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第19話 四天王

『早く、ログアウトして下さい!』

「で、でも、それでも、とりあえずミリアナとして『現界』すれば…」

「『NPC制御システム』が判断したんです! 彼らの本当の目的は、フルダイブ中で眠っているあなたの本体だと!」


 なんですとー。私なんかさらっても…ああそうか、ミリアナ目的か。


「…! それなら、部室にいた生徒達が危ないじゃない! ユリシーズさん、やっぱり『現界』します!」

『ちょっ…』


 ピッ


 ピッピッ


現実世界(Real World)の『〇〇高等学校・電脳部部室』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】


 〔はい〕を、押す。



 ぶおんっ


「な、ミリアナだと!?」

「バカな、誘拐班の方を追跡しているんじゃないのか!?」

「…あなた達は!!」


 拓也を誘拐した男達じゃない! 爆弾で撃退したの忘れてないよ! 刑務所に送られているはずなのに、脱獄でもしたの?


「こうなったら…動くな! 『霧雨美奈子』本体がどうなってもいいのか?」


 かちゃっ


 男のひとりが、フルダイブ装置を付けて横たわっている私に銃を突きつける。残りのひとりも電脳部員達に銃を向けており、怯えさせている。くっ、部員にも突きつけてさえいなければ、まだやりようがあるのに…!


「あなた達、拓也…くんを、その娘の弟を、誘拐した人達でしょ? 私が目的なら、その生徒ふたりは解放しなさい!」


 通じないとは思うけど、とりあえず言ってみる。


「ふん、人質は多い方がいいに決まってるだろ。むしろ、こいつらをこの場で殺せば、邪魔なお前に対する牽制にもなるかもな」


 かちり


「「ひぃ!?」」

「やめなさい! そんなことをして何になるの!?」

「お前は、ひとつ勘違いをしている。俺達の目的は、ミリアナ・レインフォール、お前じゃない。確かに、この娘の弟をさらった目的はそうだったが、今回は違う」

「え?」

「復讐だ! 簡単な仕事だと思っていたのに、こんな小娘にしてやられて、このまま刑務所で大人しくなんかしてられるか!」


 えええ…私が目的って、そういうことだったの?


「なら、なぜさっさと殺さないの? そのふたりの生徒じゃなくて、その娘を」

「…正気か? もったいないじゃねえか! 何もできない本体をたっぷり可愛がった後に売り飛ばしてやるんだよ! 復讐は果たせるし、逃走資金もたっぷり入るって寸法だ!」


 ごめん、正直、なぜ正気を疑われるかわからない。私の本体が限りなくモノ扱いされて腹立ってるのは確かだけど、それは私がその本人だからであって、他人と認識しているミリアナにそれを言うのは何か違わない?


「これでわかっただろ。こいつらを死なせたくなかったら、お前はさっさとゲームに戻って、この娘の…」


 ひゅるるるるるるる…


 どごおんっ!


「ぐげっ」

「な、なんだ!? どこから…!?」


 緊迫感あふれるところに飛んできた、鉄球。トゲトゲ付きの痛いやつ。あと、鎖がつながっている。えっと、ファンタジー作品で言うところのモーニングスター? 『ファラウェイ・ワールド・オンライン』でも武器として用意されてるね。とにかく、そんなモノがいきなり飛んできて、男のひとりに豪快に直撃した。


 ざっ


「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、なにより、我らが姫の危機が呼ぶ!」


 …


『正義は常に、真実は永遠に、愛は高らかに!』


 ……


『刺す、倒す、伸す、潰す、刻む、叩く』


 ひゅおん、ひゅおん、ひゅおん


 うわ、トゲ付き鉄球がもうひとつあるし!? 危ないから振り回さないでよ!


「『新緑の騎士団』四天王、ここに見参!」

「ギルマス入れて四人だけど、気にしない」


 いや、気にするよ。というか、三人娘のみなさん、剣舞(仮)の時の姿のままで何を…。


顕現せよ(セットアップ)、バスターソード! 我が剣をくらええええ!」


 ぶおんっ


 通常装備の剣が『現界』したあ!? って、あの手にあるの、私が『フォークロア・コーポレーション』に納品した魔石じゃない。ユリシーズさんが渡したのかな?


「かはっ」

「もういっちょ」

「ぐへっ」

「な、なにが…」

「潰す」

「ぶべっ」


 剣を現界させた…ええと、仮称ブラックさんが残っていた男を峰打ちして、そこに既に盾をもっていたシルバーさんがトドメを刺し、モーニングスターで伸びていた男が立ち上がろうとしたところにピンクさんが再度モーニングスターを投げつけた。以上。


 いや、悪いとは思ってるよ? リアル名もアバター名も知らないってこと。今度ちゃんと教えてもらおう。前島さんに。


「ミリアナ! 美奈子様に連絡して。もうログアウトしても大丈夫だって」

「そして目を覚ましたところを、私達が熱い抱擁で迎えて…!」

「姫とその守護者達は末永く仲良く暮らしましたとさ、めでたしめでたし」


 よし、しばらくこのままでいよう。なんかイヤな予感がする。


「あ、前…リアルのユーマを助けに行かないと!」

「優希様なら、他のギルメンがとうの昔に助け出したよ」


 はい? 早くない?


「そういえば、ひさしぶりよね。ギルマス本人じゃなくて、ギルメンが誘拐犯を倒すの」

「最近なまってたからちょうど良かったんじゃない? たまには生身で拳銃相手にしないとね」

「弾よりも速く、車よりも強く、ヘリコプターよりも高く。それが、我ら『新緑の騎士団』」


 なにそれ。

 ねえ、嘘だと言ってよ。


 たったったっ


「おーい、アンタ達(変態集団)! 姉さんは無事か!?」


 あ、拓也! 警察の人達を連れてきたんだ。ということは、前島さんの方が片づいたのは本当なのか…。


「むう、真の騎士が来てしまった。魔導士だけど」

「あきらめて、撤退しましょうか。じゃあね、ミリアナ」

「今日の夕食は何かな? 早く帰りましょ、前島邸に」


 そう言って去っていく、ブラック、シルバー、ピンクの三人娘。もういいや、仮称のままで。


 うん、私もさっさとログアウトしよう。そして今日はもう家に帰ろう。拓也と一緒に。

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