第18話 楽しい文化祭
拓也と屋台を一通り回ってお腹いっぱいになったので、体育館のライブを見に行くことに。
パチパチパチ
パチパチパチ…
パチパチ…パチ…
…
「すげえ、まだまだ続くぞ、皆中!」
「くそう、中学生だと勧誘できねえ!」
「矢だ! もっと矢を用意しろ!」
途中、通りかかった弓道場から、どんどん静まり返る拍手と、何か違和感のある声が聞こえてくる。いや、皆中って普通、続けるようなものじゃないよね?
「行こう。見なくてもわかる」
「そうだね」
◇
体育館。通常はライブなんだけど、時々演劇が入る。
「ナイト・ブラック!」
「ナイト・シルバー!」
「ナイト・ピンク!」
「な…ナイト・イエロー…」
「『新緑の騎士団』、見参!」
どおおおおおん
「悪人ども、我らが正義の鉄槌をくらえ!」
「そして、愛する姫をこの手に取り戻す!」
「悪即断、必殺奪、我愛你」
「て、天と地と人の叫びが、この血を呼び覚ます…」
「「「くらえ、ホーリーシールドアタック!!!」」」
わーわー
「け、剣舞…?」
「確かに、剣が舞ってるな」
「前島さん、アイスフィールドを『現界』させてまで…」
「あの三人娘に振り回されてる感満載だけどな」
とりあえず無難(?)なコメントをしつつ、前島さん+三人娘の剣舞(??)を鑑賞する私達。
「みんなー、応援ありがとー。あ、霧雨さん、観てくれたんだー!」
「よーし、次の回もがんばっちゃうぞー!」
「補給、補給、いろいろ補給」
「ミナに見られた…恥ずかしい…」
うん、今回は前島さんに同情しておこう。
「今回ばかりは、前島の野郎に同情だな…」
「あ、拓也もそう思う? だよねー」
「まあなあ」
よしよし、拓也と息があったぞっと。
「ねえ、私達をダシにいちゃついてるよ、あのふたり」
「今更じゃない。生暖かく見守りましょ」
「ふたりの距離は数センチ。近からず遠からず」
◇
ライブ(???)も一通り観たので、各教室の出し物を回る。
「…で、なんでアンタが俺達に合流するんだ?」
「同情してくれたんじゃないの? 拓也くん」
「関係ねえ。全く関係ねえ」
「あははは…」
ああ、まあ、少しくらいは、ね。
「ん、ここだ。バー『雨宿り』オンリーの教室」
「マジであったよ、おい」
「相変わらず、ウチの文化祭は不思議だねえ」
いいじゃない、いいじゃないの。
「この本、下さい!」
「え、霧雨先輩!? 買ってくれるんですか!」
「うん! あそこのジンジャーエールおいしいよね!」
「先輩!」
がしっ
よし、目的は果たした! 満足満足。
「わ、すごい! 素材構成がほとんど当たってる!」
「姉さん…まあ、いいけど」
「ふむ…マスターの最大の魅力は、ふと気がつくと披露しているグラス磨きか」
「こっちはよくねえ」
うん、楽しいね、文化祭!
◇
教室棟から、再びグラウンドに向かう、私達三人。渡り廊下が裏道のようになっているせいか、人影が皆無だ。
「じゃあ、もう1回屋台回ろっか。あそこのジンジャーエール、もう一度飲みたい!」
「姉さんの手作りほど、うまくはねえけどな」
「ああ、それなら、来年はぜひミナのジンジャーエールを屋台で…」
がちゃっ
「…手を上げろ」
「!?」
「拳銃…!?」
いつの間にか後ろにいた男が、前島さんの背中に銃をつきつけていた! あまりに唐突な出来事に、私達は身動きできずにいた。
「そのまま大人しくな。よし、お前だけこっちに来い」
「前島さん!」
「動くなよ? 裏門に停めた車にこいつを連れていくまではな」
この男も、前島さんの誘拐が目的!? でも、後ろから銃を突きつけているため、聖盾アイスフィールドを『現界』させても意味がない。そんなことをすれば、背中から強行手段を仕掛けられてしまいそうだ。
結局何もできないまま、前島さんが裏門の方に連れられていく。姿が見えなくなり、私達はようやく動き出す。
「…! 拓也、警察に通報!」
「わかった! 姉さんは?」
「電脳部の部室に行ってくる! デモ展示してるフルダイブ装置で『ファラウェイ・ワールド・オンライン』にログインして、ミリアナに連絡をとる!」
「そうか! ミリアナなら、現実世界のマップ機能で前島を追跡できるからな!」
「そういうこと! それじゃあ!」
そう言って、私は電脳部部室に向かった。部室棟はここからすぐだ。
到着した電脳部は、もともとひっそりと展示していたことに加え、1日目の日程が終わりそうな時間帯だったため、部員が2、3人いるだけだった。
「ごめんなさい、今すぐフルダイブ装置を貸して!」
「き、霧雨さん!? え、どうして???」
「話は後で!」
少し古めの装置だけど、私には関係ない! 手早く取り付けて横たわると、私はいつものログイン手続きを行う。
「受諾せよ、遥かなる大地への旅路を」
◇
ふおんっ
いつものマイホーム。今回は『コナミ・サキ』に偽装する必要はないから、すぐに現実世界のマップを表示して…。
ぽーん
こんな時に通話呼び出し!? なんで…え、ユリシーズさん?
ピッ
『ミリアナ…いえ、霧雨さん、すぐにログアウトして下さい! 彼らの本当の目的は、あなたです!』
え…!?




