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第六十二話「マリーさんは実は凄い人」

レイアウト変更に伴い、今のところパソコンで見るとルビの振り方が変なところがあるかと思います。

ただいま検討中ですのでご了承ください。

 桜華達が理事会室で話し合っている頃、蓮桜学園の第一体育館では終業式が行われていた。

 どこの学校でもあるような普通の終業式。

「えー、本日も不在の学園長に代わり学園主任の私から話をさせていただきます」

 ただし、この一学期で恒例化しつつある学園長の不在だけは普通とは言い難いものであった。

 壇上で話す菊池先生はまだ二十代後半のはずだが、学園長不在が相当のストレスになっているようだった。多少老けて見える。

『―――・・・以上を持ちまして、一学期終業式を終了します。この後、教師の方々並びに生徒の皆さんには重要な話があるので、今しばらくその場で静かに御着席下さい』

 そうこうしている内に菊池先生の話も終わる。

 本来なら司会進行役をするはずの生徒会長もしくは生徒理事会会長の二人がいなかったので、四年生の中でも名高い十一貴族の天城臣 重次郎が急遽司会進行役を勤めていた。

 マイクを先生に渡し壁際に用意されていた自分の席に座る。

 小さく息を吐いた天城臣に隣に座っていた菊池先生が話しかけた。

「急な代役すまないね」

「いえ、これも十一貴族の勤めです」

「そう言ってくれるとこちらとしてもありがたい。まったく。学園長不在だけでも前代未聞なのに、二人の会長までもいないなんて・・・」

 弱音にも聞こえる声を菊池先生が漏らす。それだけで相当参っている事が伺えた。

「それに君が言うような事があるとなると、頭が痛いな」

「今会室で我が校の十二天族達が話をしています。そう悩まれずとも」

「だからだよ。この学園の全権を彼女らに任すようなものだ。教師として・・・いや、そもそも大人として情けない」

 まるで風船が萎むかのように意気消沈する菊池先生を見て天城臣を含めた周囲の先生は『また始まった』といった視線を向ける。

 菊池先生は誰から見ても優秀な先生だ。教師になって数年とは思えない程にだ。

 しかし、そんな彼にも弱点とも言えるところがあった。

 それは、妙に後ろ向きというかネガティブ過ぎるところだ。

 もともと自分に自信が持てない引っ込み思案だったらしく、教師になってからは多少改善されてきたらしいが、長年のそれは直ぐに直るものでもなかった。


「なぁ~にぃ~? キー君はまたネガティブシンキングになってるの?」


 ふわりと撫で付けるような、そよ風にも似た風がのほほ~んとした声と共にふく。室内で、しかもまるで渦を描くようにふく風はどう考えても自然的な風ではない。

 風と共に聞こえた声は菊池先生の隣、天城臣とは反対側から聞こえ、二人は驚いてそちらを見た。

「あ、あなたは・・・!」

 天城臣は振り向いた先にいた人物を見て目を見開く。

 そこにはいつの間にか一人の女性が、背中を大きく倒して座っているかのような状態でふわふわと椅子の上で宙に浮いていた。

 毛先の方で結われた長い栗色の髪は何故かしっとりと濡れており、何故か女性の手にはタオルと石鹸とシャンプーの器が入った風呂桶を持っていた。まるでついさっきまでお風呂にでも入っていたかのように。

