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第4話 勘違い

 ようやく、中学校に到着する。十数分歩いただけなのに、どっと疲れた…。おかしいなあ、私、今はアバターなのに。


 パンッ


 わー、わー


「うわっ、100m走、もう始まってるじゃない!」

「いや、まだ順番が回ってきてないみたいだよ。ほら、あそこ」


 あ、ほんとだ、拓也がいる!

 わー、体操着の拓也、見るのひさしぶりだー。家じゃ着てくれないんだもん。当たり前かあ。あははは。


 あ、次だ! よーし!


「拓也ー、がんばれー!!」

「ちょ、ちょっとミナ、いきなり…」


 どよっ


 ぴたっ


 シーン


 ………

 ……

 …


「…あれ?」


 誰も彼もが私の声に振り向き、そして、すぐに固まった。そりゃあもう、彫刻のように。

 会場であるグラウンドでは、BGMの音楽だけが延々と流れているだけである。


「もう…。自覚、したんじゃなかったの? ユリシーズさん、そういう話をしたって言ってたけど」

「え、自覚? …え? え?」


 自覚って…いやほら、私の顔や体のパーツのいくつかがちょーっと目立つというか、ちゃんと危機感をもって行動しないと女の子としていろいろ大変になるよっていうか、そういうことだったと思うんだけども…。


 ぺたぺた

 ぷにぷに

 さわさわ


 うん、自分ではいまいちよくわからないのはしかたがないと思うんだ。


「いや、それもそうだけど…。はあ」

「ギルマス、むっつり」

「ああでも、弟くんがひとり悶絶している。ほんと、うらやまし過ぎる…」

「隣のクラスでは普段聴く(・・)ことすらできない、軽やかながら心に染みわたる…尊い」


 え、なに、私もしかして、またなにかとんでもない勘違いしていた? え???


「『コナミ・サキ』としてカスタマイズしてるのは、容姿だけじゃないよね…?」

「え? ああ、うん、もちろん。でも、それがなに?」

「ただひたすら『事実』として受け止めているだけなのか…。自分自身のことだと、こうなのかなあ」


 周囲は、未だ固まっている。どうすればいいんだろう、これ。


 たったったっ


「み、美奈子姉さん、遅かったんだね」

「ああうん、家を出ようとしたら…ね」

「…なるほどな。ったく、リアルでも変態かよ…」

「あ、あの! でも、拓也、私はね…!」

「わかってるって。どうせ、前島の野郎もこいつらのせいで強引についてきたんだろ。アホか」

「拓也くん、容赦ないね」

「俺は、アンタには最初からそうだけど?」


 うーん、ゲームで飽きるほど見た光景になったんだけど。結局、リアルでも同じかあ。ふたりはアバターとリアルの姿が全く違うのに。


「あー、先生、そろそろ再開してもらいたいんだけど」

「…あ、ああ、そうだな、霧雨。おーい、実行委員、それぞれの競技を再開するんだ!」


 ぞろぞろぞろ…


「じゃあ、姉さん。またな」

「うん。がんばってね、ちゃんと応援するから!」

「いやその…見ていてくれるだけで、いいから」

「そうなの? でも…」

「…見たいんだろ、俺の活躍をさ」

「…うん」


 そうだよ。私は、拓也の活躍を、見に来たんだよ。


 そうだね。それだけで、いいんだよね。うん。


「彼女がギルマスに簡単に落とされない理由がよくわかる光景デスネ」

「イケメンとかじゃないのよ。スキンシップ過多とかじゃないのよ。キザな台詞じゃないのよ」

「聖女にお似合いなのは、召喚勇者よりも村人Aの幼馴染。尊い」

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