第3話 道中の会話
結局ついてくることになった前島さん+三人娘に、重箱を包みに分けて持たせる。いやだって、アイテムボックスも転移も使えなくなったからさ。ちゃんと運んでよ、拓也の分なんだから。
「え、もらえないの!?」
「拓也の分だから」
「でも、こんなにあるんだから…」
「拓也の、分だから」
「えっと、そこのコンビニで割り箸をたくさん買ってきたから…」
「拓也の分だって言ってるでしょ!?」
「「「ひいっ!?」」」
あ、しまった。あまりにしつこかったから、怒鳴りつけちゃったよ。でも、謝らないからね。
「もう…。ついてくるだけでも、変なのに…」
「ごめんね、ボクが押し切られちゃって」
「いやあの、前島さんがついてくるのも変なんだけど」
「み、ミナ、なんか今日はキビしいね?」
「そう? 当然のことを言ってるだけだけど?」
だよね? ねえ?
「(ひそひそ)ま、まずかったかな? こんなに怒るなんて…」
「(ひそひそ)アンタが言ってたんでしょ? 最近、美奈子様とずいぶん仲がいいヘラルド…弟くんとの関係を確認したいって」
「(ひそひそ)だって、現実世界じゃ、家の中に入り込むわけにはいかないじゃない」
「(ひそひそ)だから私は、普通に自宅を訪ねてみればいいじゃないって…」
…聞こえてるよ。聞こえないふり、するけどさ。
「そ、そう言えばミナ、ミリアナの防衛戦はどんな様子なの?」
「今日は私が昼間出かけるから、全部ペンディングだよ。当たり前じゃない」
「あ、当たり前なんだ」
「そうだよ。ミリアナのバフ装備も全部『コナミ・サキ』ブランドなんだから」
「そうなのか…。何から何までミナが供給しているんだ」
そりゃあ、本人ですから。
「攻撃アイテムもすごいんだって? ユリシーズさんに聞いたよ」
「…なぜ、ユリシーズさんに?」
「この間ボクにも『緊急クエスト』があってね、その時に」
「ああ…」
ミリアナと比べたら僅かであるが、ユニークウェポン『聖盾アイスフィールド』を単独で『現界』できる前島さんにも、たまに出動要請がある。自身の誘拐騒動への対処の実績もあるから、慣れたものである。
「アイスフィールドでがけ崩れを防いだ時、攻撃スキルも付与されてるといいんだけどなあって言ったら、ユリシーズさんが『コナミ・サキ』ブランドとして手に入るかもしれないって。どうなの?」
「まあ、盾装備に一時的に『氷槍』を付与する魔石ならすぐに用意できるけど…」
ていうか、今まさにアイテムボックスから取り出して『現界』できるけど。
「ホントに!?」
「1回しか使えないけど」
「それでもすごいよ! ミナ…『コナミ・サキ』って、本当に鍛冶と調合のトッププレイヤーだったんだね!」
そういう目立ち方はしたくないんだよなあ。あれやこれやと生産依頼が来るようになって、『コナミ・サキ』としての関わりが増えた途端に『ミリアナ・レインフォール』が不在がちになったら、実は同一人物だってことがバレやすくなるから。
「私が事実上のミリアナ専属なのは知っているでしょう? 他のユーザにはもちろん、拓也…ヘラルドにだってそんなに売ったり渡したりしてないから」
「そうなんだ…ヘラルドにさえ、売ってないんだ」
…ちょっとだけ、嘘だけど。
拓也…ヘラルドは、たとえ私が装備を売り込んでも、なんでもかんでも無心するような性格じゃない。どうしても必要なものだけを、ちゃんと対価を考えて相談してくれる。
この間は、いつも仲良くしているふたりのギルメンのための装備だった。逃げ足が少しだけ早くなる靴。後衛魔導士ならではの、地味だけど有用な装備だ。私は喜んで作ったよ!
「じゃ、じゃあ、今日、運動会から帰ったら…」
「ミリアナの防衛戦がペンディングだって言ったよね?」
「はい」
ふんだ。
「やーい、ギルマス、怒られてるー」
「バチが当たったのよねー」
「因果応報、弱肉強食」
キッ
「「「ひいっ!?」」」
「キミ達、懲りないねえ」
「ああでも…美奈子様の機嫌の悪い視線が、ちょっと快感…」
「おかしいなあ、ギルマス相手ならいくらでもいじめられるのに…」
「うふふふふ…(ぞくぞく)」
聞こえない。見えない。考えない。
ああ、拓也の学校って、こんなに遠かったっけ?