「・・・っ、それで? また温泉にでも行かれていたんですか、貴方は」

「そうよ~。ヴァルニア火山の山頂付近にある秘湯に行ってたの。気持ち良かったわ~。・・・もうちょっと楽しみたかったのに、カティがうるさくてうるさくて」

 遠回しな皮肉を気にもしない女性に菊池先生の額に軽く青筋がたった。

 女性が手に持つ桶から熱燗の瓶がヒョッコリと頭を出しているのも青筋の本数を増やす要因だったりする。

「貴方は自分の立場がどれだけ重要なのかを理解してください。しかも今は、国からの依頼が―――」

「だからこうして帰って来たんじゃない。今回のはキー君には荷が重いかなと思って」

 女性が言った思わぬ言葉に、菊池先生は途中で言葉を止める。

 まさか彼女からそんな言葉が聞けるとは思っていたかった菊池先生は嬉しさのあまり目が少し潤みかけていた。

「さて、キー君のためにも仕事をしようかな」

「・・・で? 本音は?」

「仕事しないとお給料無くすぞ、てシーちゃんに脅されたから♪」

 女性の嘘に騙されかけた菊池先生だが、どうにか本音を聞き出し、殺気にも似た冷ややかな視線をぶつける。

 その視線から逃げるように女性は壇上へと登って行った。

「まったくあの人はどうしていつもこうなのか。あれでこの学園の実質二位の役職を勤めているなんて」

「理事長である志恵那殿が認めているんです。腕は確かなんでしょう。それを一番理解しているのは菊池先生もでしょう?」

 天城臣の言葉に、菊池先生は小さく笑みを浮かべていた。


 壇上に誰かが立つと同時に生徒の喧騒が静かになる。だが、それでもちらほらと小さな声で話す生徒がいた。

 一年生からは壇上に立った女性が誰なのか。二年生から上はようやくお出ましだというものだった。しかしそんな喧騒も直ぐに止み、静寂が辺りを包む。

 そんな全生徒の注目を一身に集める女性は一通り見渡して口を開いた。

「一年生の子は初めてかな? 二年生から上は久しぶりになるのね。まずは一年生の子のためにも自己紹介からね」

 マイクを使わなくてもよく通る声が響く。

「はじめまして、一年生の皆。私は篠宮(しのみや) 涼華(すずか)、この学園の学園長をしている者よ。学園長、て長いし篠宮先生で結構よ。名前で呼びたかったら好感度を上げてね。ちょっと私用でいなかったけど、これからはよろしくね」

 学園長と聞いて一年生が再びざわつく。

 ちなみに、私用について知っている二年生から上の生徒はまたかと呆れ返っていた。

「いろいろと話をしたいんだけど、あんまりグダグダした話は好きじゃないし、皆はそんなことよりも気になる事があるみたいだし?」

 まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべる学園長。

「さて、今皆さんの間では噂されている事が一つ、ありますね? 我が校の十二天族に届いた手紙に書かれていた事が事実なのか。事実です。戀国はフィアナード王国からの招待を受けることを正式に決定しました。そして、その役目がこの蓮桜学園に一任されました」

 生徒達に衝撃が走った。

 たかだか学生の身分でしかない自分達に国からの、さらには神族からの命令が下るとは信じられないという様子だった。だが実際に十二天族が手紙を受け取り、学園長が事実だと言ったのだから信じるしかなかった。

 学園長が右手を水平に薙ぐのと同時に、全生徒の目の前に霊術陣が展開して中から冊子が現れる。

「行われる内容は向こうの伝統と要望に則り、個人戦、団体戦、軍団戦の三つを行う交流戦です」

 生徒達が若干戸惑う中説明は続けられる。


 参加人数は各国102人。

 まず、軍団戦は有無を言わさずの全員強制参加。これは確定であり、この他に個人戦に出るか、団体戦に出るか、もしくは両方に出るかにわかれる。個人戦のみの枠数は30人。団体戦のみの枠数は、一チームが四人構成なので32人の計18チーム。そして両方参加の枠数は40人ある。

 これにより、個人戦は70人。団体戦には72人が各国から参加する事になる。

 三国合わせて合計で306人にも上る。

 十二天族はもちろん両方強制参加だ。

 交流戦の開催は八月三日からだ。

 出発は七月二十七日の朝。参加者全員が学校に集まり、フィアナード王国まで五日間の馬車旅が始まるのだ。

 予定では八月一日の昼ごろに着き、その日と翌日を長旅の疲れを癒す目的で空けている。

 個人戦、団体戦、軍団戦はそれぞれ三日間を使って行われ、それぞれの間は休みを取るべく一日の休日が入っている。交流戦終了後の二日ほどを休みにしている事を考えて、一カ月弱もの期間、参加者は戀国を離れる計算になる。

 これには若干・・・いや、かなり生徒が驚いていた。

 それもそうだ。

 一週間もしない内に出発日が来、帰って来るのは約一カ月後。誰だって不満の一つや二つはあるだろう。

 冊子には他にも今日の放課後から出発の三日前までが受付日で、参加者、不参加者の夏休みの課題などに関する事が記載されていた。

「無茶を言っているのは承知しています。強制はしません。ですが、これが神族からの命であると言う事を理解してください。課題が免除になるから、なんとなく参加してみようなどという理由の者は容赦なく外させていただきます。実力は二の次。やる気のある方をまっています。ただ、参加者が多い場合はこちらで選定させていただきます」

