第14話 運営会社訪問
VRMMORPG『ファラウェイ・ワールド・オンライン』を運営する、株式会社フォークロア・コーポレーション。関東平野の端っこの、海が見える場所に本社がある。
自宅最寄駅から30分ほど電車に揺られ、降りた駅からしばらく歩くと、その奇怪な建物が見えてくる。
「まあ、都会の街中でこんな建物は作れないよね…」
一言で言うなら、切り株。何言ってるかわからないと思うけど、それが一番合ってると思う。こじんまりしていて、森のレストハウスのような雰囲気もある。海の近くだけど。
社長さんがいい年して現役厨二病患者で、様々なファンタジー作品で出てくる『ユグドラシル』にちなんだものらしい。ちなんだのはいいが、レンガやコンクリートで大樹のような建物を作るのは無理がある。高層ビルにするわけでもないから、ずんぐりむっくりの、太くて高さがあまりない、幹のようなナニかという形状となったようだ。この会社の公式サイトに、写真と共に経緯が事細かに書かれている。暇なのか。
建物の見た目の感想を適当に切り上げた私は、切り株(仮)にある扉を開けて中に入る。
「ごめんください…」
中は、いたって普通の、ビルの中とかでよく見るオフィス空間という感じだ。扉から入ってすぐのところにある受付カウンターも、木のテーブルとかではなく、OAテーブルのような造りのものだ。
「いらっしゃいませ。当社にどのような御用件でしょうか?」
受付の男性も、普通のスーツに普通の対応だった。社長さんだけがアレなのかな?
「『ファラウェイ・ワールド・オンライン』のユーザです。アポはないのですが、昨日、こちらに直接伺う予定を社員の方とゲーム内で話しまして」
「そうですか…少々、お待ち下さい」
受付の人が手元の端末を操作し始めたと思ったら、小さなタブレット状のものを差し出してきた。
「こちらに手を当てて、ログイン手続きを進めて下さい。フルダイブ時と同じユーザ認証を行いますので」
「ログイン手続き…え、アレを言う…んですか?」
「はい、その通りです。さあ、どうぞ!」
うわ、受付の人の目がなんか輝いている!? やっぱり、社長さんやユリシーズさんと同じ人種だ!
「あ…『受諾せよ、遥かなる大地への旅路を』」
うわーん、はずかしー。部屋にひとりでいる時につぶやくのとはわけが違うよー。受付認証にも使うんなら、なんで『○○○・○○ー○!』とかって単純なのにしなかったんだよう。
「はい、結構です。では、こちらへどうぞ、霧雨美奈子様」
「あのう…もしかして、認証とやらは必要なかったのでは…?」
「え? なんのことでしょう?」
くっ、からかわれた…。




