの情報は目撃情報や襲撃を受けた人からの情報ですので、どうしても精度が荒くなっている状況です」


「そうなんだ。どうするみんな、今日はとりあえず近場で状況の確認がてら、という感じで行こうと思うけど。いいかな」


「俺としては大きな賊とやってみたい気持ちもあるが、慣らしとしてはそのほうが無難だと思うぜ」


「私も近場に賛成です。まずは近場でやってみて準備の不足等が見つかればすぐに解決したいので」


 ユタカは近場での賊退治依頼があるか職員に聞くと最善の場所をピックアップした上に、賊の行動範囲の関係でその場所で期待できる依頼をまとめて受注できるように調整をした。


 やっぱり、ゲルトが言う通り賊退治は歓迎されてるみたいだな。手続きの丁寧さが他のとは違うみたいだ。


「お待たせいたしました。それでは、マクトルの西の峠付近で出没する賊退治ということで関連する依頼を一括で受注処理を行いました。なお、賊を退治できずともこの種の依頼に関しては違約金は発生しないのでご安心ください」


「ありがとうございます。この距離だと往復とかを考えると一泊しないといけないな。フェルト、出発前にホテルに寄って今晩は帰らないことを伝えておこう」


 ギルドを出発したユタカ達がホテルに寄り、今晩は戻らない旨を伝えると途中で食べるようにと簡単な食事を用意してくれた。そして、マクトルの西門から町を出て一路、賊の目撃情報のある峠へと馬車を進めた。

次回は12月23日午前0時の投稿となります。


誤字・脱字、語句の選びの間違いなど指摘いただければと思います。

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