↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
93/104

第34話 確認という名の発覚

 ある平日の夕方。夕食までにはまだ時間があるなという頃。自宅のリビングで、(美奈子)と弟の拓也(たくや)でくつろいでいる。たまにはゲーム外でも拓也くん(・・)と一緒にいたいのだ。リアルのジンジャーエールも美味しいし。んまんま。


「なあ、美奈子(みなこ)姉さん、訊きたいことがあるんだけど」

「なに? あらたまって」

「姉さんって…『ミリアナ・レインフォール』でもあるのか?」


 ぶほあっ


 ジンジャーエール、豪快に吹き出しちゃったよ!


「す、すまん。そんなに驚くとは思わなかった」

「けほけほ…。驚くなっていう方が無理だよ!」

「じゃあ、やっぱり…なのか?」

「………………………うん」


 唐突にバレちゃったなー。しかも、一番隠したかった拓也くんに。あーあ。


「なんで、わかったの?」

「ああ、いやほら、以前、前島(まえじま)の野郎が弟やその友達を連れてウチに来ただろ? 余計な連中も引き連れて」

「う、うん」


 三人娘…いや、『新緑の騎士団』ギルメンに対してだな、拓也くんの評価は果てしなく悪いままのようだ。向こうはそうでもないんだけど。


「その時、あいつが言ったんだよ。『「ミナ」と「ミリアナ」って名前が似てる』って」

「はあ。…え、もしかして、それだけ?」

「それだけなんだ、実は。カマかけて悪かった」

「えええ…」


 本当に、えええ…だよ。私がミリアナってこと隠すの、どんだけ苦労したのかと。


「いや、マジでわからなかったからな。いくら『コナミ・サキ』と『ミリアナ・レインフォール』が一緒にいるとこ見たことなかったとしても」

「ああ、まあ、それもあるか」

「どっちもソロで有名だったし、そもそも、『ふたり』がなんらかの関わりがあることさえ、俺達のギルドしか知らなかったからな」


 ミリアナに直接的に関わりがあることさえヤバい…らしいので、拓也くんや前島さんも言いふらすことはしないでいてくれた。ギルメンにもかなり徹底していたようだ。


「そりゃあ、一所懸命、隠したもん。私のスキルを総動員して。偽装スキルだけじゃなく、装備の組合せやログインのタイミングも含めて」

「そこまでして、なんで…って、当然か。初めてのユニークウェポン保持者となった時点で相当なものだったもんな、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』じゃ」

「そういうこと。でも…」

「でも?」

「そろそろ、話しておきたいなとは思ってたけどね。拓也くんにだけは」

「そっか…」

「でも、その、ええと…」

「ああ、うん…」


 言い出しにくかった理由は他にもあるし、むしろそれらの方がメインではあったのだが、拓也くんに限っては『アレ』がトドメを刺していた。


「その…。姉さんは、知っていたのか? 昔のこと。俺が、『ミリアナ』に言うまで」

「実は…知らなかった。あの時、ミリアナとして拓也くんに聞くまで」

「うわあああ」


 私は、誰なのか。


 戸籍や住民登録上は間違いなく『霧雨(きりさめ)美奈子(みなこ)』である私は、そのルーツについて誰も覚えていない。というか、誰も知らない。生まれた時のこと、赤ん坊として育った時のこと、保育園に通っていただろう時期のこと。記録だけが残っており、そして、誰も覚えていない。


 私は、本当の両親が事故で亡くなった直後に、拓也くんの姉として突然現れた。人々の証言を総合すると、そんな感じなのだ。ふたりともすぐに今の両親に引き取られ、今住んでいるこの街に越してきたから、そこでうまい具合にリセットがかかったような状況である。


「え、えっと、私は特に気にしてないよ? ユリシーズさんから確認のために尋ねられた時も、特にどうということはなかったし」

「ユリシーズさん? ユリシーズさんって、運営の?」

「ああ…。そっか、拓也くんにはいろいろと説明しないとね。私が『現界』能力を手に入れてから、何をしてきたか」


 いっぱいあるなあ。こうなったら、次の定例ミーティングに連れていって、ユリシーズさんやリナちゃんとあれこれ話した方が良さそうだ。あ、でも、ユリシーズさんはともかく、リナちゃんはまだ私の不可思議な素性を知らなかったっけ。まあいいか、いい機会だからリナちゃんにも話しておこう。


「いろいろ、あったみたいだな」

「まあね。それは、あとであらためてゆっくりと。で、でね、今、これだけは言っておきたいなって…」

「なんだ?」

「私は、私が誰であっても、拓也くんの姉だよ? ううん、姉じゃなくたって…」

「…ストップ」

「え?」

「い、いや、その先は、今は言わないでおいてくれるか?」

「………………………そ、そう、だね。その方が、いい、かも」

「あ、ああ…」


 ええと…私は今、拓也くんに何を言おうとしていた? なんか、当たり前のように、それを伝えようとしていて、それで…。


「…」

「…」


 …うん、拓也くんの言うとおり、その辺のこと(・・・・・・)は後にしよう。うん、そうそう。


「ただいまー」

「そこで母さんに会ってな…どうした?」

「…あ、お父さん、お母さん、おかえりなさい」

「…おかえり」

「「?」」


 ああ、両親にも言っておかないとね、私が『私達』のことを知ってるってこと。でも、私がミリアナってことは後でもいいかな。こっちの方がショック大きそうだし。少しずつ、少しずつ。


「前島の野郎はどうすっかな…。しゃくだけど、あいつの言葉がきっかけだったし、姉さんと学校が同じで知っといた方がいいのは確かだし」

「ああ、うん、そうだね。私から言っておくよ」

「んにゃ、俺も立ち会う。それは譲れん」

「そ、そう…」


 えっと、大丈夫だよね? 何もしないよね? 何が何とは言わないけど。うーん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。