 生徒の反応が見事に分かれた。

 嬉々として笑う者。困惑の表情をする者。我関せずの態度を示す者。この三つだ。

 まあ元々お祭り好きが多いため、人数が足りないという事態にはならないだろう。十二校対抗戦の時も参加者の厳選が行われる程だ。

「こんなチャンスは二度とないかもしれないのよ? 自分の実力を知るいい機会だと私は思うわ」

 生徒を安心させるためか、ニッコリと笑顔を浮かべ、学園長は話を終えて舞台を降りた。

 ただ、その笑顔が井の中の蛙になるくらいだったら外に出てやられて来いと訴えているようにも見えなくはなかった。


                  ◇


 終業式があった日の翌日。俺は三国交流戦が行われるフィアナード王国に行くための準備をするべく、まずはアクティナに来ていた。

 綾香、オルスレッド、美永瀬を連れて。

 別に俺から誘ったわけでも、誘われた訳でもない。今朝家を出たら既に玄関の前にいたのだ。何を言おうとついてくる事を止めそうになかったので諦めたしだいだ。

「そう言えば皆は自分の準備はどのくらい出来てるの?」

 と言っても昨日今日でそんなに準備が出来てる筈もなく、俺の目的の店に向かう途中沈黙に耐えきれなかったオルスレッドが口を開く。

「あたしは綾香と一緒にしようと思ったんだけど、綾香がどうせなんだからあんた達と一緒にしたいって言うから。それに・・・ねぇ?」

「う、うん。やっぱりこれからの事を考えて皆とは仲良くなっておきたいし」

「あぁ~、なるほど。交流戦の事を考えると確かに僕らにはコミュニケーションが必要かな。特に誰かさんには」

 と、三人が何かとても面倒事を見るような視線を向けてきた。

「・・・おい、なんだその面倒な子を見るような目は。それに、同じチームでもないのに何故仲良くする必要がある」

 十二天族は交流戦の三戦全てに出ることになっている。と言うことは団体戦に出るために俺も四人のチームを組まなくてはならない。一人はまあオルスレッドで既に決まっている。何だかんだ言いながらついてくる事は喜んでいいのかどうなのか迷うところだが。

 同じ十二天族である綾香もそうだ。

 ただ、三人の言葉に少し疑問があった。

 まるで俺達が同じチームであるかのような言い方が気になったのだ。

 団体戦の残りのチームメンバーについては姉さんに一任してある。三戦共に出る他の参加者と一緒に適当に組む筈だ。

 一つのチームに十二天族が二人も三人もいる戦力が偏るような編成は普通に考えて出来る筈もする筈も―――

「え? 何言ってるの。同じチームだよ?」

 ないと思っていたのだがどうやら違ったようだった。

「昨日、残りのチームメンバーについて言いに行こうとしたら天蘭院さん達に声をかけられて・・・」

「どうせだから一緒にチーム組まない? てオルスレッド君に提案したの」

 オルスレッドと綾香がそれがどうかしたの? という風にこちらを見る。

「・・・常識的に考えてその組み合わせは不可能だと思わなかったか?」

「同じ事を天上院先輩にも言われた」

 当たり前だ。ああ見えて姉さんはその辺はしっかりしている。身内贔屓のような真似はしないはずだ。

 だったらなんで承認されたのかが余計に気になった。

「最初は断られたんだけど、ちょっとした交換条件と『まあでもこれはこれで面白そうね』、て事で決まったの」

「交換条件?」

 綾香が申し訳無さそうに答えるので交換条件が何だったのか無性に気になった。

「君の情報だよ。ここ最近、君の顔色と肌艶が妙に良い事が気になっていたみたいでね。交換条件としてそれを教えたんだよ。最近可愛い女の子にご飯を作ってもらってるって」

「・・・・・・」

 さらりと恐ろしいことをオルスレッドが言い放つ。

 いや、まあ確かにニーナにご飯を作ってもらっているが、その言い方はといろいろと誤解を招きそうな事を理解しているのだろうか。

 近いうちに姉さんが家に来るかもしれない。というかもう来ているかもしれない。

 そんなことを考えていたらようやく目的の店に着いた。

 周りの家や店と比べると薄暗く、地味な一階建ての建物。古いというよりも掃除をしていないために壁や窓は汚れ放題で汚い印象が強い。明かりは見えず、扉には何の掛札もないので開いているのかすらわからない。

