第35話 憧れ的存在
『ファラウェイ・ワールド・オンライン』内エリア1の、バー『雨宿り』。ひさびさに奥の部屋を使う。
「………え、本当だったの?」
「うん」
「本当の、本当に?」
「うん」
「本当の本当の本当に」
「しつけえ。いやもう、ぱっと見せてくれよ、姉さん。その方が早い」
「だね」
ピッ
【ショートカット『偽装解除』を実行します】
ぶんっ
「うわあ…」
「おい、なんだその失礼な反応は。もとはアンタが言い出したことだろが」
「そ、そうだけど、………はー、こうしてあらためて見ても、まだちょっとピンとこなくて」
という感じで、バーに『ユーマ・アイスフィールド』としての前島優希さんを呼んで、あらためてミリアナとしての正体を明かした。予告通り、拓也くん…ヘラルドも同席している。
「それはまあ、しかたないよ。これまでバレないようにがんばってきたんだから」
まず、本来のアバターである『ミリアナ・レインフォール』自体が、リアルの私と何から何まで違う存在として作り上げたものだ。同じなのは、性別と年齢設定くらいである。
「剣士としてアバターを作り直すなら、私と全く違うタイプにしようと思ったのは確かかな。エルフはそれにぴったりだったし…ぴったり…だった、し…」
「…長身スレンダーに憧れる気持ちは、わからなくもない。俺だってなあ…」
「な、なにかな、ヘラルドくん?」
「いや、別に」
今見ているアバター『ユーマ・アイスフィールド』は立派な体格の青年ヒューマンだけど、リアルの前島さんはそれこそ長身スレンダーである。私に限らず、人はないものを求めるのかな?
「拓也くん…ヘラルドは、長身にしなかったの?」
「なんか、負けた気分になってな。『コナミ・サキ』がリアルの姉さんそのままだったから、なおさらな」
「ごめんなさい、憧れに負けました」
「しょうがねえな。毎日こんなのが学校で幅効かせてるわけだしよ」
「え、もしかして、ボクのせいだったの?」
「あー、まあ、それもあった、って感じかな」
エルフはドワーフ並に魔力設定が高く、剣士と鍛冶・調合師を兼ねやすかった、というのが最大の理由ではあるのだが。本当だよ?
「良かったな。美奈子姉さんの憧れ的存在だぞ。他のギルメンに自慢できるな!」
「ヘラルド、キミという人は…」
あははは、はは。
私からはノーコメントとしておこう。
コンコン
「こんにちわー。あ、『ミリアナ』モードだ。ふたりに話したんだね!」
「よー、ライナ。お前も大変だったみたいだな」
「ほんとだよー。もう、どうしてくれようかと。これで、ガシガシ奢れるよ!」
「え? 奢る? なんの話?」
最初から知ってたライナ…リナちゃんも合流。アバターの偽装解除も見てもらったし、そろそろフォークロア・コーポレーションに行って、ユリシーズさんと…。
ぽーん
「ん? もしかして、『緊急クエスト』か?」
「そうみたい。えっと…うわあ…」
「どうした?」
「今いるわたし達4人、全員の出動要請だよ!」
「それはすごいね。ボクら全員、ユニーク装備持ちだよ?」
「どんな内容なんだ?」
「…怪獣退治、かな」
「「「…は?」」」
怪獣である。しかも、現実世界で。




