第50話 あの言葉
学校の食堂で、前島さんとお昼。いや、またジンジャーエールおごるっていうからね?
「あれから、優真がVRゲームへの付き添いを頻繁にせがむようになって…」
それも、討伐や生産などを単純に楽しむのではなく、明らかに自分自身を鍛えているのだという。剣を振る練習をしたり、魔法をいろいろ組み合わせてより強化してみたり。将来が楽しみである。
「なんかちょっと、寂しくなった…」
「お兄ちゃんとしては、心配?」
「うん、まあ。ボクみたいに割と勢いでやってるんじゃなくて、根を詰めているというか…」
「でも、ログイン時間の制限はしているんでしょう?」
「しているよ。ボクの半分もやっていないと思う。だけど、学校の勉強とかも熱心になっちゃって」
何が攻略に関わる知識や技術となるかわからない。普段からの関心と努力が、センスや才能を生み出していく。
「いいことだと思うけど?」
「だから、ちょっと寂しいってだけだよ。人見知りもなくなりつつあるみたいだから」
「案外、だいぶ前からそうだったのかもね。家族には、昔のように接していただけかも」
心当たりがありまくる身としては、心の中で苦笑するしかない。拓也、今日も友達と遊びに行くからって、帰宅が遅くなるらしい。私の知らない拓也が増えていく。それは、寂しいような、ほっとするような。
「あと、ギルメンの追跡が以前より多くなって…」
「それも、いいことだと思うよ。ギルメンでさえない私の追跡は全廃してほしいものです。ねえ、みなさん?」
ガタッ
ガサガサッ
「…」
ガササササササササササササササッ………
食堂の隅に積まれていた段ボール箱が足早に去っていくという珍現象を眺めながら、前島さんとの関係も今後どんどん変わっていくんだろうなあと、漠然と思い描いていた。
そして私は、あの言葉も思い出していた。
【現実世界の『月面都市シルバーリング・○○ビル屋上』に転移します。お疲れ様でした】
あなたは、誰なの…?