「ここって・・・」

「綾香は一度来たことがあるだろう」

 扉を開けて中に入る。

 中は薄暗く、見るからに流行ってなさそうな店を見てオルスレッドと美永瀬が顔をしかめたが、足元の絨毯と壁や床に使われている素材を見て驚いていた。

「え、ちょっと・・・これってもしかして大理石!?」

「この絨毯も超高級品だよね。それに、埃っぽそうだけど塵一つない」

 忙しなく辺りを見ながら、今度は店の中に置かれている商品棚に置かれている商品を見て二人は言葉を失った。

 食器や家具から剣などの刃物類からフルプレートの防具。何やら液体の入った小瓶に色鮮やかなアクセサリーなど。一見雑貨屋に見えるが、霊術を使える者が見ればそれがただのアクセサリーなどではないことが一目見てわかる代物だった。

 さまざまな補助効果、霊術が付加されたタクティカルアーツ。

 そのどれもが強力な物であればこの店とのギャップに驚くのも無理はなかった。

「マリーさん! 桜華だけど、いる? マリーさん!」

 カウンターの前まで行き、奥へと続く廊下に向けてこの店の主を呼ぶ。

「待って。マリーって、もしかして・・・」

 その名に聞き覚えがあるのか、オルスレッドが店内を見るのを止めてこちらに来る。綾香と美永瀬も集まる。

 何度か呼ぶと廊下の奥からスライド式の扉を開く音がし、気怠そうな声が聞こえて来た。

「ふあぁ~・・・まったく。私の眠りを邪魔するとは・・・。いい度胸だな、少年」

 胸元の大きく開いた、ノースリーブで足首まである長く飾りのない質素なドレスを着た女性が欠伸を噛み殺しながら出て来た。長く艶のある栗色の髪は寝起きとは思えない程真っ直ぐで、化粧をしていないのにも関わらず美しく、服装も相俟って妖艶さを醸し出すこの女性。

 名を―――

「マリー・ルナ=マギア!?」

 オルスレッドがマリーさんを見て驚き、美永瀬と綾香はその名に驚いていた。


 マリー・ルナ=マギア。

 その名を知らない者はいないと思われる程の超有名人だ。なんせ彼女は『一級細工師』の称号を持っているのだから。

 一級細工師。それは戀国において武器や防具、調度品など作る工芸・創造に関わる者にとって目指すべき場所であり、同時に届くことのない場所でもある。

 営造、金造り、建造、鍛造、製造・・・金属・非金属を問わずおおよそ物造りに関する技術を全て高いレベルで習得し、そこに霊術付加の技術まで加え、扱いの難しい鉱石に素材をまるで魔法のように扱う者に与えられる称号―――それが一級細工師。

