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第17話 店番と屋台

 文化祭1日目。

 土曜日だけど、さすがに今回は定例の『アバター現界』生活はお休みだ。今日明日と、ずっと学校だからね。


「いらっしゃいませー」

「この本、ちょっと見せてもらっていい?」

「はい、どうぞ」


 私が店番をする教室は、主に文学的な冊子を扱うところだ。え、他の教室は文学的じゃないのかって? そういうわけじゃないけど、私の詩集を始めとして、他のジャンルに括れない文学作品を集めているので、そう表現するしかないのだ。


 でも、ウチの文化祭の即売会、ジャンル分けの仕方がよくわからないのよね。地元で有名なラーメン店のメニュー考察だけで1教室使っているかと思えば、特撮ヒーローのパロディ本という枠でようやく1教室という。流行りの異世界転生アニメ作品単体のジャンルがある一方、異能モノというジャンルで1教室なのはなんとなく納得がいかない。ウチの生徒の趣味趣向がよくわかるとでも言えばいいのだろうか。


 なお、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』をテーマにしたものに至っては、なんとあのバー『雨宿り』のみを扱った教室まである。てっきり、ミリアナがオーナーであることがバレてあさっての方向に盛り上がったのかと思いきや、マスター考察だけで1冊作り上げたキワモノや、メニューであるジンジャーエールに関する批評を延々と語る本まであるそうな。後者は後で必ず買うことにしよう。作者とも握手をしよう。


「…(ぺらっ)」

「…」

「…ほう」


 私の詩集をいくつか手にとっていたお姉さんが、少し目を通した後、ため息をついた。ウチの生徒と同じような反応だけど、気に入ってくれたのかな?


「この日本語版とフランス語版をちょうだい」

「はい、合わせて100円です」

「え、1冊50円なの!? 安過ぎない?」

「生徒が作った詩集ですし、そんなものかと…」


 だよね?


「ここの生徒!? 私も翻訳業の傍ら詩集を出してるけど、これ絶対高く売れるわよ! それこそ世界中で! どんな娘なの、この…『霧雨美奈子』さんって」

「…えっと、私は店番なので、詳しくは…」

「そう…」


 面倒なことになりそうなので大嘘をつく。近くに住んでいる人ではなさそうなので、このままやり過ごせそう。やり過ごせればいいなあ。


「霧雨さーん、交代だよー!」

「うああああ!」

「えっ…あなたの本なの!?」


 フラグ立てた私が悪かったのかな。はあ。

 とりあえず、お姉さんとは連絡先を交換した。妙な営業かけてこないでほしいけど。


「はあ…」

「あ、霧雨さん、弟くん来てるよ。友達と一緒に」

「え、ホント!?」


 拓也たちに癒やしてもらおう、そうしよう。



 教室から出て少し歩いたところにある階段の付近。そこが、ちょっとした人だかりになっていた。


「やーん、可愛い子じゃなーい」

「ねえ、弟くん、お姉さんが来るまで私の同人誌(薄い本)見てかない?」

「あ、あたしのも! 男同士の熱き戦いを描いた一品! もちろん、全年齢版だよ!」

「いやあの、俺達は姉さんを探して…」


 あれは、なにかなー。女子生徒達が拓也に群がっているように見えるんだけどー。拓也ってこんなにモテたっけかなー。おかしいなー、全然癒やされないよー。あははは。


「あ、美奈子さん。…うわあ」

「あーあ、お姉さん、なんとも言えない顔をしてるよ」

「目のハイライトが消えてるの、現実世界で初めて見たな」


 やあ、リナちゃんとお友達くん。今日はいい天気デスね。あははは。


「「「「「はっ!?」」」」」


 どどどどどどどどどど


 拓也を取り囲んでた女子生徒達が私の方に気がついたとたん、一斉に私の方に向かってきた…!?


「きゃっ!?」

「ち、違うの! 違うのよ、霧雨さん!」

「そうそう、私達、霧雨さんの弟くんには、全く、これっぽっちも、全然興味ないから!」

「きゃ、客引きよ! 客引きをしていただけだから!」

「そ、そう、なの。でも、それにしては、他の三人には目もくれずに…」


 ずさっ


「「「「「すいませんでしたー!」」」」」

「え、そんな、土下座するようなことでは…」


 えっと、ウチの学校の廊下って土足だから、汚れるよ?


「美奈子姉さん、店番はいいのか?」

「うん、交代したから」

「そっか。じゃあ…」

「あ、私達は早速、弓道場に行ってくるから! ね、ふたりとも!」

「お、おう」

「そ、そうだな」

「じゃあ、ふたりとも、ごゆっくりー!」


 すたすたすた


「え、えっと、姉さん、まずは屋台を案内してくれないか?」

「あ、う、うん。こっちだよ」


 というわけで、弓道場に向かったリナちゃん達と別れて、私は拓也と屋台が並ぶグラウンドに向かった。未だ土下座体制を崩していない、総勢12名の女子生徒をそのままにして。



 がやがや


「ねえねえ、あのふたり!」

「わー、あれが噂の弟くんか!」

「普通…普通よね。でも、そこがいい!」

「だよねー。これが、どこぞの女慣れしているイケメンのようなタイプだったら、ちょっと許せなかったかも」

「うんうん! ねえほら、霧雨さんのあの表情! 兄弟に見せるような笑顔じゃないよ!」

「家でも顔を合わせていて、こんな時もあんな感じかあ」

「ねえ、弟くんも嬉しそうだけど、霧雨さんの方がベタボレじゃない?」

「だね。はー、うらやましいなあ、弟くん(・・・)


 わいわい


「確かにうらやましいけど、どうなんだろうな、霧雨さんみたいな子が姉だと」

「かなり苦労してそうだよな、あれだけのスペックなら」

「スペックとか言うな。言いたいことはわかるが」

「普通に美少女な上に、清楚さと色気を同居させてるとか。しかも、自分を慕ってくれてるという」

「むしろアイドルデビューとかしてた方が、割り切れそうな気がする」

「ミリアナみたいにか? 確か、全く同じ容姿で『ファラウェイ・ワールド・オンライン』やってるよな、霧雨さんって」

「生産職だからなあ。森の中でひっそりとスローライフやってるって噂だが」

「最近は、あの弟がマスターやってるギルドと一緒に楽しんでいるみたいだけどな」

「弟って、あの天空城(ミストライブラ)の所有者だろ? スキがないじゃねえか」

「男としてはやはり、怒らせない程度に弟くんと仲良くしつつ、彼女を遠くから鑑賞して…」

「「『新緑の騎士団(変態集団)』ギルメンは黙ってろ」」

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