第12話 クッキング
下駄箱で靴を履き替え、家路を急ぐ…ふりをして、校舎裏の人気のない場所に移動する。
索敵魔法をかけ、人が見ていないことを確認する。更に、周囲の建物もぐるっと見渡して、こちらに目を向けている人がいないことも確認する。
ステータスを表示し、『転移門』のメニューから『自宅・自室』を選択する。
そういえば、これってただの転移で、『門』じゃないよね。名称は運営が考えて、この転移の仕組みそのものを実現したのは別の存在って感じだ。
【現実世界の『自宅・自室』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】
〔はい〕を、押す。
◇
ぶおんっ
無事、自室に到着。…誰もいないよね。拓也はまだ中学から帰ってきていないし、両親はどちらも土曜出勤で夕方まで帰ってこないはずだし。
目の前のベッドに横たわる自分自身を見る。今の私が現実の容姿を偽装しているから、同じ顔の人間が部屋にふたりいるような格好だ。アバターと本体の両方を動かせたら面白いかもしれない。…動かせない、よね?
「本体はまだもう少し寝ててもいいみたいだし、このままさっさとお昼作っちゃおうっと」
拓也の分と併せてお昼が必要なのは本当だ。ただ、時間はそんなにかからない。今日はちょっと暑いから、そうめんをゆでてサラダと麦茶を用意すればいいか。
台所に移動して、素材…もとい、材料を取り出す。言い間違いかけたことからもわかるように、これから行うのは―――
「『調理』レシピモード」
それぞれの材料が淡い光に包まれる。光はすぐに消え、そこに現れたのは、ゆで上がったそうめんが盛り付けられた皿、千切られ刻まれた野菜に調味料で味を整えたサラダの入ったボウル、煮出して少し置いてから冷ました麦茶が入ったボトル。うむ、タダでさえ手間がかからないメニューが、更に一瞬で出来上がった。
どのメニューも、ゲーム内で『コナミ・サキ』として作ったことがあるものだ。一度順番に作業をして完成させたものであれば、その後は修得済として自動で調理してくれる。MPが結構もってかれるけど、その分、自動調理ゆえの劣化もほとんど起こらない。現実世界でも同じようにできてほくほくである。
「さて、ようやくログアウトかな。アバターのままで食べてもしかたがないし」
実のところ、現界したアバターのままで飲み食いできることは確認済みである。本体の方は結局何も食べてないので、まるで意味がないのだが。
「ん、『現界』中でもログアウトが選択できるんだ。ログインの時は一度フルダイブしなければならないけど…って、当たり前か」
【ログアウトしますか? 〔はい/いいえ〕】
〔はい〕を、押す。




