第15話 ミリアナの立ち位置
会議室に通されて待っていると、すぐに社長さんと、あの技術スタッフの人がやってきた。
「私が『ユリシーズ』です。霧雨さんの方から訪ねてもらえて助かりますよ」
「霧雨美奈子、です。よろしくお願いします」
結局、本名名乗らないよ、この人。もういいや。20代男性らしき技術スタッフのひとり。それだけわかればいい。
「すみません、諜報活動もしているので、本名はお教えできないんですよ」
「よくわかりました。今すぐ『ミリアナ・レインフォール』のアバター情報を削除して退会します」
「ちょ、ちょっと待って下さい!?」
いやいや、そんな裏組織的単語を聞いたら、もう関わるわけにはいかないでしょうに。アレでしょ? 仮想世界で様々な能力を発揮したり育成したりしたユーザを見つけて捕獲し、特殊部隊とかに投入するってやつ。おかしいと思ったんだよ。一介のゲーム会社がハイジャックの情報をいち早く掴んでいるなんて。きっと各国政府とも裏でつながっていて、あれやこれやと暗躍しているんだ。
と、いった私の疑念が口からつらつらと漏れていたらしく、ユリシーズさんが必死になって弁明を始める。
「逆ですよ、逆! 普通のユーザを装ってVRゲーム内で暗躍する人達を摘発しているだけです! それこそ、各国のスパイとか企業の産業スパイ、テロ組織にマフィアにと。その関係で、政府や警察の当局関係者との情報交換を密にしているんです」
「はあ」
「もともとは、ユーザ間で起きる詐欺行為に対処するためだったのですけどね。攻略情報を使ったRMTへの対応も含まれています」
あ、なんか一気にMMOっぽくなった。
「それでですね、このゲームで最近多いのが、霧雨さん、あなた絡みの詐欺行為なんです」
「…は?」
「その素性の一切が不明の、ソロで活躍するトッププレイヤー。そんなあなたのリアフレと称して近づき、現実世界で金品をせしめる。ある国のスパイが情報料として、引きこもりユーザの銀行口座に数千万円振り込んでいたと聞いた時はどうしたものかと」
…何がどうなればそうなるのか教えてほしい。え? それって『現界』する前の話でしょ? 私のリアフレってだけで、なんでそんなことになるの?
「ますますわけがわからないって顔ですね。それこそ、あなたが危惧していたことなのですよ。『ミリアナ・レインフォール』というアバターの見事な動きがプレイヤースキルの賜物であることは明らかでしたから。あなたなら、仮想世界で無茶な学び方をしてもついてこれるだろうし、それを現実世界で発揮するのは間違いありません。わかる人にはわかるんです」
なんか、いきなり人外認定された。やめてやめて。
「まあ、一番多い詐欺は、有名人のあなたに会わせてあげると近づいて、ナンパしたり小銭を巻き上げたりするパターンですが」
「私はセレブか何かですか」
「そうですよ。知らなかったんですか?」
知らなかったよ!




