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第21話 NPC制御システム

第4章は2話のみです。

 VRMMORPG『ファラウェイ・ワールド・オンライン』を展開する企業、フォークロア・コーポレーション。稼働を始めた十数年前は、日本国内・日本語圏のみにサービスを提供していたのだが、あることをきっかけに世界展開を始めることとなった。


 そのきっかけとは―――


「ユリシーズさん! 『NPC制御システム』がまた『緊急クエスト』を生成しました!」

「よし、いつも通りクエスト内容をレビューした後、指定された関係当局に協力を要請してくれ」

「わかりました!」

「個人や一般家庭への連絡仲介を含め、特殊回線を使用することを忘れないように。盗聴の可能性を常に考慮すること」


 NPC制御システム。本来は、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』で稼働する、あらゆるNPC…『ノン・プレイヤー・キャラ』を制御するためのシステム。主役はあくまでプレイヤー達であり、NPCは定められた役割を果たすだけだが、NPCが影に日向に世界を支えることで、プレイヤー達は見知らぬ国に迷い込んだような雰囲気になる。単なる仮想空間ではない、生きた世界が確かにそこに存在するという実感。


「A国の首都警察と、D国の衛星監視、そして…え? Y国の田舎町のコンビニ?」

「念のため、因果関係を全て調べるんだ。我々自身がクエストの意図を理解できなければ、指示間違いが起こりかねない」

「判明しました! 人質のひとりの実家が、このコンビニです。現場でも立てこもり事件の状況はTVで流しており、犯人と共に視聴している模様です」

「ただの学生のようだが…。なるほど、精神的に不安定な症状があるようだ。診断結果を踏まえると、自暴自棄を起こす可能性がある」

「確かに、コンビニのある地元のマスコミにも情報が流れています。今回も、クエストの指定通りに進めます!」


 『ファラウェイ・ワールド・オンライン』が稼働を始めて数か月後。PRイベントを行おうとしていた会場に、制御を失った報道ヘリが墜落、死者数十名という凄惨な事故が起きた。二次災害を防ぐセキュリティゲートなどを制御する安全装置も壊れ、そのままでは更に死者が増えるだろうという状況だった。


「しかしまあ、今回の『NPC制御システム』も、やたらきめ細やかな作戦を立案したものだよな」

「社長が設定した標語、『NPCは遥かなる世界ファラウェイ・ワールドをプレイヤーと共に歩む』を忠実に守っているってことか」

「人間よりも人間らしいよな、ある意味」


 現場の機転で、イベント用に用意していたNPC制御システムへの無線回線を、安全装置の代わりに接続。瞬く間に災害対策の全機構を稼働させたばかりか、その後の人手による作業への各種提案まで行った。機械に使われるような不信感から多少の反発はあったものの、結果的には、その指示全てが120%とも呼べるほどの成果を果たした。つまり、反発があることさえも想定していた提案だったのである。


 有効にして有能。事後処理を兼ね、イベント会場周辺の公共機関・関連企業のデータベースをNPC制御システムに試験的に接続したところ、会場の再建計画、墜落ヘリコプターの問題箇所、遺族への補償など、あくまで提案という形ながら、次々と解決策が導き出された。事ここに至り、各国当局が『フォークロア・コーポレーション』にNPC制御システムの活用を正式要請、VRゲームとの連動が必要なことから、世界展開へと方針転換された。


「俺、この間ゲーム内の酒場でNPCのウエイトレスにちょっかい出してみたんだけど」

「何やってんの、お前」

「丁重にあしらわれちまってさあ。なんか悔しいから、そのNPCの性格設定を調べてみたんだ」

「ホントに、何してんの」

「そしたら、ちゃんと年齢分の人生が設定されていたからびっくりしてさ。これもNPC制御システムが生成したんだよな」

「何して…ああ、まあ、そう作られているからな。それでもちゃんとNPCとしての自覚と役割はあるし、問題はないだろ?」


 人間に優しく、それでいて、どこまでも使命に忠実なシステム。そこに、矛盾は発生しないのだろうか。そのような危惧はあるものの、関係当局がNPC制御システムを活用して様々な問題解決を図っていることは、積極的に公表していないというだけで、隠匿しているというわけでもない。『緊急クエスト』は、知る人ぞ知る仕組みという位置付けである。


「まあな。どこぞのSFみたく、NPC制御システムが意思をもって人類に反乱を起こすことはないだろうな。しょせんはプログラムとデータだし、物理的にどうこう(・・・・・・・・)できるわけではない(・・・・・・・・・)だろうし」

「ユリシーズさんはどう思います? 緊急クエスト対応グループのチーフを兼ねている身としては、気になるところじゃないんですか?」


 くるっ


「私も心配していないさ。もし仮に、NPC制御システムが意思をもち、なおかつ、人類が敵対したら、おそらく…自分で自分を消去(デリート)してしまうと思うよ」


 その、あまりの優しさによって。

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