 それらの偉業を成し遂げることから、錬金術師とも呼ばれている。

 ちなみに、戀国でこの称号を持つ者はマリーさんを含めて三人だけである。


「ほぉ~。私を知っているか」

「あなたの事を知らない人は恐らくいないでしょうからね」

「ふふ。書物の役割(・・・・・)をするお前さんの立場からすれば知っている理由はそれだけではあるまい?」

 マリーさんの言葉にオルスレッドが警戒の色を強くした。名乗ってもいないのに『記録者』だと見破られればそうせざるを得まい。

「・・・ん? そっちの生娘には見覚えがあるな。・・・ああ、ラグナイト鉱石をせがんで来た子供か。その隣の生娘は・・・」

 そこでマリーさんは目を細めた。

 誰を見ているのか。恐らく美永瀬を見ているのだろう。

「まあいい。それで? 少年。今日は何のようだ」

 マリーさんは手に持っていた扇子を俺に向ける。

 俺は右腕を振り、取り出した物をカウンターの上に置く。

「壊れたから修理を頼み―――でっ!」

 スパコォン、と頼んでいる途中に扇子で額を叩かれ、良い音が鳴る。あの扇子、至る所を鉄で補強された、所謂鉄扇という物で、叩かれれば痛いわけで。

「なぁにが壊れただ! 『壊した』の間違いだろうが。私の造った()を壊すとは、いい度胸じゃないか、少年」

 そう言いながらマリーさんはカウンターの上に置かれた物に視線を向ける。そこにはつい先日、ある神霊に持ち手の半ばから真っ二つにされた鎌槍剣が置かれていた。

 両手で拾い上げて断面を改めて視たマリーさんは、表情を消し、次いで嬉しそうに口角を釣り上げた。

「・・・なるほど。天界の星乙女(アストライアス)にやられたか。さすがにこの子じゃ黄道十二神霊には耐えきれなかったか」

 一目見ただけでそこまで分かってしまうあたり、本当に凄い人なのだと改めて実感する。

 壊れた自分の作品を悲しむマリーさんを横目に、綾香が俺の袖を引っ張って来た。

「ねえ、桜華君。こう言うのもあれだけど、何でマリーさんは物に対して『子』って言ってるの?」

「この人、自分の作品と気に入った作品にはそう言う言い方をするんだよ」

 変わってるとは思うが、感性や価値観は人それぞれだから仕方ない。

「確かフィアナード王国の『まつり』に行くんだったな。いいだろう、直してやる。ついでだ、他の三人のも見ておいてやる。置いて行きな」

 突然のマリーさんの提案に三人とも若干困惑するが、見てくれると言っているんだからと三人を言い聞かせた。

 綾香とオルスレッドは自分のタクティカルアーツを取り出し、カウンターの上に置く。

「・・・ふむ、『炎姫の涙剣(パイロ・クイーン)』か。ラグナイト鉱石もちゃんとしてるし、いい子じゃないか。こっちは・・・っ、これはっ」

 綾香の炎姫の涙剣(パイロ・クイーン)を手に取って視た後、オルスレッドのへと目を向けたマリーさんは驚きのあまり声を詰まらせた。

 それは2メートル級の片刃の大剣。刀身の真ん中と峰の部分には紅いフレームが縦に入っており、柄の部分は柄と断定していいのか迷うような凹凸で、柄とは別の持ち手、鍔がなく、そこから伸びる金属部品はナックルガードのように柄を覆い、柄尻辺りで40センチ程の片刃の刃を持つ変わった大剣。

 名を『雄絶の炎剣(レーヴァティン)』。人の造りし物の領域を超えた炎を宿す『古代武器(エンシェント・アーツ)』。

「素晴らしい。これが世に聞く古代武器(エンシェント・アーツ)か。ふふ、弄り甲斐がありそうだ。・・・ん? そこのお前はどうした、早く出してみろ」

「あ、あの。加菜恵のタクティカルアーツは―――」

「知っている。『氷扇(ひおうぎ)・蒼海の舞』だろ? 美永瀬の娘」

「「っ!」」

 自分の持つタクティカルアーツを見てもいないのに当てられて二人は息を呑んだ。加えて一度もマリーさんの前で名乗ってもいないのに苗字を当てられては仕方がない。

 美永瀬の氏を当てることくらい、ちょっとした知識があれば造作もない事だが。

「この戀国で―――いや、この世界で瞳の色が黒か茶色以外なのは非常に珍しい。何か特別な理由なり力を持っている。そんな中で翡翠色の瞳を持つ者など一つだけだ。それに、その子を造ったのは私だ。その私が自分の子の在りかを知っていても不思議はなかろう?」

「あなたがこれを造ったんですか?!」

 どうやら美永瀬は知らなかったようだった。

 マリーさんと美永瀬が二人で話をした後、美永瀬はタクティカルアーツを取り出していた。蒼色のどう見ても片手では扱えなさそうな大きさの扇を二つマリーさんに渡していた。

「二十七日に出発だったね。だったら朝行くときにでも取りに来な。それまでには済ませて置いてあげる」

 扱い辛いタクティカルアーツの四つをたったの六日でいいと言うマリーさんは、もはや尊敬を通り越して呆れる程の域だった。

 マリーさんの店を後にしにした俺達は、必要な物を探しながらアクティナを見て回ることにした。


 ちなみに、家に帰ってみれば既にニーナが姉さんの膝の上で懐柔されていたのは言うまでもなかった。



お久しぶりです、アリッサです。


最近は寒い日が続きますね。作者もこたつに籠って『ね~〇はこたつで丸くなる♪』状態ですよw

おかげで体調不良を起こす要因にもなりかねないのですけどねw

皆さんも体調にはお気をつけてください


おそらく次話は出発日を書くことになります。戦闘はまだ先カナ?

ちょっと最近大人気の某狩人ゲーム4を初めまして、時間が・・・(汗)


ちょくちょく書いてはいますので、これからもよろしくお願いします

ではでは、次話でお会いしましょう

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